通称「立ちパゴス」。以前、ボークスJr.でも同じポーズを作ったことがある。両手をだらりと下げ、上を見上げて首を傾げている。まったく怪獣らしいオーラがないのは特写用だったからだ。少年マガジンの表紙撮影か、それともTBSがマスコミ向けに行った「ウルトラQ」の撮影終了会見の時のものか。いずれにせよ「ハイ、チーズ」で撮られた写真からの立体化である。勘違いしないでいただきたいが、それが悪いとは一切思っていない。むしろ、このポーズはとても味があり、怪獣という猛々しい存在の内にある可愛げのようなものが溢れている。つまり、これはこれで大好きなのだ。
原型は浅井篤氏の手によるもの。やはりJr.とはサイズが違うので、すべてにおいて情報量は桁違いである。首の皺、胴回りの太さ、尻尾の付け根、それに顔の造形などが丹念に造り込まれており、数あるパゴスの中でも現時点でのベストではないだろうか。
当時、パゴスの資料を探していた浅井氏に「ウルトラマンの現場より」という写真集を勧めた。この本にはこれまで表に出たことのない写真が数多く掲載されていたからだ。後に浅井氏から大いに役立ったという報告を貰った。なのでこのパゴスには僕のバックアップも加わっていると勝手ながら悦に入っている(笑)ただ、一点だけ問題が……。このキットはレジンのムクである。3kgもある。五十肩を患っている身としては拷問にも等しい苦労だった。
彩色は想像以上に難しかった。ご存知の通りパゴスは単色である。いわば茶色一色で成り立っている。でも、そんな風に塗ってしまうと立体感は出ない。いつものようにガイアノーツのフラットブラックで一番深いラインを作り、次にミスターカラーの土地色(522)で全体を覆っていく。そこから少しずつ陰影をつける為に、マホガニー(42)や艦底色(29)をエアブラシで吹いていった。とはいえ、パゴスのイメージからはまだ色が濃すぎるし、なんといっても単調に見える。そこで考えた。もっと色のイメージを広げて深みを出すにはどうすればいいか。現存するカラー写真を眺めていたら、ふと緑色を加えることを思いついた。暗緑色(15)を陰になる部分に筆で塗り込んでいく。特に背中は暗いから念入りにやった。ここまでがベース塗装だ。今度はサンディブラウン(19)をお腹側に重点的をおいて、光の当たる部分にめがけて吹いていく。色が届かない部分は薄め液で薄めたものを筆で軽く塗り込む。ガイアノーツのエナメル塗料赤サビ(51)やタミヤカラーのデザートイエロー(XF−59)なども使って、土埃が皮膚に付着している様を表現した。この辺りの感じは好みなので、ご自分の好きなようにやればいい。やり過ぎたと思ったら、少し前から戻ればいいだけだ。その際、色を残したまま上から加えていけば更なる複雑な色味が出せる筈。
パゴスは何度やっても難しい。ゴモラに通じるものがある。でも、やり遂げた後はすこぶる嬉しい。これもまた共通しているところだ。
全長 |
重量 |
パーツ数 |
付属品 |
320mm |
3000g |
10点 |
なし |
材質 |
原型師 |
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ウレタン樹脂 |
浅井 篤 |
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