今回も手前みそではありますが、僕の塗装過程を順追って紹介いたします。以前も申した通り、やり方は我流で自己流、無手勝流です。よって皆さんも参考にしつつ、自分のやり方を編み出してください。
そうそう、彩色する前に事前の準備はした方がいいように思います。ムック本などで写真を見ること。でも、これだけでは痒いところに手が届かない場合が多いです(同じ写真が無数に使われている)。なので、本編をテレビなりPCで流し、必要な部分をキャプチャーします。一番お手軽なのは一時停止をした画面をスマホで撮影し、それをPC上に並べたり印刷したりすることです。本物をじっくり見て、頭に基本の色と形を叩き込んでからモウソウすると、後々の作業が格段にスムーズになります。ぜひお試しください。参考用として、展示されたティグリスの着ぐるみ画像をアップしておきます。こちらはネットの拾い画像です。
0.ティグリスのヘッド
目や牙はかなり黄色いのが分かります。肌のベース色もニュートラルグレーという感じですかね。僕が彩色したものは意図的に暗くしていますが、本編のティグリスはかなり白っぽいです。石灰色って感じでしょうかね。
火焔模様は黒ベースに金色、首のあたりもそんな感じですね。
それではレシピのスタートです。
1.バリ取りと洗浄
今は文明の利器たるリューターを使うことを覚えましたが、ボークスJr.のキットを沢山作っている頃は手作業が多かったです。いやもう大変でした……。リューターを始めて使った時は感動ものでしたよ。「時間返せ!」と叫びたくなりましたもん(笑) 比較的パーティングラインは少ない方だと思いますが、火焔模様の間には詰まりがあったりしますから、よく確かめて進めてくださいね。
次に洗浄ですが、僕が使っているのは「油職人」という洗剤です。これを歯ブラシにつけてゴシゴシと気が済むまで洗います。この洗剤を使うようになってから、色が剝がれるということはなくなりました。使用する洗剤に迷われている方にはお勧めします。
2.サフ
サフのやり方も皆さん様々だと思うんですよ。僕もこれまで幾通りかの変遷を経てきました。最近はもっぱら「Mr.サーフェイサー1000」を溶剤でシャバシャバにして、薄く筆で塗るようにしています。こうすればサフを厚塗りしてモールドを潰すことはないですし、じっくりとパーツを観察できるので、以後の作業の段取りなどをよく考えます。
3.彩色(目、爪、牙・口の中など)
最初にエアブラシで白っぽい部分を塗装します。小さい歯にはめったに吹くことはありませんが、牙クラスになってくると吹きますね。アクリルのホワイトにイエローFS(313)を混ぜ、アイボリーにして使っています。
口の中はネロンガ同様、アクリルのマルーンを6、ニュートラルグレーを3、クリアオレンジを1の割合いで混ぜます。これがベースとなります。歯は上記したアイボリーを細筆で塗っていきます。しっかり乾いたらエナメルのクリアオレンジ、クリアイエロー、フラットブラウンで琥珀色を作ります。これを塗って、色が微妙な感じで残るように溶剤を使って剥がします。筆でもやりますし、ティッシュペーパーを使ったり、爪でやることもあります。しっかり乾燥したら、その上からアクリルのクリアを塗り、再び乾燥させます。次にエナメルのグレイ(ダークシークレイ・ミディアムグレイ)を塗り、またまた剥がします。これ、爪なんかも同様のことをやったりします。作業の手順を逆にすることもあれば、色調を変えることなどもあります。つまりやり方は千差万別です。好みで自在にトライしてください。
脱脂綿をボソボソにして爪に当て、エアブラシを吹いて、模様を作る。これ、カラーリストのkazさんに教えてもらった技です。こうすると自然な模様が生まれてきてとても綺麗です。こちらもぜひ試してみてください。
4.マスキング
口や目、爪などをしっかりマスキングして組んだところです。マスキングの際は爪の周りや目の周り、口の周りなどをベースで使う色をあらかじめ塗っておくと便利ですよ。
5.ベース色
手、足、胴(背中)、顔、尻尾にはブラックを使いました。その上からアクリルのジャーマングレーやブラックグレーを乗せ、少しずつ色を明るめにしていきます。着ぐるみのティグリスはもっと白寄りなんですが、重量感を出す為に僕はあえて暗くしました。ここら辺は好みですね。
注意していただきたい点が一つ。先に手足をくっ付けてしまうと、甲羅の縁の奥まった部分に筆が届かなくなるおそれがありますので、ここは先にしっかり色を入れてください。
6.胴(お腹)と火焔模様と大角
こちらも同様にベースはブラック、その上からアクリルの赤褐色などのブラウン系を乗せています。火焔模様や大角は早く胴体に取り付けたくてウズウズしますが、もうしばらくの我慢です。
7.色を重ねる
色というのは面白いもので、重ねるほどに深みが増してきます。アクリルのミッドナイトブルーやサンダーバーズカラーを筆塗りして、少しずつ色調に変化をもたせていきます。地味~な作業の連続なので飽きると思います。音楽でも聴きながら気長にやりましょう。
8.さらに重ねる
一度青側に振ったものを今度は茶色側に引き寄せます。アクリルの赤褐色やマホガニーを好きな部分に乗せていきます。狙いは何もありません。この辺かなと感じた場所に筆やエアブラシを使って色を重ねていきます。
9.胴(お腹)と火焔模様と大角も重ねる
アクリルのゴールドを使ってドライブラシします。たっぷりではなく、擦れた感じを狙いました。最後にアクリルの赤褐色を部分的に乗せます。こうする事でバラバラのパーツがある種の規則性、繋がりを持つことになります。
10.接着
マジックスムースで接着です。以前は軸打ちをしていたのですが、マジックスムースの存在を教えられて以降、すべてこれに変わりました。硬化に時間はかかりますが、固まってしまえば最強の硬度を発揮してくれますからね。もうこれナシじゃ無理です。
11.調整
がっちり硬化したら、仕上げの目入れと調整です。目はもうめちゃくちゃ大事ですからね、黒目の位置、こだわります。黄色く濁った感じはエナメルのフラットブラウン、クリアイエロー、クリアオレンジを調色したものです。失敗したら躊躇なくやり直しましょう。ここで妥協してしまったらせっかくの努力が半ば流れてしまいます。
目が入ったら、何度も全体を眺めて調整します。もう少し色を足した方がいい部分、引いた方がいい部分、好きなだけ眺めてこだわってください。
12.完成
いいですね、ティグリス。惚れ惚れします。平成怪獣ここに在り。そんな心意気を感じます。これからもどんどん怪獣の世界を広げていきたいですね。
僕のレシピは以上です。次はあなたのレシピでティグリスに命を吹き込んでください。