我が家には南海の大怪獣が三体棲息している。その内の一体、大イカ怪獣ゲゾラは幼い頃のトラウマを乗り越える為に、真っ先にチャレンジした(詳しくはゲゾラの項を参照のこと)。さて、お次はどちらをやるべきか? 大ガニのガニメか、大ガメのカメーバか。(ガニメは植毛が大変そう)だし、(カメーバはお腹の模様をどんな風に描けばいいのか)分からない。これまでに何度か箱を開けてしげしげとパーツを眺め、制作の行程と完成形をイメージしてみたが、これがなかなか定まらない。だが、海洋堂のガメラ2(酒井ゆうじ氏原型)を作ったことをきっかけに、勢いに乗じてカメーバを始めることにした。
原型はこの方、杉田知宏氏だ。圧倒的なこだわりと絶妙の遊び心を併せ持った稀有な原型師さんである。ゲゾラの内側に中島春雄さんが造型されていたことは度肝を抜かれたが、このカメーバも引けを取らない。全身を覆うモールドの緻密さには驚きを通り越して唖然となる。特に腹部は着ぐるみをトレースしたのではないかと思うほどであり、色を乗せるとジュワッという感じで染み込んでいく。まるでスポンジのようなのだ。凸と凹の高低差が生み出すこの吸水現象には感動すら覚えた。
カメーバの着ぐるみは安丸信行氏が手がけた。聞くところによると、カメーバは初代ゴジラ以降長らく途絶えていた、全身の粘土原型から起こされた怪獣なのだそうだ。理由は手間暇がかかり過ぎるのと、おそらくは予算の問題もあるのだろう。しかし、細部に至る造り込みをみれば、その仕上がりは一目瞭然である。掌の裏側までしっかり手が及んでおり、リアルな生物感が際立っている。塗装もそうだ。イモリやカエル、またはトカゲやヘビのような鮮やかで複雑な配色を持つ色素胞が施されている。一体これをどうやって再現すればいいのか。しかも、カメーバの資料は決して多くなく、本編の登場シーンを何枚写真に撮っても、はっきりと分かる画角は一枚も無い。つまりは足りない部分を想像で補うしかない。
彩色はいつものように口の中を仕上げてから全体に取りかかった。影になる部分に黒を入れ、甲羅の方にはシーブルーやフィールドブルーを重ね、お腹の側にはセールカラーにブラウンを混ぜて調色したものをエアブラシで吹いた。ただ、あくまでもこれはキャンバスであり、ここから筆を使っての色付けがスタートする。最初の黒色模様はフィールドブルーで、そこからミディアムブルーに深い青を足して調色したものを重ねた。更には黄色模様、茶色模様を加え、色数を増やしていく。縁取りはエアブラシを細吹きにして慣らしていった。ただし、この辺りは僕の想像であり、決して正しいということはない。これからチャレンジする皆さんは、自分の色模様を探求して遊んでいただきたい。瞳は付属のデカールシールがあったのだが、位置を合わせて貼るのが難しくて早々に断念した。拡大鏡を使って手描きでアタックしたのが、僕としてはこちらの方がしっくりくるようだ。
制作後記としていろいろと書いてきたが、本当にこのカメーバは素晴らしい。杉田氏の情熱にほんの少しでも応えられたなら幸せである。
全長 |
パーツ数 |
付属品 |
材質 |
300mm (首を縮めた状態) |
16点 |
瞳のデカールシール |
ウレタン樹脂 |
原型師 |
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杉田 知宏 |
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