怪獣王ゴジラが初めて戦った相手は、四足、全身棘だらけの暴竜アンギラスだ。1億5千万年前に棲息していた太古の恐竜アンキロサウルスが、度重なる水爆実験で現代に甦った――という設定である。ゴジラシリーズでは数々の怪獣が放射能の影響で変化したり、永い眠りから目覚めたりするが、やはりアンギラスもそう。世界唯一の被爆国であり、放射能の悲惨さを肌身で知っているからこその発想だといえる。アンギラスといえば背中に剣山を背負ったような形態もそうだが、啼き声も特徴的だ。「アオーン」(アイーンではない)という鼻に掛かったような甲高い声が耳に残る。まるで狼の遠吠えのようでもあり、どこか物悲しい。思い起こせばゴジラ、ラドン、キングギドラと昔の怪獣達は皆、声にも特徴が秀でていた。声を聞くだけでどの怪獣なのかがすぐに分かったものだ。声も重要な特徴の一つと捉え、こだわりを持っていたスタッフの心意気は本当に素晴らしい。だからこそ、半世紀を越えた今でも変わりなく愛されているのだと思う。実はアンギラス、二つのタイプがある。「怪獣総進撃」より登場した二代目は、初代と違って表情が優しい。凶暴な目は円らな瞳になり、シャープな身体つきは全体的に丸みを帯びた。子供の頃は断然二代目の方が好きだった。親しみやすいというのはもちろん、ゴジラの味方(子分)なのも受け入れやすかった理由だ。しかし、大人になるにつれて味覚が変化するように、だんだんと二代目に対する興味は薄れていった。猛々しさ、獰猛さ、激しさ。すべてを兼ね備えた初代は圧倒的にカッコイイ。
そこでキットの話だ。丹羽氏の造型したアンギラスは、HPで見た瞬間……惚れた。まさに初代のイメージをあますところなく再現していると感じた。パーツは組みやすく、背中の棘も一体成型で綺麗に抜けている。かつてのガレージキットを知っている者なら、あらためて抜きの進化に驚かざるをえない。塗装はエメラルドグリーンを目指した。逆襲ゴジラは赤っぽく、初代アンギラスは緑っぽい。ポスターにもそんな彼等が描かれている。黒から立ち上げて、緑を何層も上乗せしていった。モノクロ写真と何度もにらめっこしながら、イメージを高めた。完成したものは、僕の脳内にある初代の姿である。
全高 |
重量 |
パーツ数 |
付属品 |
280mm |
2000g |
12点 |
なし |
材質 |
原型師 |
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ウレタン樹脂 |
丹羽 俊介 |
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