不時着した宇宙船の船内で、若い黒髪の少女がダンとフルハシに向って微笑む。その時、換気口から麻酔ガスが噴射され始めた。逃げる間もなく昏倒する三人。朦朧とする意識の中、ダンは何者かが自分に近づいて来るのを見た。丸い輪郭の両側に大きなピンク色の目のようなものが……。まるで昆虫を思わせる奇妙な顔。ピット星人はダンの胸元からそっとウルトラアイを盗み取ると、ガスの霧の中へ消えていった…………。



ピット星人の地球侵略の目的は実に単純明快である。「綺麗だから自分のものにしたい」。
だが地球には地球人が棲んでいる。これもまた、簡単な答えで済ませる。「邪魔だから皆殺しにする」。その為にピット星人はエレキングを連れて来た。ウルトラ警備隊とウルトラセブンの活躍でそのシンプルな野望が阻止された時、彼女達はこう言って笑った。「でも大丈夫。地球の男は可愛い娘に弱いってわかったから」と………。いや待てよ、この刹那的な三段論法はここ最近よく耳にする話である。目的の為には手段を選ばず、その結果がもたらす重大さを微塵も考える事なく、ただ思いつくままに行動する人種。そんな輩が起こす事件は連日メディアを賑わせているではないか。ピット星人、かつて地球にやって来たのは４０年も前であるが、実はそれ以後も続々地球に入り込み、美少女となって己の究極の目的、地球を我がものにする為、邪魔な地球人を皆殺しにしているのかもしれない。とは、我ながら嫌な想像である…………。
ピット星人は２体で地球にやって来た。だから、ピット星人のキットはペアでなければならない。マニア諸兄ならそう言うと思う。確かにそれはそうなのだが、僕が集め出した時にはすでに、Ｊｒ．シリーズのほとんどが絶版品となっていた。だから仕方なく（そう、あくまでも仕方なく……）最初に劇中に現れた方、すなわちピンク色の目をしたピット星人を作り上げた。これ一体ですら手に入れるのは苦労したのだ。さて、高垣氏が原型を手がけたこのピット星人、差し出された左手が「こっちへいらっしゃい」と呼んでいるようで、なんとも意味深だと思いませんか…………。