怪彗星ツイフォンは僅かな差で地球をかすめて飛び去って行った―――。「地球は美しい………」、雪に覆われた日本アルプスの光景を見つめてハヤタが呟く。二度と訪れる事のない朝、一度はそう覚悟した。だが朝は再び訪れたのである。その時、雪山の向こうに怪獣が現れる。雪のように白い身体とゴリラのように逞しい肉付き、まるで伝説の雪男を思わせるような風貌。冷凍怪獣ギガスが目覚めたのである。
ギガスもまた改造怪獣の一体である。高原竜ヒドラの改造を前提に成田氏がデザインを行ったのだが、いつも通り、完璧に別の怪獣へと生まれ変わっている。その手腕は本当に素晴らしい。称える言葉が見つからないほど見事な技だと思う。ヒドラからギガスへ、それは鳥から猿への移行である。新たに生まれ出でたギガスは筋肉で盛り上がった二つの肩を震わせ、両手を胸の前に構えて雄叫びを上げる。その姿はレスラーが己の力を誇示しようと両腕を曲げて威嚇する仕草に似ている。そんなパワー満点のギガスだが、顔の方はちょこんと小さく実に愛嬌がある。坊ちゃん刈りのような狭い額の下に、パチクリした目と上を向いた小さな鼻が付いていて、怖いというよりも間抜けな印象すら漂う。身体付きと表情がまったくアンバランスで、そこがまたギガスの魅力にもなっている。ツイフォンから飛来したドラコと闘うが、羽ばたいて前に後にと態勢を変えるドラコの動きについていけず、カマ状の手で激しく殴られてなす術もなかった。途中から参戦したレットキング(二代目)にもいいように殴られて、ようやくその場を逃げ出した所をイデの発明した強力乾燥ミサイルで木っ端微塵に粉砕されてしまった。なんだか見せ場が一つもない気の毒な怪獣であった…………。
そんなギガスではあるが、キットの方は魅力溢れる造形となっている。特に上半身の白い皮膚の形状と、下半身の黒い鱗のような形状の表現などはまったく異なっていて、丁寧に作り込まれている。ポージングもドッシリと重量感溢れており、相手と向き合うギガスの威嚇がこちらにまで伝わってくるようである。
全高 |
重量 |
材質 |
原型 |
150mm |
225g |
ウレタン樹脂 |
川岸 敬厳 |
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