栄えある80の第1号怪獣です。眺めていると、当時の事がありありと甦ってきます。ニキビ面で坊主頭の中学一年生だった僕は、新作ウルトラマンの放送を待ち望んでおりました。アニメのウルトラマンも悪くはないのですが、やはり特撮をフルに生かした実写の方がより心湧き立ちます。設定も斬新でしたね。「金八先生」華やかなりし時代を受け、ウルトラマンが先生として登場します。怪獣も人間のマイナスエネルギーを吸収して復活という、どこまでも世相を反映した作品展開でした。ただ、途中から方向がガラリと変わり、先生の設定が煙のように無かった事になりました。大人の事情もあったのでしょうが、僕の中で何かが崩れ、以後、急速に興味を失っていきました。毎回放送をカセットテープで録音し、シナリオを起こす作業をしていたのですが、それもどんどんと遅れ出し、最終回を以て一度怪獣を卒業するという区切りとなりました。そう言う意味でも「ウルトラマン80」は思い出深い作品なのです。
とまぁ自分のことはさておき、怪獣の話に主題を戻しましょう。クレッセントの特徴はその名の通り、三日月型をした首元の白い輪でしょう。しかし、目が釘付けになったのはそこではなく、口の方でした。このガバッと裂けた大きな口。思い浮かぶのは1979年頃、日本で急速に拡大した「口裂け女」の都市伝説です。通りで髪の長い女に呼び止められ、「私、綺麗?」と問われる。「綺麗」と答えると女はマスクを外し、裂けた口をガパッと開いて「これでも……?」と再び問う。そこであわあわしていたら、包丁で刺されたり頭からガブリとかじられる――なんて展開です。クレッセントにはおそらく「口裂け女」の怖ろし気な気配が投影されていたように思われます。
造型はゴートの杉本氏。昭和から平成(おそらくは今後令和にも)まで怪獣の魅力を広く掬い上げてカタチとされています。クレッセントの造型も痺れるくらい凄いですよ。素立ちの美しさ、硬軟入り混じった圧倒的なモールドはぜひとも皆さん自身で体験していただきたいです。色を塗れば塗るほど変化として返ってきますから。ちなみにコモリプロジェクトの第5弾は杉本さんに原型を担当いただいております。80より吸血怪獣ギマイラ、原型はすでに完成しております。早ければ9月のワンフェス時にお披露目したいと考えています。
彩色は全身真っ黒からスタートしました。ガイアノーツの艶消し黒は粘りがありますからね、実に使いやすいです。モールドを浮き立たせる為に、エナメルのフラットブラウンを塗り込み、余計な塗料はテッシュで拭き取ります。しっかり乾いたらアクリルのジャーマングレーやブラックグレーなどグレー系を混ぜ合わせ、サーっと筆で軽く撫でるように塗りつけていきます。近づいたり離れたりしてじっくり観察し、ブラウンを足したりキャラクターブルーでタッチをつけたりしました。月ノ輪は筆塗りです。ニュートラルグレーやホワイトFS17875などを使ってベースを作り、乾いてからエナメルのサンドイエローなどで埃を表現しました。
こうして80の怪獣に向き合っていると忘れていた記憶がポツポツと浮かんできます。突然、リビングでハンバーグを食べている光景が広がったのにはビックリしました。きっかけって面白いですね。
全高 |
重量 |
全パーツ数 |
材質 |
305mm |
1300g |
8点 |
ウレタン樹脂 |
付属品 |
原型 |
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UGM隊員 |
杉本 浩二 |
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