異様なオーラを放つキットがある。古くはボークスの大石ガラモンやキングギドラ、イノウエアーツの水爆大怪獣もそう。最近では橋本ナースや浅川ジェロニモンがそうだった。山脇ゴジラを見た瞬間、同じものを感じた。目を逸らすことが出来ず、金縛りになる感覚……。なんとしても作りたい、作らなければ後悔すると思った。
映画では一切、着ぐるみは登場しない。すべてフルCGで作成されたゴジラ。いわば、「画」である。静止画で見るとよく分かるが、身体の凹凸はぼやけて判然としない。見ている側が、なんとなくこんな感じかなと脳内でイメージを補完しているのだ。「画」を「立体」にする。二次元を三次元に起こす。これは大変な作業である。完璧なトレース能力はもちろん、大いなる想像力とそれを実現するだけの技術が試される。原型師山脇隆は果敢にチャレンジし、見事に成し遂げた。見て欲しい、このゴジラの勇姿を。全体のバランス、どっしりとした重厚感と鋼を思わせる硬質感。持つと刺さるくらいに反り返ったモールドの嵐。敢えて言わせてもらおう。このゴジラは間違いなく本編よりカッコいい。ここまでの造形物を仕上げるのは並大抵の苦労ではなかったに違いない。山脇氏の造型力はほんとうに素晴らしい。さて、これだけの原型だ。手を付ける前に僕が気をつけた点は一つだけ。台無しにしないこと(笑)いつも通り、最初に口の中を仕上げ、次に目と爪を塗った。重さが3kgもあるから、くっ付けてしまうと取り回しが容易ではないからだ。全体のベースは黒一色。遠慮なく真っ黒にした。ギャレゴジはとにかく黒なのだ。だからこそ次の工程を迷った。色を塗り重ねていくと、次第に黒が失われてしまう。そこで、以前kaz氏に教えてもらった浸透技法を試すことにした。使ったのはグリーン、ブルー、オレンジ、イエロー、レッド。すべてクレオスのアクリルクリアーだ。もちろん、要所にはエナメルで墨入れもしているが、あくまでも補助的なもの。ほとんどはクリアーを筆やエアブラシで塗っていった。正直、偶然に上手くいった箇所も少なくない。この技法、まだまだ自分のものにはできていない。これから何度も研磨していこうと思う。今、僕の目の前に完成したゴジラがいる。背中の方から光が当たって、エッジが際立ち、体表が輝いている部分と暗く沈んだ部分がある。光の具合でこれほど雰囲気が変わるキットもそうない。まるで万華鏡みたいだ。
全高 |
重量 |
パーツ数 |
付属品 |
310mm |
3000g |
20点 |
なし |
材質 |
原型師 |
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ウレタン樹脂 |
山脇 隆 |
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