正直な話、キットの販売がこんなに大変なものだとは知りませんでした。抜き屋さんから型抜きされたパーツがでっかいダンボール箱に入って届くんですが、それがもう何十箱にもります。胴体、右足、左手、牙とそれぞれのパーツが山となっていて、それらを広げながら一体一体検品し、今度は一式になるよう箱詰めしていくわけです。その間、我が家の玄関から廊下、仕事場はびっしりとパーツで埋め尽くされます。一人でやっていたらどれだけ時間がかかるか分からないので、奥さんやプロジェクトメンバーに手伝ってもらいます。そんな中、毎回助っ人として駆けつけてくれるのが原型師のおぐらゆいさんです。昨年は販売に加えて展覧会の箱詰め、箱出しまでもやってくれました。忙しい中、いつもにこにこしてせかせかと働いてくれます。もう、ありがたいやら申し訳ないやら、感謝の気持ちでいっぱいです。だから、せめてもの恩返しにと造型物の作例を買って出ました。去年は『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』からモスラの幼虫、今回は『モスラ3 キングギドラ襲来』からレインボーモスラです。これまでモスラは塗ったことなかったですし大いに興味もあったので、あまり深く考えずに申し出ました。そう、僕はレインボーモスラを思いっきり甘く見ていたのです……。
ご覧の通り、おぐらさんの造型は圧倒的です。特に毛の表現には目を見張りました。粘土の塊をひたすら削って毛のうねりを表現するのは、才能以上に根気が求められます。クリエイティブというより作業ですからね、これは。どれほどモスラが好きなのか、この造型からは真っ直ぐな気持ちが伝わってきます。だからこそ、こちらも同等のエネルギーで向き合わねばなりません。僕が自分に課したテーマは、『虹色に輝く羽をいかに美しく、かつ、臨場感のあるものに仕上げるか』ということ。つまり、完成したてのまっさらなレインボーモスラではなく、ゴジラと激しく渡り合う生物としてのレインボーモスラの風情です。だからこそ、羽のベースは黒から入りました。最初からワントーン沈みこませようという計算です。でも、これをやるのはなかなか勇気が要りました。作例品は必ずワンフェスの展示に間に合わせなければならず、かつ、僕も仕事がぎゅーぎゅーに詰まっていて時間の猶予がほとんどない。つまり、失敗は許されないのです。黒の上に白を敷き詰め、薄っすらと灰色になった羽にマスキング地獄が始まります。キットに付属されるおぐらさん制作の型紙から、マスキングシートにトレースした模様をデザインナイフで切り出して貼っていきます。この作業、時間の短縮を目指して夫婦でトライしました。貼った部分は後々黒になる個所ですので、それを意識しながら虹色の彩色を施していきます。当初は虹色を塗った後、マスキングシートを剥がして中抜きした個所に黒を筆塗りするつもりでした。しかし、やってみたらこれがまったく上手くいきません。筆ムラは出るわ、折角のラインが塗り潰れるはで台無しになります。(ムムム、このままでは間に合わないぞ……)しばし熟考し、奥さんに「もう一度手伝ってください」と頭を下げ、再度マスキングをする方法を選びました。今度は虹色の部分をすべて隠し、中抜きした部分に黒を吹き付けるのです。完成した羽を見た時は、喜びよりも脱力が大きかったです……苦笑
完成したレインボーモスラはワンフェス会場で展示され、お客さんの評判も良く、おぐらさんも大層喜んでくれました。少しは恩返しが出来たかなと胸を撫でおろしております。
翼長 |
パーツ数 |
付属品 |
材質 |
335mm |
23点 |
なし |
ウレタン樹脂 |
原型師 |
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おぐら ゆい |
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