幼少期にトラウマを植え付けられた……。それほどスクリーンで観るヘドラは不気味で、妖しく、怖ろしかった。
怪獣道を歩む者なら今更説明することもないのだが、ヘドラは成長と共に次々と形態を変化させる。元々が不定形な存在だから自在に姿を変えられる。最初はオタマジャクシのような幼体だったが、海に流れ込む有毒物質やヘドロを吸い込んで次第に大きくなった。これが水中棲息期だ。やがては陸に上がり、工場の煙突から排煙を吸い込み始める。この姿を上陸期と呼ぶ。更に成長と進化を遂げ、有毒ガスをまき散らしながら空を飛び始める。飛行期だ。ついにはゴジラを遥かに上回る巨大な完全期となる。さて、今回のキットは四足歩行の上陸期、ヘドラファンの中でも一番人気のある姿だという。僕も上陸期のフォルムが一番好きで、こうしてキットを購入するに至った。メーカーは大学の大先輩でもある山田晴稔氏率いる「レジンシェフとうけけ団」。原型は次々とヘドラを造型して世に送り出している杉田知宏氏。こだわりがある分、それは造形にも随所に反映されている。兎に角、パーツ割りが凄い。ヘドラのヒダをここまで細かく細分化したキットは他にないんじゃないかな。杉田氏のヘドラ愛に圧倒されるやら、呆れるやら(苦笑)
制作はいつものように整形、洗浄からスタート。ヒダは箱の中で折れたり歪んだりしているものもある為、気をつけなければならない。間違ってゴミにしないように。いつもなら下地を塗る前に接着してパテ埋めをするのだが、今回はほとんどない。接着してしまうと塗れない箇所が出てくる為、ほぼバラバラ状態で下地を塗った。ベースはエナメルの黒。凹みに沿ってエアブラシで吹いていく。次にジャーマングレイ、フィールドブルー、フタロシアニンブルー等で陰影を作っていく。次にその上に暗緑色やグリーンFS34092などを乗せて、上陸期特有の緑色の体色を作っていく。この時、全部を緑に寄せるのではなく、青も意識すると深みが増す。本来ならここから仕上げの工程に向かうのだが、今回はどうしても表現したい体色があった。それは劇中、ワンシーンしか登場しなかった上陸期の銀色バージョンだ。無表情で無数の車を飲み込んでいく銀色のヘドラは恐怖以外の何ものでもなかった……。今回、制作するにあたってあの時の姿を再現してみたかったのだ。ガイアノーツのスターブライトアイアンでガシガシと汚しをかけていく。すると、鈍い銀色の下に緑の肌が透けて見える、あの時のヘドラが浮かび上がってきた。
余談だが、組み立てて仕上げ塗装をする間、ヘドラをタオルにくるんで赤ちゃんのように腕に抱いていた。そうしなければ塗れないし、雑に扱うと不安定なヒダが折れてしまう。夜な夜なトラウマの銀色ヘドラを腕に抱き、撫でるように筆で色を付けていく。そんな姿をかつての僕が見たらなんと思うだろう……。声も出さず、はらはらと涙を流すような気がする……苦笑
全長 |
重量 |
パーツ数 |
材質 |
410mm |
2000g |
18点 |
ウレタン樹脂 |
付属品 |
原型師 |
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ヘドラ幼体・目玉シール |
杉田 知宏 |
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