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VOLKS 伝説怪獣 ウー
Chapter of ULTRAMAN 〜WOO〜第30話 『まぼろしの雪山』より アレイド ウルトラマンシリーズ NO:005 |
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2011年が初版だから、完成に至るまでに十年以上を要してしまったことになる。だが、その間何もしなかったわけではない。バリを取ったり、パーティングラインを削ったりは当然、組み立てたしサフを吹いて塗装だって行った。それでもこれほど時間がかかったのは、何度も跳ね返されたからだ。まるで「一昨日きやがれ!」とでも言うかのように。この圧倒的な造型を前に怖じ気づき、全身ほぼ白一色という単調さになかなか答えを見つけられなかった。つまり、十年余の修行を重ねなければ、僕にウーは仕上げられなかったのだ。 原型を造ったのはやはりこの方、浅川洋氏である。これまでに何度も浅川さんの力量については触れてきた。着ぐるみをガレージキットとして再構築し再現する力と技は、世界屈指といっても誰も異論を唱えることはないだろう。それほどまでに圧倒的である。そんな浅川さんがウーを放った時、もう一つの冠が付加された。それは『造型表現の革命』だ。それまでは粘土で毛を表現する際、【削る】ことが一般的だった。粘土の塊を細く深く削っていくことで柔らかな毛のうねりを造り出していた。だが、浅川さんはまったく別のアプローチを試みた。【重ね】である。毛の束を造型し、それを何層にも組み合わせることでボリュームを出す。パーツが重なることで空気の層を生み出し、そこに陰影が生まれる。初めてこのウーを見た時の衝撃は今でもハッキリと覚えている。ひたすら呆然として眺め続けた。(ウーだ……)と思った。誰しもが同じ思いを持ったことだろう。偉そうに言わせてもらうなら、浅川さんはウーでまた一つ、怪獣造型を高みへと押し上げた。 ここで最初の告白に戻るが、だからこそそう簡単に仕上げることは出来なかったのだ。何度もウーの映像を観て、資料を集め、頭の中でシミュレーションした。白の奥に潜む黄色をどうすれば表現できるのか、それを考え続けた。ベースを真っ白に塗ってそこから筆塗りやエアブラシで色を乗せていくことをやったが、満足なものにはならなかった。今度は黄色をベースにして色を重ねていくやり方を試したが、やっぱり思ったような感じが出ない。そうなると目の位置も決まらず、手足の色もブレてくる。(いよいよウーを完成させたい)そんな思いに駆られるまで、棚の奥に仕舞った。その繰り返しだった。 色はいったい何色使ったのだろう。アクリルの白(も三色)、黄色、黄土色、灰色、水色、茶色、エナメルもクリアーイエロー、クリアーオレンジ、ブラウン、ブラック、サンドイエローと挙げればどんどん出てくる。その間、削ったり、パテを盛ったりもしてその上に色を乗せているからもはや正確には分からない。でも、実はこれが良かったのだ。迷いながら色を幾つも重ねていったからこそ、ある種の『コク』が出た。料理と同じでこれが隠し味となった。 白は魔物だ。どこまでいっても終わりが見えず、袋小路にはまる。正直に告白すると、今もって完成したのかどうか僕にもよく分からない。でも、どこかで完成としないといつまでも触り続けてしまう。距離を置かねばと考えて無理やりピリオドを打ったのだ。いつかまた、ふと何かに気づいて棚から取り出すことになるだろう。その時はおそらく更に深みが増す筈だ。伝説怪獣ウー、その異名は伊逹じゃぁない。
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