巨人
第22話 『変身』より 巨人
かなめみお 怪々大行進 NO:054
 


これまでずっと見て見ぬふりをしてきた人間体のキット。なぜ避けてきたのか? 理由は一つ、ちゃんと塗れるか自信がなかったからだ。人肌の透明感をどうやって出せばいいのか、皆目見当がつかなかった。しかし、横山先生のモデリングブックやFBでの見事な作例の数々。そして、友人のKAZさんや土井師匠の貴重な助言もあり、重い腰を上げてみることにした。
原型は素晴らしい。森下要さんの手によるものだ。これが初の人物造型とはとても思えない。筋肉の付き方、血管の流れ、あばら骨の浮き方などなど、言い出せば枚挙にいとまがない。長らくライダー怪人を作られている要さんだからこそ、人体の構造を的確に表現できたのではと思う。さて、この見事な原型を損なわずに塗るにはどうすればいいか? まずはセオリー通り、きっちりと人肌を再現することから始めた。骨の上には血管と筋肉がある。なので、赤寄りの茶色から。その上に脂肪があるから、黄色やオレンジをアクセントに置いていく。皮膚はクリアーを足した黄土色を濃い目から薄目に何層も重ね塗り。やがて、黄色味を帯びた日本人の肌色ができていく。しかし、問題はここからだ。巨人は延々と山を彷徨っている。雨に打たれ、太陽を浴び、髭も胸毛も伸び放題。その薄汚さを現すにはどうすればいいか? そこでテーマを設けた。一年間外で暮らし、風呂にも入っていないという人物描写だ。日焼けの表現に取り掛かる。クリアーで薄めた茶褐色を注意深く重ね塗り。すると、なんとなく赤黒い日焼け感が溢れてきた。そこで今度は汚れと垢と日焼けによる皮剥けに移る。全体に、部分的に、エナメルの茶系を薄めて塗り、しっかり渇いたら筆やティッシュで拭きとる。その繰り返し。最後に自分が誰なのか分からない感じの虚ろな瞳を描き込んで終了。もっと上手い人がトライすれば表現のバリエーションも広がるんだと思うが、今の僕の技量ではこれが精一杯だ。
それにしてもガレージキットの世界は面白い。まさか、巨人なんてアイテムが出てくるなんて想像だにしなかった。これからも原型師の皆さんの果敢なチャレンジは続くだろう。受けるこちらもますます旺盛なチャレンジ魂を燃やさなければ。





全長 重量 全パーツ数 材質
280mm 400g 8点 ウレタン樹脂
付属品 原型製作    
あや子 森下 要