2012/9/11 火曜日

『重みを感じる』

小森陽一日記 12:04:19

体重の話じゃない。確かにここんとこ仕事に追われて、あまり身体を動かせてない。ちょっとヤバイ………。でも、今回は体重の話じゃない。

先日、宅急便が届いた。配達員さんが細長い箱を抱えている。この形状はポスターだ。そう思って受け取ると、ちと重い。ははぁ、映画会社が余ったポスターを送って来たな。そこで伝票を見るとバットと書いてある。
「バット……?」
差出人は宮本慎也。そう、ヤクルトスワローズの宮本さんからだった。

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宮本さんと言えばヤクルトファンのみならず、プロ野球ファンなら誰でも知っている。現在の、そして未来のNPBの為に絶対に必要な存在。まさにプロ野球界の宝のような人だ。数年前にお会いして、一緒にお酒を飲んだ日の事は今でもよく覚えている。それ以後、年賀状や手紙のやり取りをするようになった。今年は映画二作品のチケットを送ったのだが、シーズン中の忙しい最中でも必ず一筆言葉が添えられた礼状が届く。この心遣いに人間性が滲み出ていると思う。

箱の中には2000本安打達成の記念バットが入っていた。ご本人にもお伝えしたのだが、2000本安打を達成されたその日は5月4日、くしくも僕の誕生日だった。一年365日もある中、敢えてその日に達成した宮本さんに、勝手ながらいっそうの縁を感じたものだ。

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バットを構えるとズシリと重みを感じる。しかし、それとは比べ物にならないほどこのバットに刻まれた記録は重い。当時の野村監督に自衛隊(打つ方ではなく守り専門という意味)と仇名され、打順も一定せず、当然犠打も要求される。何があっても後ろ向きになる事なく、コツコツとヒットを積み重ねた。その結果がここにある。

凄いよ、宮本さん。ほんとに凄い。沢山たくさん誇っていいと思う。でも、そんな態度は絶対に取らないだろうな。
ガンバレ宮本慎也、現役でも、ユニホームも脱いでからも、ずっと応援し続けますよ!!

2012/9/4 火曜日

『帰省』

小森陽一日記 10:58:04

八月最終日に実家へ。娘は部活、嫁さんは片付け、僕は原稿。到着したのは夕方の5時を過ぎていた。それから夕食を予約していた友人の店へ出向く。「ロワール」という名の洋食屋さんだ。

この「ロワール」という店名には若かりし頃の想い出が詰まっている。高校時代、映画製作に明け暮れていた頃、店の二階にある小部屋に陣取り、打ち合わせと編集を繰り返していた。お腹が空いたら友人の父(マスター)が作るカレーを頬張り、喉が渇いたら友人の母が淹れてくれたアイスコーヒーを飲む。それが日課だった。しかもお金を支払った記憶はほとんど無い。「出世払いで貰うから」といつも言われてたっけ……。その店はもう無い。代わりに友人が別の場所に店を持った。同じ店名で――。

落ち着いた雰囲気の店内、広い厨房、そして入り口の一番目立つところに「海猿」のポスターが貼られていた。僕はフィレステーキを注文した。外はしっかりと、中は柔らかく、絶妙の火加減で焼き上げられた肉。それをピリッと山椒の効いたソースを絡めて頬張る。美味い。長年、大きなホテルで料理長まで勤め上げていた友人の腕だ。当たり前だが本当に美味かった。たっぷりのサラダとこのステーキだけでお腹が満たされる。だが、僕にはもう一品、どうしても食べなければならない品があった。カレーだ。「ロワール」に行ったらカレーを食べる。例えどんなにお腹がいっぱいになろうとこれだは外せない。義務や義理じゃない。絆だ。

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マスターではなく友人の作ったカレー。昔の味に想いを馳せながら、今のカレーを食べた。味は違う。だが、どちらも「ロワール」のカレー、僕を育んでくれたまたとない逸品だ。僕にとっては大事なルーツであり、これからも大切にしていきたい宝物のようなカレーである。

その後、実家に戻って花火をした。八月最後の日を飾る満月の下で、煙と色取り取りの火花が舞った―――。

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2012/8/28 火曜日

『ほんの僅かに秋の気配』

小森陽一日記 14:27:17

八月もいよいよラストの週、良い子達は宿題終ったかな? それとも大慌てでラストスパートかな? 一方、酔い子達は相も変わらずネオン街を彷徨い歩いている。飛んで火に入る夏の虫。……でも、秋は確実に来ている。夜、庭に出てみると、ひっそりと虫の声がする。どんな時でも季節は巡る。

そんな虫の声に誘われたせいでもないが、娘のクラリネットを吹いてみた。もちろん音は出せる。その昔、サックスなんぞをやった時期もあったから。でも、低音は出せるけど高音は難しい。唇の端から空気が漏れる。力入れ過ぎてちょっと酸欠気味になり、頭がクラクラした……。そんな僕を尻目に流暢に曲を弾き出す娘が恨めしい。負けず嫌いなので……。

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話は変わって――宮城県から彼の人がやって来た。Aさん。「我が名は海師」執筆時、僕や武村勇治が散々お世話になり、「トッキュー!!」でも久保ミツロウに様々な事をレクチャーしてくれた。3.11の大震災で仕事場と家を流され、奥さんと一緒に自宅の屋根に乗って漂流し、奇跡としかいいようがない生還をした人……。詳しくは僕の昨年のブログ、3月の欄をご覧いただきたい。
Aさんは今、本業であるサルヴェージの仕事の傍ら、津波で被災した経験を語り伝える活動をされている。今回もその一環での来福だった。話はもっぱらこれからの事。こんな事がしたい、あんな事がやってみたい、前のめりになって話をした。丁度待ち合わせ場所が博多駅だったので、二人でT-JOYを覗いて見た。封切直後の「放課後ミッドナイターズ」、大看板に二人で大笑いした。そう言えばキュンストレーキ、ギョロリと大きな目がちょっとAさんに似てるかも……。「また来年の一月に来ます」という言葉と共に握手をして別れる。楽しみに待ってますよ!

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最後に……皆さんこのオレンジ、知ってます? とってもウザいんです。何かの番組で見て以来、忘れられなくなりました。おちょくり方が低レべルで、しつこさが半端じゃない。う~ん、まるで自分を見ているような……。気になる方は「ウザいオレンジ」で検索してみてください。あたなのハートをイラッとさせつつ虜にするかもしれません。

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2012/8/21 火曜日

『ワイセツブツチンレツザイ』

小森陽一日記 13:10:15

逮捕だ逮捕! 街の目抜き通りを大挙してズル剥け軍団が練り歩く。内臓までおっぴろげだもんね。ゾンビも真っ青、いやはや、物凄い時代になったもんだ。

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いよいよ今週末公開です。「放課後ミッドナイターズ」。上映館の関係で皆さんのところまで津々浦々……という訳にはいかないのが残念ですが、何卒よろしくお願いします。

これ、書いたのは4年近く前になるのかな。竹清くんが脚本を書いて欲しいって依頼してきて、それから色んな打ち合わせをしてね。最初書いたのはもっと泣けるテイストだった。人体模型が転校生の女の子に足長おじさんをするっていう感じの。でも、初監督作品で人を泣かせる話はハードルが高いかな……って事になって、それから今の感じに軌道修正していって。悪乗りして色んなアイディア机の上に広げて、それをパズルみたいに組み立てて。そして一枚のイメージイラストを見た時、「これ、いいな」って感じたのをよく覚えてる。
それから紆余曲折あってついに公開に漕ぎ着けた。プロデューサーを始め、監督、CGチーム、宣伝の皆さん、沢山の人の執念です。本当に。後は結果だけ。どうか皆さんの力でこの作品を更に大きく育ててやって下さい!

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最後に主題歌を唄ってくれているねごとの皆さんと監督、そしてズル剥け軍団のスナップを一つ。気持ちいいくらいの盛り上がりでした。落ち着いたらまたみんなで乾杯しよう。

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やつれ果てていた竹清くんにユンケルを差し入れしたのが、一本では到底効くまい。残りもガンガン飲んで――ラストまで突っ走れ、監督!!

2012/8/16 木曜日

『残暑お見舞い申し上げます』

小森陽一日記 13:25:27

……ロンドンの焼けるような熱戦も終った。暦ではもう秋。しかし、全然暑さが収まらない。ジリッジリ。クマゼミもいつもの夏より日焼けしてるように見える。ほんとに暑い。日中のみならず夜も。消耗してます、はい……。

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立て続けの四連発だった打ち合わせも無事終了した。何の打ち合わせをしてるのか、今の時点ではお伝え出来ない事ばかりだが、半年後、一年後、数年後には皆さんの前にお披露目されているものばかり。時々言うが、僕の仕事は誰よりも早く始めて、誰よりも早く終る。ワーッとお祭騒ぎになっている時は全く違う事をやっている。乗り切れないもどかしさ。これって時々モーレツに寂しい時がある……。でもね、皆さんが観てくれたり、読んでくれたり、泣いたり笑ったりしているのを見ると、それが力になる。栄養になる。踏ん張りになる。だから、次に進めてる。感謝してます。小森作品、これからもどうか楽しみに待っていてください。

15日、義母の初盆もつつがなく行なわれた。義父宅でお坊さんにお経をあげてもらった後、馴染みのお寿司屋さんで会食。身近な親戚が集って義母を偲んだ。このお店のお座敷で、活きのいいお刺身を食べながらお酒をたしなんでいた義母の姿ははっきりと目に焼き付いている。きっと笑ってこの光景を見ていた事だろう。

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さて、八月も後半だ。今年もあと四ヶ月ちょっと。もういっぺんギア入れ直して走りますか!

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