ガメラの好敵手バルゴン。存在は若干、ギャオスに押され気味な感もあるが、なかなかどうして素晴らしい怪獣である。特徴は幾らでも挙げられる。細長い胴体に大きな頭、瞼は上下ではなく左右に開閉する。長い舌からはなんでも凍らせる冷凍光線を吐き、背中にある六本のトゲからは悪魔の虹と呼ばれる殺人光線を放つ。炎のガメラと氷のバルゴン、まるで「ゲーム・オブ・スローンズ」のような対比が見事であり、ガメラとの死闘も実に見応えがあった。バルゴンの造型は高山良策氏が担当し、細部をエキスプロが行っている。完全にウルトラの系譜である。高山氏と四つ足に外れなし。バルゴンを見ているとあらためてそう実感させられる。
そんなバルゴンを平成の世に甦えらせたのは、怪獣ガレージキット界の若き天才、竹添展氏だ。竹添氏は研究はもちろんのこと、作品に昭和の精神性を注ぎ込むことで知られる。片手を上げ、尻尾を振り上げたダイナミックな動き。このポーズはまさに子供の頃に胸をときめかせたバルゴンの姿だ。こんな素晴らしい造型を目の前にすると、武者震いしてくる。しかし、問題もあった。映画本編はほとんどがナイトシーンであり、バルゴンの色がよく分からない。竹添氏が発表されている数少ないカラー写真のコピーをくれたが、それも数枚である。だから僕も「再現」を目指すのではなく、記憶の中にあるバルゴンの色を「表現」してみることにした。僕の中のバルゴンは茶色ではなく紫色だ。それを基本にして塗装を組み立てていった。いつものようにベースを黒で整え、そこから黒に近いこげ茶色を乗せていった。次に紫色を使って黒、こげ茶色に膜を乗せるように塗っていく。腹は明るい茶色なので、そこは抑え気味にした。次に筆で濃い青を描き込んでいく。こうすることで遠目には紫色が浮き立ってくる。これを何度か繰り返して全体のバランスを整えていった。大きな目玉は左側が前向き、右側が中央にくるように描き込む。ベムラーと同じようにバルゴンも左右非対称の表情をしている。角や背中のトゲはモノクロ写真を見ながら汚れを表現した。
再現も良いが、時には記憶の中にある色を取り出すのも楽しい。これもガレージキットの楽しみの一つである。
全高 |
重量 |
パーツ数 |
付属品 |
460mm |
2000g |
11点 |
なし |
材質 |
原型師 |
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ウレタン樹脂 |
竹添 展 |
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