2012/10/16 火曜日

『行動範囲1km圏内』

小森陽一日記 11:38:47

今、小説が佳境を迎えている。「今月末までに脱稿してください!」。担当さんから厳命が下っている。分かっとります。頑張らせていただきます。踏ん張らせていただきます。―――という事で表題に繋がる。

家を出るのは朝、夕のマイの散歩くらいなもの。近所をぶらぶらと歩いている。でも、これも結構楽しい。落ち葉を踏んだり、紅葉を眺めたり、バッタを追いかけたり、知り合いのワンコに挨拶したり。新築の家が今日はどこまで出来ているとか、コンビニにコーヒー牛乳の美味しい新製品が入ったとか、いわし雲に夕陽が当たって綺麗だとか。たった1kmの中にも世界はある。おー、なんか正岡子規みたい。

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先日、こんなCDを買った。山下達郎さんのベストアルバムだ。仕事の合間、BGMとして流していたら、仕事どころじゃなくなった。高校、大学、就職、色んな場面が甦る甦る! ほとんどの曲が耳に残っているし、歌詞が口をついて出てくる。
あらためて思った。僕の人生、こんなにも達郎さんの音楽と共にあったんだなぁと。心残りはコンサートに一度も行けていない事。次にそんな機会があったら必ず、なんとしても、絶対、何があっても、どんな事をしても(これ、いろんな担当さんに向けて言ってます)行く。うし!

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キットの方は全然作れてないなぁ。「放課後~」で大活躍(大騒動?)したマ・ミ・ムことマコ、ミーコ、ムツコの粘土原型から起こしたレジンキットも、ずっと棚に飾りっ放しのままだ。
「早く塗って塗って!」
「さっさとしなさいよ、グズ」
「……フッ」
眺めているとそんな声が聞こえて来る。はいはい、もうちょっと待っててね。

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追記
 「STORY BOX」についてお知らせがあります。本屋に行っても見つけられなかったという声を頂いております。この本、雑誌サイズではなく文庫サイズです。文庫、です。まだ見つけられていないという方、何卒文庫のコーナーにお立ち寄り下さい。

2012/10/9 火曜日

『仕事・散歩・宣伝 秋×3』

小森陽一日記 13:23:11

秋だ。ようやく秋。昼間は暑いが日陰に入るとひんやりする。夜はさらにいい。寝苦しくない。季節は巡るのを忘れてはいなかった。

仕事はたんまりだ。特に先月後半から今月頭までは追い捲られた。やってもやっても終らない。嬉しい悲鳴なのだろうが、渦中にいるとそんな事を思う余裕すらない。う~ん、やるしかないのダ。仕事の秋。

涼しくなったらいきなり活動的になった。マイの動きがキレている。エサを見るとさっと立ってハウスへ、リードを見ると喜び勇んで駆け付ける。散歩の時はもう嬉しくて仕方がない。運動不足の身体にはちょうどいい。散歩の秋。

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先月末、「S」の8巻が出た。縁上編。これ書いたのって随分と昔のような気がする。縁上の狂気、大好きだった人に認められたいという気持ち。純粋であるがゆえに、歪む。こんな話は巷にもよくある。
今週売りのビッグコミック20号は「S」が巻頭だ。こちらはプルトニウム編。テロリスト正木圭吾、彼もまた哀しいくらい実直で純粋。ゆえに信じるものの為に驀進する。今後、どんな結末が待っているのか? 
そして、今月8日発売された「STORY BOX」38号。「銀色の巨人」の第一章が掲載されている。地方の消防士とウナギの研究員、幼馴染の二人が今後、驚愕の事件に巻き込まれていく。まさかの「ウルトラマン」だ。楽しみにしていて欲しい。という事で宣伝の秋。

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皆さん、いろんな秋を満喫しましょう!

2012/10/2 火曜日

『ドームが揺れた夜』

小森陽一日記 11:13:18

何年振りだ、ドームに行ったの? 三年振りくらいかもしれない。随分と足を運んでなかったなぁ。明るい廊下や天井からぶら下がったモニターや繁盛する売店が、なんだかとても懐かしく感じた。

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とある御仁に「ドームに行こう」と誘われた。この十年来、お付き合いしていただいているFマス。「トッキュー!!」のダムの所長や「DOG×POLICE」小説版の警備部長で僕の作品に登場いただいているお方だ。それに留まらず、マンガや小説や映画の打ち合わせでいく度もお店にお邪魔し、ひたすらお世話になっている。

練習から見ようという事だったので、グラウンドに出るのは分かっていた。だが、まさかベンチにまで入れるとは……。ここ、野球人からすれば聖域だから。そんな場所にほいほい部外者が入っていい訳ない。でも、招かれた。Fマスの幅広い人脈とホークス関係者の温かい心遣いだった。ベンチからグラウンドを見るとこんな風に見えるのか……。監督やコーチや選手に思いを馳せながら、しばしこの絶景を眺めた。

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試合が始まる。そこにはグリーンのユニフォームに身を包んだ背番号9の姿があった。小久保選手。もちろん会った事も話した事も一緒に飲んだ事もある。でも、グラウンドで見る姿はまったく違う。どうしようもなく風格がある。

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小久保選手は今シーズンで現役に別れを告げる。寂しい。しかし、選手には必ず始まりと終りがある。ファンは黙ってそれを見届けるしかない。でも、あの綺麗な放物線を描くホームランをもう一度この目で見たい。正直な願いだ。果たしてそれは適った。なんと二打席連続ホームラン。鳥肌の上に鳥肌が立った。ドームが凄まじい歓声に包まれる。そんな中、背番号9は笑みを浮かべながらゆっくりとダイヤモンドを回った。実に美しい光景だった。

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小久保さん、ありがとう。最高の瞬間を目の当たりに出来たよ。そして、沢山のホークス関係者の皆さん、何よりこの場に誘ってくれたFマス、本当に感謝します。根が単純だから、なんか力が漲ってきた。俺も仕事、ガンバロウ!

2012/9/25 火曜日

『趣味と仕事とBBQ……そしてお知らせ』

小森陽一日記 11:38:56

行って来ました。特撮博物館。周りからやいのやいのと評判ばかりを聞き、歯噛みする思いでしたが、ようやく顔を出す事が出来ました。円谷プロのKさんのアテンドで、大学の先輩である庵野館長の趣味が爆裂した空間をお腹いっぱい堪能いたしました。

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驚いたのは若い女の子が沢山見に来ていた事。特撮と女の子、昔じゃまったく繋がらなかった組み合わせです。それどころか相反するものだった筈。埃っぽいステージにミニチュア、戦車やらロケットやら怪獣の爪やら牙やら……。特撮が好きなんて中々言えなかったものでした。いやはや、時代は変わりました。

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会場を一通り見て廻ってあらためて思い知った事が一つ。それは僕の嗜好です。超兵器らなんたらガンやら高圧鉄塔やらヒーローのマスクやらを見ても、心が沸き立たないんだなと。要するに「怪獣」にしか興味がないという事がはっきりしました。会場で一番食いついたのはメカゴジラの着ぐ2るみ。一言で特撮好きといっても、中身は色々あるものなのです。

今回は約二ヵ月振りの上京、その間、東京組みは沢山福岡に来ていたので、久し振りという感じは全くないのですが、藤堂大先生の仕事場に赴き、藤堂大先生が仕事に励む姿を目の当たりにしたのは久々でした。描いてましたよ、カリカリと。でもこの仕事部屋、畳がささくれていて靴下にいっぱいイグサが付くんだよねぇ。大先生、そろそろ畳、入れ替えませんか?

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翌日はある方の自宅にてBBQでした。メンバーは言えません。なんの為に集ったのかも顕かに出来ません。秘密結社の秘密会議とでもしておきましょう。それにしても空の下で飲んだり食べたりするのはどうしてこう美味しいんでしょうか。ゆるゆるとした時間はあっと言う間に過ぎ、気がつけば辺りはすっかり暗くなっていました。Yさん、本当にありがとうございました。お世話になりました。

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最後にお知らせを一つ。小学館から10月5日に発売される「STORY BOX」、この38号から僕のある新作が連載されます。タイトルは「銀色の巨人」。このタイトルだけで分かる人にはピンとくると思います。ご興味のある方はどうかご一読願いします! 

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2012/9/18 火曜日

『Sanba(サンバ)』

小森陽一日記 11:30:04

台風16号の名前だ。随分と楽しげでリズミカルな名前だが、今年、日本にやって来た台風の中では最強クラスの恐ろしい奴だった……。

福岡でも長時間、結構な強風が吹き荒れたから、発達したまま直撃した沖縄では相当な恐怖だったと思う。いくら台風銀座と言われ、沖縄の人が慣れているとはいえ、最近の台風はこと大型化している。よく「252を思い出しますよ」なんて苦笑いしつつ言われる事がある。

夜半には風が唸りを上げていた。朝起きて、風の吹き荒れる中、状況を確認する為にグルリと家の周りを歩いてみた。空は一面鉛色、東から西へ勢いよく雲が流れていく。時折横っ面をぶったたかれるような横殴りの雨が降りつける。

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裏庭にある扇風機がグルグルと回っている。まるで「強」にしたみたいに勢いよく。毎日こんな風だったら風力発電を考えてもいいが……。やっぱり毎日はイヤだな。

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あっちゃー。庭の木が折れている……。強い子なんだけどな、ドカンと風の塊が当たって耐えられなかったんだろう……。これも自然の淘汰というのかな。

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仕事場から庭に出る時に履くスリッパが無いと思ったらこんなところに。
「あーした 天気に なーれ」
さて、どっちの向きを信じるか。

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二階のベランダの光景。上がってみると既に物干し台と棹が倒してあった。こうしておかないとガラスが割れる危険がある。さすが嫁さん、察するねぇ。間違っても娘ではない。

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そして今――、これを書いているのは午後5時44分。空には青色が戻って来た。あれほど激しかった風も雨も随分と収まり、遠くでツクツクボウシが鳴き出した。風も生暖かい風からひんやりと秋らしい風に変わった。

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一雨ごとに秋が深まる。その言われ通り、騒然としたサンバが通り抜けた事で夏は終り、やっと涼しくなるのかもしれない

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