こんなキットは二度と世に出ないだろう。そう思って(無理して)買ったキットが幾つかある。実はその多くは橋本さんが造型している。「イモラ」に「ナキラ」、今回の「悪魔ッ子」もその一つだ。好きなもの、造りたいものに真正面から向き合う橋本さんらしい。流石に「ナナちゃん」や「コロリン」までは手が伸びなかったが、その大いなる造型魂には常日頃から感服している。
随分長い間、積んどく棚の肥やしとなっていた「悪魔ッ子」だが、ついにスポットライトが当る時が来た。詳しい理由は明かせないが、円谷プロとコモリプロジェクトのコラボレーションによるものだとだけ明記しておく。制作はフライトギアの師弟にお任せすることにした。師匠の土井眞一氏が線路などのベースを、弟子のフチノカオリ氏がリリーを彩色してくれた。フチノ氏はモリプロジェクトのインストで、毎回組立て説明書のイラストを描いてくれている。可愛い図柄と分かりやすい構成を一目で気に入ったからだ。さて、彩色の方は水玉のドット模様に苦労されたようだ。ご覧の通り、ずん胴のように頭からすっぽりと被る服には襟から裾にいたるまですべてに水玉が付いている。しかも、服は白地である。食み出したら容赦なく目立ってしまう。まさに苦行だったと思う。しかしながら、リリーを塗るのは愉しかったのだそうだ。塗り進めるにつれ、リリーを演じた坂部紀子ちゃんが子供の頃の友達とダブッて見えたのだそう。最後はそっくりになって、友達の名前を呼んでいたそうだ。なんとまぁこれぞ「ウルトラQ」の真骨頂ではないか。あなたの身体はあなたの目を離れて、不思議な時間の中に入っていくというものだ。
完成したキットを眺めて、橋本さんはよくぞこれを造ったものだとあらためて思った。リリーの幽体がリリー本体を殺そうと線路を歩く印象的なシーン。いや、ゾッとするほど怖ろしいシーンだ。線路に枕木、バラスト(線路の石のこと)までしっかり作り込まれていて、思いの深さを知ることが出来る。しかも、オマケは超短波ジアテルミーときてる。もはや呆れて笑うしかない。と同時にあらためてガレージキットは素晴らしいと思った。万歳である。
全長 |
重量 |
パーツ数 |
付属品 |
210mm(リリー単体) |
2200g(ベース込み) |
8点 |
超短波ジアテルミー |
原型師 |
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橋本 智 |
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