第33話 『怪獣使いと少年』より 巨大魚怪獣 ムルチ
VOLKS JUNIOR ULTRA WORLD NO:096
 

言わずと知れた「帰って来たウルトラマン」全エピソード中、もっとも尖った作品である。子供の頃、この話を見た後にはムルチの事がほとんど頭に残らなかった。代わりに刷り込まれたのは「細い目の男の子」、「ボロボロの傘」、「気持ち悪い宇宙人の顔」、その三つだ。なんとも言えない黒い感じが心の中に残った―――。





ムルチという名前はどこから取ったんだろう。どこか日本語ではない感じ、大陸の響きがする。オロチ、ムチ、まさかキムチって事はないよな。そう思いつつインターネットで検索すると、由来はカムルチーという魚から来ていると書いてあった。そこでカムルチーを検索すると、なんと雷魚の事だと言う。雷魚、子供の頃川遊びをしている時に何度も出くわした、凶暴でなんでもかんでも食べるデカイ口の黒っぽい魚………。ムルチがあの雷魚をモチーフにしてあるとは知らなかった。なるほど、メイツ星人の念動力が切れた途端、どうりで文字通りキレたように暴れまくった訳だ。
そんなムルチの造型はJr.ウルトラワールド中でも五指に入る傑作だと思う。前のめりに倒れ込むスレスレまで顔を下げたムルチ、構えた両腕といい振り上げた尻尾といい、文句のつけようがないカッコよさである。横から見ても前から見ても煽りでみてもグッとくる。本当に卓越した造形センスである。原型を起こしたのは今山氏。「どうすれば怪獣はカッコ良く見えるか」、今山氏はそのツボを存分に知っている。
塗装はベースにダークグレー、墨入れはブラック。そこからグレー系やブルー系を駆使してドライブラシを行った。ムルチは体表に斑点がある。濃いブルーや淡いブルーをエアブラシで吹き付けた。ムルチの目は真っ赤だが中央に濃い瞳があるので塗装の際にはお忘れなきよう。
残念ながら今山氏の作品はムルチ以外、シャドー星人しかない。これだけの造型力、表現力を持つ氏の作品を、願わくばもっと見てみたかった。

全高 全長 重量 原型
160mm 250mm 220g 今山 剛