それはドリフの自爆ネタそっくりだった。顔は黒く煤けて髪は逆立って服はボロボロに 破けて………、そんな姿の少年が大きなカメに跨っている写真。怪獣図鑑に載ったガメ
ロン、マニア諸兄の記憶はだいたいこれじゃないだろうか。怪獣より遥かにインパクト のある少年の姿に、その時はまだウルトラQを見た事のなかった僕にとって、
「これって一体全体どんな話なんだ………?」
と想像を膨らませてくれた一枚の写真でもあった。
さて、当のガメロンである。ただのデカイ亀だと思いきや、どっこい甲羅にはスピード メーター、両側には方向指示器、マッハのスピードで空を飛び、次元をも軽々と飛び越
える。とぼけた顔をして実力は計り知れないものを持っているという、実に日本人好み の亀なのだ。そんなガメロンを造型したのはご存知畑中正義氏、Jr.ワールドで氏の
作品には散々お世話になった身の僕である。今更その造形力を云々するような野暮はや めておく。小さいながらも徹底的に作り込まれたガメロン、特に皮膚の感じなどをご覧
いただければ匠の技は一目瞭然だと思う。
塗装はクサガメを参考にした。クサガメは緑っぽいものから斑模様、茶色に寄ったもの から黒尽くめまで多種多様である。そこから僕は黒系茶色霞という感じを選択した。実
はガメロンの甲羅は現存していて、古ぼけてはいるがその色調を今に伝えている。黒系 茶色霞、それがガメロンの甲羅の感じである。映像では甲羅の筋に白いラインが引かれ
ているように見えるのだが、現物の甲羅にはそれがほとんど見当たらない。よってブラ ウンやダークイエローで墨入れを施した。しかし、哀しいかな写真ではほとんど写って
いない………。デジカメってほんとに難しい。塗装でもっとも苦労したのはガメロンの 目、元々のサイズが小さいのでクリクリ目玉はこれまた申し訳ないくらいの小ささなの
だ。息を止め集中力を高めて筆を置く。
『………老眼が来たら、もうこのサイズを塗るのは厳しいかもしれないな』
そんな事を頭の片隅で想いつつ………。
全高 |
重量 |
材質 |
原型 |
115mm |
90g |
ウレタン樹脂 |
畑中 正義 |
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