印象に残っているのは正面からの写真、だろうか。丸い顔に厚いピンク色の唇、クリーム色の胴体。頭に毛が三本生えてればシルエットはオバQだ。名前はガマとクジラでガマクジラ。なんの捻りもない。それだけにインパクトは強い(笑)
さてこのガマクジラ、30cmサイズでは長らく放置されていた。理由は全身に生えた棘のせいだ。しかも、よく見れば棘には先端が丸いものとU字型のものが二種類存在する。1200本ともいわれるこの棘をどう扱うか? 折れるのを覚悟で最初から成型してしまうか、それとも用意したピンをユーザーにちまちま埋め込んでもらうか。この難問が腕揃いの原型師をもってしても躊躇させていたようだ。そこに一人の男が現れる。アトラゴン宮崎逸志。悩む前に作ってしまえと、ついにガマクジラを完成させてしまった。ピンを埋め込んだまま成型し、洗浄や製作段階で折れるのを想定して、附属に三種類のピンのパーツを付けるという形で。しかもこれがウルトラ怪獣初原型というから驚きだ。2005年、ガマクジラを発表してからの宮崎さんの活躍は誰もが知るところ。宮崎さんの英断がなければ、30cmサイズのガマクジラが日の目を見るのはまだ随分と先になった事だろう。
製作はひたすら忍耐と集中が求められた。まずは折れたピンを徹底的に修復し、筆でそっとサフを塗る。ここから塗装に入るのだが、手に持つという行為を徹底して減らしたい。持てば折角修復したピンが折れてしまうからだ。しかし、お腹側を塗る為には、どうやってもピンのある背中を下向きにしなければならない。そこで、ターンテーブルの上にタオルを敷き、その上に引っ越しの時などに使う緩衝材の薄い膜を幾重にも敷き詰めた。そして、万が一ピンが折れてもすぐに見つかるように、濃い色の風呂敷を広げる。これが功を奏し、裏返しにしてもピンが折れる事は一度もなかった。塗装はブルーレイを確認しつつ、ダークグリーンから明るいグリーンへ移行、イエローも要所に使った。腹部はサンディブラウンやタンでグラデをかけていく。ピンはホワイトとパールで差をつけてみた。最後に半光沢のスプレーを吹いて完成。なるだけ触れずに塗るという行為がこんなにも疲れるなんて思いもしなかった。息を殺し過ぎて気分も悪くなったが、なんとかガマグシラの雰囲気は出たんじゃないかと思っている。
全長 |
重量 |
付属品 |
原型師 |
400mm |
2000g |
補修パーツ (インセクトピン・ビーズパーツ・リングパーツ) |
宮崎 逸志 |
|