負傷した加藤隊長の肩を担ぎ、追いすがるサドラーから必死に逃げようとする郷隊員。「グ―――ッ」。突如、低い唸り声が霧吹山山頂に木霊する。岩山の向こうから郷隊員の行く手を阻むように巨大な黒い塊が姿を現した。霧吹山に潜むもう一匹の怪獣デットン。デットンとサドラーが向き合うと、次の瞬間、二大怪獣の凄まじい闘いが始った――。
これまでにも何度となく改造怪獣の事は触れてきた。その多くは予算削減の為、仕方なく行われた措置である。だがウルトラのスタッフ達はマイナスを逆手に取り、知恵を結集してまったく新鮮な怪獣を生み出して来た。素晴らしいプラス思考は何倍もの効果を生む事が幾つも証明されている。まったく頭の下がる思いである。だが、このデットンは違う。プラス思考で生まれた新たな生命ではない。膨らんだ鼻面、窪んだ目元、腫れ上がった身体、小さな手、そして膨らんだ足…………。デットンは改造で生まれた怪獣ではないのだ。ウルトラマン第22話に登場した地底怪獣テレスドン、あのシャープで凛としたテレスドンがアトラクションで使い回されもはや原型を留めなくなってしまった、オリジナルのなれの果ての姿なのである…………。改造ではなく余りの変形ゆえに別名を与えられて登場した怪獣は、ウルトラ怪獣星の数と言えどデットンのみである。ボークスショウルームに出向いたその日、僕はJr.シリーズのラインナップに加わったデットンを見て少なからず驚いた。あのデットンが杉浦氏の手で完璧に再現されているという事実と、ボークスここまでやるか!?という特攻精神にである。
確かに第3話『恐怖の怪獣魔境』を現出させる為にはデットンという存在は外せない。とは言うものの、デットンを作っても買う人がいるのかと余計な心配までしてしまった。僕自身、Jr.ワールドのコンプリートを目指さなければ、デットンを買う事はおそらくなかったに違いない。そう思えるようなラインナップであった。そんなデットンだが、もちろんデットン自身に罪はない。よってキットの作成にはたっぷりと愛情を注ぎ込んだ。だが、リアルになればなるほど、デットンの痛ましさは強調されるばかりで複雑な思いは増すばかりであった…………。
全高 |
重量 |
材質 |
原型 |
130mm |
164g |
ウレタン樹脂 |
杉浦 千里 |
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