突如、鉱物試験場のビルが倒壊、中から全身青色の怪獣、アボラスが姿を現した。進撃を開始するアボラス。邪魔なビルは口から溶解液を吐いて溶かしてしまう。「再びこの怪獣に生を与えたなら、人類は滅亡するであろう」。古代人が現代人に宛てた警告文。知らなかったとはいえ、我々は悪魔に再び生を与えてしまったのだ―――。
アボラスもまた改造怪獣の一体である。見覚えのある蛇腹の身体、そう、アボラスはレッドキングの首をすげ替えて誕生した。とはいえ、アボラスの存在感は凄い。全身、緑がかった青色の体色、化石をモチーフにしたと言う左右非対象の巨大な頭、ウルトラマンに三度もスペシウム光線を使わせた強さ、どれをとっても強烈な印象を放っている。実際、アボラスの原型を作った川岸氏も、インスト(箱の中に入っている組み立ての図解)の文面の中で、自分が一番好きな怪獣はアボラスだと告白している。ウルトラを生み出したスタッフ達の魔法にかかれば、改造であろうとなかろうと、唯一無二の個性を備えた怪獣が生まれて来る。キットを作るとあらためていろんな事を教えられる。
この第19話の特撮はクレジットこそされてはいないが、円谷英二監督自らがタクトを振ったと言う。代々木の国立競技場で3億5千万年振りに合間見えるアボラスとバニラ。
かつてゴジラとキングコングが熱海城を挟んで格闘したように、円谷監督は二大怪獣の激しい組み合いを「寄り」と「引き」の交互を使って効果的に表現した。アボラスの溶解液とバニラの火焔が空中でぶつかり爆発を起こすシーンなどは、特に記憶の底に焼き付いている。上記した通り、アボラスの原型は川岸氏である。アボラスが一番好きな怪獣と言うだけあって、ポージングは練り上げられたものとなっている。太い尻尾を振り上げ、上体を前に倒し、身体をねじって進撃するアボラス。激しい動きの一瞬を切り取った姿が見事な技術で表現されている。曲がりくねった蛇腹の感じなどはまさに芸術的の一語に尽きる出来栄えである。だが、アボラスを完璧に作り上げたとしても物足りなさは否めない。アボラスの隣には絶対にバニラが必要なのである。
全高 |
重量 |
材質 |
原型 |
170mm |
295g |
ウレタン樹脂 |
川岸 敬厳 |
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