2008/7/22 火曜日

『ありがとう!!』

小森陽一日記 16:53:23

5年―――。
短く感じる人も長く感じる人もいるだろう。僕は………どうかな、まだよく分からない感じだ。準備期間まで含めて5年という歳月を共にした「トッキュー!!」が、ついに連載終了を迎えた。

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(広報室の風景)

色んな場所に行った。色んな人に会った。いろんな事があった。その想い出のほとんどに久保ミツロウがいる。いや、それどころか僕や編集者が知らないところまで取材に出向いていた。
「この前突然久保さんが来て――――」
「久保さんに先日のお礼を伝えて下さい」
週刊連載を抱えながら、これだけ外に出たマンガ家を僕は他に知らない。本当に久保さんには驚かされっ放しだった。だから、最後は僕が驚かせてやろうと心に決めていた――――。

「久保ミツロウに長官表彰を与えては頂けませんか?」
実に僭越なお願いだが、僕はある日、広報室の皆さんに相談を持ち掛けた。「トッキュー!!」を必死になって描いてきた彼女を、どうしても形にして労ってあげたかった。広報室の皆さんは早速検討を進めてくれ、やがてO.K.の返事を頂いた。だがそれだけではなかった。なんとトッキュー基地にて久保さんのお疲れセレモニーをしようという話を逆提案された。これには僕も正直驚いた。

連載終了までのカウントダウン、久保さんの懸命なスパートの裏側で、セレモニーの準備は着々と進んでいく。そして運命の7月18日がやって来た。

岩崎長官から賞状と盾を受け取り、一緒に写真を撮られ、長官室で食事を共にした久保さんはやがてトッキュー基地へ。一人、また一人と隊員達が基地から外へ出て行き、気が付いたら自分一人………。何事かと思ってエプロンに出てみると、ズラリと整列したオレンジ服のリアルトッキュー達が一斉に出迎え、特製メダルと賞状の授与式が行われた。鬼の目にも涙、さすがの彼女も思わず涙を流したのだった………。
(残念ながら僕はこの時別の場所にいて、現場を押さえられなかった。悔しい……)

トッキュー主催のお疲れ会。リアルさん達はもちろん、基地長や専門官、そして広報室の皆さん、お世話になった方々、遠くは新潟から僕等を支えてくれたUさんが駆けつけてくれた。それぞれが僕や久保さん、「トッキュー!!」の想い出を語り、それはもう涙が出るほど面白かった。

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最後に僕と久保さんはトッキュー式の滅茶苦茶高い胴上げ(まさに放り投げられる感じ)を受けた。連載終了を胴上げで祝ってもらえるなんて、「トッキュー!!」という作品はほんとに幸せものである。
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海上保安庁の皆さん、トッキューの皆さん、本当にありがとう。
マガジン編集部のM編集長、Mさん、Mくん、Tくん、お疲れ様でした。
クボケンのアシスタントの皆さん、最後までご苦労様でした。
そして久保さん、生涯忘れられない5年間をありがとう。一緒に仕事が出来てよかった。ほんとにありがとう!!

私事で恐縮ですが――――、去る7月18日に賞を頂きました。
「海洋立国推進功労賞」なるものです………。
「海猿」、「トッキュー!!」、「我が名は海師」において、広く海の仕事を知らしめた功績………という事だそうです。
内閣総理大臣表彰なんて一生縁などないものと思っていましたが、生きているとこんな不思議な事もあるんですね。

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ただ、この賞は僕だけの力で頂いたものではないと思っています。
取材に協力して下さった多くの皆さん、支えてくれた編集者の皆さん、そして佐藤くん、久保さん、武村くんという素晴らしいマンガ家と出会ったからこそ、こんな表彰に繋がりました。
本当にありがとうございます。この場を借りてお礼申し上げます。

海の作品を書き始めて約10年の歳月が経ちました。この賞を一つの区切りとし、新たな10年へと進んで行くつもりです。
皆さん、どうかこれからも応援宜しくお願いします!!

      7月21日 仕事場にて 

                          小森 陽一

2008/7/15 火曜日

『夏、来る』

小森陽一日記 17:27:57

日曜日、街に出掛けた。目的は「オイッサ!」、そう、博多祇園山笠である。飾り山があちこちに出て、水法被姿の男衆を街中で見かけ、「オイッサ!」の掛け声と共に山が疾走を始めるこの時期の雰囲気は大好きだ。

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我等が男打ちのメンバーであるF岡県警のT氏は山のぼせ、七つある流れの一つ、土居流れの男衆だ。法被姿で会うと、怪獣好きでいつもにこやかなT氏が逞しく、同一人物とは思えないほど締まって見える。やはり山と法被は男を上げる、女の子が惚れる訳である。
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この日、13日は「集団山見せ」。博多の祭である山笠を広く知らしめる為、那珂川を越えて福岡の街へ出張る。オフィス街を山と人が津波のように駆け抜けて行く様は、何度見ても鳥肌が立つ。沿道からは勢い水が撒かれ、さながら水のアーチを潜り抜ける感じがして、神々しさすら感じてしまう。
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連日、気温は30度を越え、空には入道雲が浮かび、けたたましく鳴くセミの声が日毎に大きくなっている。山が終われば、いよいよ夏本番である――――。

2008/7/8 火曜日

『雑草天国』 

小森陽一日記 17:37:46

梅雨………。不快指数80越え、カビ、食中毒、そして、天然パーマにとってもっともうっとうしい季節………、そんな梅雨がようやく終わろうとしている。

今年の梅雨は本当によく雨が降った。その為、毎日の日課としていた庭の水撒きからすっかり遠ざかっている。昨日東京から戻った。蒸し暑かったけれど分厚い雲間から陽が射していた。仕事が一段落した事もあり、ラフな服装に着替えて飲み物片手にデッキに出た。すると、茶色いデッキの合間から眩いばかりの緑色がピョーン………。なんと雑草が伸びに伸びて風に揺れている。驚いて庭に降り立つと、あるわあるわそこら中から雑草がわんさか生えている。いや、雑草だけではない。木立もめったやたらに伸びまくり、芝生もぼうぼうで踏み降ろした靴が見えないほどになっている。
「ジャングルになっとぉ………」
自宅の庭が、知らないうちに見違えるようなジャングルになっていた………。
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やりましたよ草むしり………。朝早くから手足を蚊に食われつつ………。それでもまだ取り終え切れない。全然なくならない。小さい雑草があちこちから沢山芽を出している。ふと、ギリシャに行った時にアラブの人に言われた言葉を思い出した。
「自然と共生?日本人は悠長だな、自然は共生じゃなく闘う相手だよ」
自然は戦う相手―――。確かにそうかもしれない。雑草との戦いは果てしなく続きそうだ………。

2008/7/1 火曜日

『お帰りなさい、ジョーンズ博士』

小森陽一日記 17:07:47

先日、19年振りにお姿をお見かけしました。インディアナ・ジョーンズ(本名ヘンリー・ウォルトン・ジョーンズ・Jr)博士。それなりにお歳を召されてはいるものの、相変わらず世界中を飛び回っていらっしゃるご様子。フェドーラ帽、皮ジャン、鞭の3点セットを引っさげ、汗と土埃と蜘蛛の巣にまみれていらっしゃる。何かと言うと拳を振るう悪いクセもそのままだ………。博士のエネルギッシュさには本当に脱帽です。そして―――実に懐かしく、かつ、嬉しゅうございました。これからもどうかお元気で。また変らぬお姿を拝見したく思います。

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「レイダース/失われたアーク(聖櫃)」の公開が1981年、中学2年の僕はまるで憑かれたように映画館に足を運んだ。朝から晩まで映画館に居座り続けた日が何度あっただろう。台詞が空で言えるくらい、ほんとうにのめり込んだ。理由は一つ、掛け値なしに面白かったからだ。
目的を達成するまでは何があっても諦めない。例え相手が大人数でも、彼女が悪人に囚われていようとも、撃たれようと殴られようと車から落とされようと絶対に諦めない。考古学者であり冒険家、インディアナ・ジョーンズ。ただただこの男に魅せられた。そしてこのインディ像は後々の僕が生み出すキャラクターに多大な影響を与える事となった―――。

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新作、「クリスタル・スカルの王国」はまだ一度しか観ていない。公開終了までに少なくとも5度は映画館に足を運ぶだろう。そんなに面白いのかって?いやいや、僕にとってストーリーの出来なんて関係ない。ただ博士に会いに行きたい、それだけなのだ。

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