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VOLKS
誘拐怪人 ケムール人
Chapter of ULTRAQ 〜KEMUR〜
第19話 『2020年の挑戦』より 誘拐怪人 ケムール人
VOLKS オリエントヒーロー NO:035(復刻版)
強く望めばいつかは叶う。そんな言葉がリアルに感じるような出来事となった。これまでなかなか手が届かなかった逸品、ボークスOHケムール人が復刻されたのだ。33年前、ホビージャパンエクストラ冬の号に載った山田卓司(ヤマタクさん)氏の作例、パープル色をしたケムール人が観覧車の側に立つ姿は忘れられない。(さて、僕はどんな風に表現しようか)ボークスから届いたサンプルを眺めながら物思いに耽った。原型は川岸敬巌氏。群雄割拠の時代、ボークスに集った怪獣原型師の中でも実力と人気はトップクラスだったと思う。かく言う僕自身も大の川岸ファンであり、それは今も尚継続中だ。その事を証明するように、今でもキット仲間からは「ケムール人の造型物では川岸版がベスト」という声が度々上がる。すらりと伸びた手足、細長く華奢な胴体には不似合いに見える胸毛と背中の毛、すっと立っただけの姿なのに吸い込まれるような魅力に溢れている。さて、当時の造型資料といえば本とビデオが主である。今ほど印刷はよくないから写真は滲んでいるし、ビデオの画像も鮮明ではない。しかも動きがある分、特徴を捉え難い。穴の開くようにして画面を見つめ、デッキが壊れるくらい一時停止と再生を繰り返したなんて逸話は枚挙にいとまがない。昨今のデジタル技術の革新により、見えなかったものが見えるようになってきた。すると、ケムール人の足にも毛が生え、爪が生えているのが判明。そんなことはかつての資料じゃさっぱり分からないことだった。今回の復刻版ではあえてその部分を修正せず、当時のままの形として出力してある。僕にはそのこだわりが嬉しく感じる。時代の空気感を今に伝えるものとして存在していると思うからだ。とはいえ、折角の機会だ。彩色に関しては可能な限りリアルを追求してみようと考えた。
一番頭を悩ませたのは身体の模様だ。確かになんらかの模様らしきものはあるのだが、それがどんな風に、どんな形で描かれているのかははっきりしない。4K版やカラーライズ版を何度も見返してスマホで写真を撮り(これ、全部昭和にはなかったもの)、判明したことは三つ。『整然としていない』『二層構造』『成田亨氏が描いたデザイン画と近い筆の跡』だった。もちろん画質が進化したからといって分からないことは分からない。ケムール人が出現するのは夜であり、照明をきつめに当ててシルエット的な演出が施してある。全身がくまなく写っているショットも一つもない。よって、おそらくはこうだったんじゃないかと妄想しながらエアブラシと筆を使って模様を描き進めていった。体色にしてもそうで、僕が知る上で現存するケムール人のカラー写真は二枚しかない。一枚はデパートかなにかに展示されていた時のもの、もう一枚は「ゴジラ」の監督である手塚昌明氏がイベントで撮ったものである。意外と頭の色は柘榴色をしており、手足はもちろん身体にも赤茶でくすんだ部分が見て取れる。目の周りにはまつ毛を模したような赤茶色のボアが貼られているのには驚いた。それらの情報を複合し、全体のバランスを見ながら色を乗せていった。
仕上がった作例はあくまでも僕の検証と考察と想像の結果である。オリジナル版にまだ手をつけていない人、これを機にリペイントしようと思っている人、復刻版を手にした人、それぞれが自分の解釈と想像で果敢にチャレンジされることを願う。まさに2024年の挑戦である。
全高
パーツ数
付属品
材質
370mm
7点
サブタイトルのプレート
ウレタン樹脂
原型師
川岸 敬巌