都会の夜、無数の車が行き交う。ヘッドライトの明かりがまるで宇宙の星々のように見える。そんな光景にナレーションが被さる。
「地球は狙われている。宇宙に漂う幾千の星から。恐るべき侵略の魔の手が………」
検問する為に停車させたドライバーが警察官の目の前で発光し、消える………。クール星人による地球侵略の火蓋が切って落とされた―――。
ウルトラセブン第一話、のっけから操演の宇宙人である。しかも登場時間は僅か数分、背後もまったく写らず、セブンのアイスラッガーにスパッと切断されて、ハラハラと枯れ葉のように崩れ落ちていく………。一話に登場する敵役はこれから始まる物語全体を背負って立つ運命にある。そこに円谷プロはクール星人をぶつけてきた。敵役でさえ添え物、今回は物語勝負だと言わんばかりの心意気である。そして結果は皆さんご存知の通り、「ウルトラセブン」は今も尚名作として語り継がれている――――。
クール星人を造形したのはやはり高垣氏。操演ものに目がない氏のこと、6本の手が怪しく動く様を完璧に捉えて表現されている。それにしてもクール星人の背面には驚いた。一面真っ赤で中央には扉のようなものがある。あれは一体なんだろう?「メン・イン・ブラック」よろしく、我々がクール星人と思っているのは実はスーツで、あの扉から出入りしている本体が別にいるのでは………!?
ベースは全面が艶消しブラック、背面はレッドブラウンで行った。ここまでは雑作もない。問題は頭部にあるシルバーの模様だ………。マスキングテープをギザギザに切り、周囲に少しずつ貼り付けて行く。これが相当根気のいる作業となる………。頃合になったらシルバーをエアブラシで細吹き、これを何度も繰り返して行う。最後にシルバーの中央に軽くブラックでタッチを付けてやると、ググッと引き立つ。無数にある塗装の壁、クール星人を作った時、その一つを乗り越えられた気がした。まぁ気のせいかもしれないが………。
全高 |
全長 |
重量 |
原型 |
160mm |
105mm |
80g |
高垣 利信 |
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