2009/6/2 火曜日

『サーガは永久に………』

小森陽一日記 17:38:53

栗本薫先生が亡くなられた。すい臓癌だった。まだ56歳………、逝くにはあまりにも早過ぎる………。

僕にとって栗本先生と言えばやはり「グイン・サーガ」である。大学生の頃にグインを知り、そこから延々と読み続けた。ハンドブックやイメージアルバム、画集と揃え、いつも本棚の一番目立つ所にグインは並んでいた。自由に闊達に、己の想像力を広げて創作するという事、誰にも遠慮はいらないんだという事、それを教えてくれたのがグインであり栗本先生だった。

残念ながら小説は100巻を読み終えたところで止まってしまっている。理由は色々だ。自分自身の環境が忙しくなったというのもあるが、展開がスローダウンしてしまった事が一番大きい。物語はやはり旬というものがあるようにも思う。永遠にその世界の住人と付き合っていきたいが、やはり何事にも区切りはある。とは言えこんな事は釈迦に説法、栗本先生は非凡な人だから、そんな事は当然分かっていらっしゃった筈だ。ご自身の区切りも当然見えていらしたと思う。だが、今となってはそれも永遠の謎となってしまった。グイン世界の数々の謎と共に………。

多大な感謝とご冥福を祈りつつ、101巻からの物語を読んでいくつもりである。

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2009/5/26 火曜日

『流れには逆らえない』

小森陽一日記 17:16:55

娘の家庭訪問で担任の先生が我が家に訪ねて来られた時の事だ。一通りの話しを終えてさあ帰ろうかとされている時、
「先生はプラモがお好きなんですか?」
と切り出してみた。子供の頃、ラジコン屋になるのが夢だったと、授業参観後の懇親会で語っておられたと妻から聞かされていたからだ。
「えぇ………まぁ………」
50代半ば、白髪でベテランの風貌を醸し出している先生が、一瞬照れたように笑われた。その笑顔を見て、
「実は僕もキット作りが趣味で………、宜しければ見ていかれますか?」
と声を掛けた。我が家は自宅と仕事場が廊下で一続きになっている。
「それじゃちょっとだけ………」
先生は申し訳なさそうに、仕事場へと続く廊下を歩き出した。そして一歩足を踏み入れた瞬間、
「――――わ!?」
ズラリと並んだ怪獣キットを夢中で眺める先生、その口からはプラモへの熱い思いが次から次に溢れ出た。その顔は本当に少年のようだった………。

義理母が時々人を連れて来る。
「友達の息子さんがね、あんたのコレクションがどうしても見たいって」
時にはこんな事も言われる。
「あんた一人で楽しむなんて贅沢!他の人も自由に見れるように開放しなさい!」
娘の友達も見にやって来る。
「ねぇ、これどこで買ったと?」
「違う違う、おじさんが組み立てて色ば塗ったと」
「えー!!」
元円谷プロのM社長や桜井浩子さん、円谷プロのKさんからは、
「東京で展覧会やらない?」
そんな事を言われたったけ。

趣味が嵩じて怪獣の原型師さんやそのファンの方とも親しく付き合わせて頂いている。
多くの方が僕の書いたキット本を購入し、好意的に受け止めてくれている。先日もある原型師さんからこんなメールを頂いた。
『小森さんのあのような活躍が、衰退しそうな怪獣ガレージの世界を救っているのは間違いないです!』

福岡で開いた個展から今年で5年、そろそろ次のタイミングが来ているのかもしれない。もちろん忙しい。夏には新作がスタートするし、小説や映画もやらなければいけない。でもね、流れには逆らえないから………。もちろん僕が勝手にそう思っているだけで、具体的な事は何一つ決まってはいない。でも、やってみようかな、そう思う事から全てはスタートする。そして今、やってみようかな、そんな風に思っている。

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2009/5/19 火曜日

『252 ピリオドなし』

小森陽一日記 10:22:01

いよいよ今週、『252生存者あり』のDVD&BDが発売される。なんだかあっという間の出来事だったような気がする。映画とドラマはこれで一応のピリオドなのだが、どっこい作品の方はピリオドなし。年末の発売に向けて、目下小説の準備中である。映画版のノベライズではなく、まったくの書き下ろし新作となる。

なぜ篠原祐司は消防を辞めたのか?

念願のハイパー入りを果たした早川勇作が、部隊長となった篠原静馬に尋ねる。そして少しずつ語られ始める兄弟の過去、想い、風野が殉職したあの火災現場の事………。
映画やドラマ、マンガの中で伝え切れなかった部分をすべて小説に注ぎ込みたいと思っている。
どうか楽しみに待っていて下さい!!

下記の写真はロケセットのスナップです。発売記念の蔵出しという事で。

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2009/5/12 火曜日

『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』

小森陽一日記 13:01:46

先日NHKオンデマンドを初めて活用した。オンデマンド、即ち要求の事。番組をお金を出して購入するシステムだ。理由は見逃した番組を是が非でも見たかったら、それは「スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ」である。毎週火曜日夜7時よりBSハイビジョンで放送中のこの作品、実にオモシロイ!
  
「小森さん、クローン・ウォーズもう観ました?」
ある時、ワーナーの待合室で英明くんにそう言われた。もちろん存在は知ってはいたが観てはいなかった。いや、観る気にならなかったというのが正直なところだ。アニメに抵抗はないのだが、目付きの悪いアナキンやプラスチックのような髪と髭のオビワンのデザインを見て、「なんじゃこりゃ………」と感じていた。古代エジプト人を思い起こさせる新キャラ、アソーカのスタイルもどうにも馴染めずにいた。
「でもいっぺん観て下さいよ。結構面白かったですよ!」
「そりゃ、自分が筋金入りのスター・ウォーズファンだからだろう」
一度自宅に置いてあるコレクションを見せて貰った事がある。もう呆れるほど凄かった……。
結果、僕の足はとうとう映画館に向かなかった。
  
それからしばらくして街を散歩している時、店頭で「クローン・ウォーズ」のDVDを見つけた。家に帰って机の上に放り出していたら、娘が勝手に観ていた。普段なら怒るところだが、その時は画面に目が入った。丁度アナキン達が敵の要塞を攻撃する為に垂直の崖を登っているシーンだった。
「………」
仕事をほったらかして最後まで見入ってしまった。結構じゃなく、すんげぇ面白かった!!

ようやく日本でも始まったテレビシリーズ、ずっと心待ちにしていた。見逃した回をオンデマンドしてまで観ているのだからハマリ度は相当なものだ。でも英明くんにはこの事は言ってない。なんとなく照れ臭いしね………。

NHKアニメワールド スターウォーズ/クローンウォーズはこちら
http://www3.nhk.or.jp/anime/cw/

2009/5/7 木曜日

『希望がある事を信じたい』

小森陽一日記 13:57:31

お陰様でこのブログも3年目を迎える事になった。という事で私めも42歳と相成った。42歳………別段自分自身がどう変った訳でもないが、しかし世界は色々と変化している。

昨年に始まった世界経済の綻び、そして未知のウイルスによる感染の拡大、歴史を顧みるとその先にあるのはいつも戦争だ………。常に付き纏う閉塞感、先行きの見えない不安、腹の底にある例えようのない恐れ、きな臭い感じがしてならない。
  
だが、そんな中だからこそ一層ものを作っていきたい。衣食住、本来人間が生きていく為に必要じゃない「楽」を、一生懸命作っていきたい。笑ったり泣いたり怒ったり考えたりする作品をどんどん作っていきたい。

楽しみを見出し、それを大切と思える人達が多ければ多いほど、戦争という愚かしい極点には向わないと思う。使い古された言葉かもしれないが、やはり希望がある事を信じたい。

遠い未来、歴史家が振り返った時、
「あの時代の人達はなんと素敵に次のステージへ移って行ったんだろう」
そうしたためられるように――――。

バカボンのパパの歳を一つ追い越した男の決意表明でした。

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