いくら東宝・大映モノの扉が開いたからって、ここにいくか? 後々になって、その時の自分がいかに冷静じゃなかったかと思ったものだ。これまでに作ったキットは数あれど、大きさも最大、難易度も最大級の難物、ボークスOHキングギドラ。勢い余ってついに完成へと至った。
このキットの最大の難点は、なんといっても二枚の大きな羽だ。今ではこの薄い羽ですら抜けるのだが、1985年当時は不可能だった。よって、代用するものは紙。針金を芯にその上から和紙を張り、自作をしなければならない。多くの人がこのキットを買ったと思うが、作るのをためらって押し入れに置いているのは、間違いなくこの羽の為だと思われる。かくいう僕もそんな一人だ(苦笑) 博多在住の造型家、土井師匠との出会いがなければ、今も押し入れの中に居続けたことだろう。土井師匠の助言と的確なテクニックにより、芯は針金や竹ひごではなくアルミ線に変更した。理由は羽の先端の鉤爪を表現するためだ。アルミ線ならば強度もあり加工もし易い。和紙は付属のものではなく、もっと薄手のものを使用した。木工用ボンドを薄めて芯に和紙を張り、渇くのを待ってその上から何度もラッカースプレーを吹きつける。和紙の質感がパリパリになったところで、今度はその上に樹脂を薄く塗る。これで紙の質感はプラスチックのそれへと変化する。しかし、こういう作業はなかなか一般家庭では難しい。道具や資材、何より匂いが凄いのだ……。これもまた、師匠との出会いで自由に工房を使わせていただいたからこそ可能となった。本当に感謝しかない。
さて、塗装のポイントはどんな金色にするか、である。金色は単純明快であり、目立つ。だからこそ扱いはとても難しい。僕はキンピカのギドラよりも、中・高生のブラバン部が使い込んだ管楽器のような色味を出したかった。黒は一切使わず、濃いブラウンや薄いブラウンにグレーを混ぜ、それを凹凸に合わせて吹きつける。その上から何度も納得のいくまで金でドライブラシをかけた。首の周りにある毛は付属のドールヘアーではなく、ファーを裏ごししたものを使った。黒、こげ茶、茶色を混ぜて適当な長さにし、木工用ボンドを水に薄めて資料写真を見ながら貼り付けていった。
三十年という眠りから醒めた宇宙超怪獣。置物ではなく生物感、躍動するキングギドラを感じていただけたら嬉しい。
全高 |
重量 |
パーツ数 |
材質 |
500mm |
3100g |
33点 |
ウレタン樹脂 |
原型師 |
付属品 |
大石 武司 |
鳥居 ネームプレート アルミ線12本 和紙1枚 ドールヘアー |
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