ウルトラマンが死んだ―――。ゼットンは胸に手を当てて大地に横たわるウルトラマンを見下ろすように立っていた。目も鼻も口も定かではないゼットンからは、どんな感情も読み取る事はできない。だだそこには冷めた現実があるだけだった。ウルトラマンが死んだ。我等のヒーロー、ウルトラマンはゼットンに倒された…………。
最近、自分の名前を連呼する女の子が増えているという。彼女達は「私」とは言わず「自分の名前」を言う。「私」という漠然とした一人称よりも、「自分の名前」という固有名詞を使う方がより自己主張ができるからだ。全体の中に埋もれたくないという激しい欲求が、彼女達に「自分の名前」を使わせる。かく言うゼットンも、「ゼットン…」と自分の名前を連呼する。ウルトラマンを倒した実力の持ち主、全体の中に埋もれる事はあり得ないと思うのだが………。ゼットンは顔の黄色い縦筋から(口と言えないのがもどかしい)光球を発射する。怪獣図鑑を見るとその光球は一兆度というとてつもなく熱い球だそうである。子供の頃、この兆という単位がどうにもピンとこなかった。当時は一円で飴玉やガムが買えた。親戚から貰ったお年玉に千円が入っていた時は、驚いて大騒ぎした時代である。ある日母親に「一兆って千円札が何枚分?」と尋ねた事がある。母親は素っ気無く「私には関係なかもんね」と応えた。応えになっていない答え。その後暫らく、僕は一兆という単位があまり大したものではないと思っていたのである………。
ゼットンTYPEUのポーズはウルトラマンと対峙した時の両手を下げたものである。原型は茂木氏が担当した。白と黒と黄色という原色で構成されたゼットン、塗装はかなりの注意と困難を極める。ぺタペタと原色を塗り付ければ、せっかくのキットが安物のおもちゃにみえてしまう。塗装する際には黒の中にもう一つの色、白の中に別の色を見つけて欲しい。そうすると驚くほど深みのあるゼットンに仕上がる筈である。ウルトラマンを倒した憎っくき奴ではあるが、絶対にコレクションから外す訳にはいかない一体である。
全高 |
重量 |
材質 |
原型 |
175mm |
185g |
ウレタン樹脂 |
茂木 弘文 |
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