発売は2010年というからもう十四年も前になる。おそらくは仮組みして、その後十年は棚の中に飾って(置きっぱなし)いた。もちろんその間に何度も手には取った。少しずつパーティングラインを削ったり、洗浄したりしながら気持ちを高めもした。しかし、43というパーツ数の多さと、確実に悩まされるであろう色数の多さに毎度尻込みをしてしまった。ウルトラ六兄弟を打ちのめした最強の合体怪獣。その実力はやはり本物だ。
こんな手数の多い大怪獣を30cmサイズで造ってしまうのはもちろんこの方、ゴートの杉本浩二氏である。バラバの手、ベムスターのお腹、ハンザギランの尻尾などなど文字で書くのは容易いが、これを粘土で造型するとなると話はまったく違う。造る力とそれを纏める技量、何よりひたすら向き合う根気がなければタイラントなんて複雑な怪獣の造型は不可能だ。しかもこれが絶妙にカッコいい。左足に重心をおいた立ち姿、背中から尻尾にかけての緩やかなうねり、首からお腹、足へと至る造型の見本市のような表現、どこをとっても絵になる。タロウ怪獣の素晴らしさに初めて気づかされるような新鮮な思いがした。ただ繰り返しになるが、これこそが尻込みに繋がってしまうのである。この造型にどう色を乗せていけばいいのか、考えれば考えるほど分からなくなってしまっていた。だが、なんにでもきっかけというものはある。同じ杉本さん造型のガメロット、橋本さんのナース、イーグル南田さんのビルガモを制作したことで、金と銀の取り扱いがなんとなく分かってきたのだ。
塗装はベースにジャーマングレーを敷いた。口の中と足の爪は先に仕上げておき、胴体はまずお腹から始めた。茶色を何層も重ねて奥行きを出す。首のヒレ、背中、足などお腹と境界が重なる部分はすべて筆塗りをしている。銀に見える部分はエナメルのメタリックグレイを使用し、その上からガイアのシルバーをドライブラシした。足の金は逆にガイアのゴールドをドライブラシし、その上からエナメルのデザートイエローを墨入れして発色を抑えてある。その上から茶色や黒などを薄く乗せ、全体を一つのトーンになるように調整していく。劇中のタイラントは後半になると顔や背中に薄い青が吹きつけられているのだが、これを表現するのは止めにした。食べ物にも食い合わせというものがあるように、色にも馴染まないものがある。というか、僕がまだその方法を見つけきれていない。尻尾の左右に付いているヒダ、昔、修学旅行のお土産の定番だったペナントみたいな形をしたものだが、この色も最後まで迷った。本編の動画や資料写真をじっくり見てみると、どうやら緑色をしている(ようだ)。おそらく腕の緑と合わせた感じになっているのだろう。ただ、これもさっきの青と同じで、素直に塗ると銀とは上手く噛み合わない。そこで埃や泥で激しく汚れた風に表現してみた。二つの色が衝突することなく馴染んだ感じが出せたのではないかと思う。
じっくり検証するとバラバとは腕が逆になっていたり、ベムスターのお腹とは似ていなかったり、レッドキングの足は蛇腹であってこんなトウモロコシみたいな形状じゃなかったりするのだが、それでも当時はワクワクしたものだ。完成したタイラントを眺めているとだんだんとあの頃の気持ちが甦ってくる。
全高 |
パーツ数 |
付属品 |
原型師 |
290mm |
43点 |
なし |
杉本 浩二 |
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