2010/4/13 火曜日

『ザ・ラストメッセージ』

小森陽一日記 16:26:06

オレンジ色の炎の中で一人の男が写真を見つめている。その写真には愛する妻と赤ちゃんの姿が………。男は何を思うのか?必ず帰るという決意、それとも永遠の決別なのか――――。

臼井Pよりどーんと荷物が届きました。もちろんコレ、「海猿3」のポスターとチラシです。それにしてもこのポスター、一見したただけで色んな想いが喚起される………。まったく素晴らしいものに仕上がってます。現在は7月中の完成に向けて最終調整の真っ只中だそう、仕上がりがとても楽しみです。

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昨年行なわれたロケには英明くんとのタイミングが合わず、結局顔を出さず仕舞いになってしまった………。名残り惜しかったけど、その分写メは沢山送って貰いました。現場での楽しそうなスナップもあれば、激しいメークをしたものもあって実にバラエティに富んでました。いつもありがとう。

皆さんに愛されたからこそここまでやって来た「海猿」、その3作目がいよいよ9.18に公開です。何卒変わらぬお引き立てのほどを。

フジテレビつながりでもう一つ、先日触れた三谷幸喜さんの『台詞の神様』、あの元ネタがオンエアされました。タイトルは『我が家の歴史』、歴史というフレーズに相応しくまさに超大作ドラマとなっておりました。市井に生きる家族の歴史と昭和激動の日本の歴史を、まるで毛糸のセーターでも織るように完璧に編み上げた手腕、いや豪腕!ほんとに素晴らしい………。痺れたのはやっぱり台詞、全然難しい言葉を使わずに伝えたい事が伝えられるなんて………、やっぱり三谷さんは頭ではなく気持ちでモノを書いてる人なんだなぁ。このドラマ、観れて良かったと心から思いました。運悪く見逃してしまった皆さん、その内DVDも出る事でしょうから機会を作って是非ご覧あれ。幸せな気持ちになる事請け合いです。

2010/4/6 火曜日

『神様は何処………』

小森陽一日記 15:16:48

4日日曜日夜22時半過ぎ、僕はほんとにいっぱいいっぱいだった―――。

新作の提出期限は明日月曜日お昼、なのにまだ「ヨシ!」という手応えが掴めない。
台詞が見えない、決まらない………。この1週間、ご飯を食べても風呂に入っても布団に潜っても、頭を過ぎるのはその事ばかり。お腹を空かしたクマのように、あっちをウロウロ、こっちをウロウロ………、そんな時、ふと付けっ放しのテレビに目が入った。画面には僕と同じくクマのようにウロウロしている三谷幸喜さんの姿があった………。

『世にも奇妙な物語 20周年スペシャル・春 「台詞の神様」』、三谷さん自身が本人役で、ホテルで缶詰して脚本を書いている自分を演じている。ウロウロうんうんしているのは肝の台詞が思い浮かばないから。そんな時、ルームサービスの女性がやって来る。その女性はなんと柴咲コウそっくり。今、まさに必死で書いているドラマの主人公は柴咲コウ、そして目の前にいる女性は柴咲コウに瓜二つ。三谷さんは彼女に台詞の掛け合いをさせて、閃きという名の「台詞の神様」を降りて来させようとするのだが………。

いやぁメチャクチャ笑った。その時の自分の心情と相まって、お腹を抱えて笑わせてもらいました。確かに「台詞の神様」は来て欲しい時には中々来てくれないものだ。なのにどうでもいい時にやって来たりする。この時の僕にとって三谷さんは、「台詞の神様」ではなくど真ん中の「笑いの神様」、天井人のように光輝いていた。三谷さん、ありがとうございます。あなたのおかけで何かが吹っ切れ、新作に無事最後の「。」を打てました。

2010/3/30 火曜日

『艶な世界』

小森陽一日記 10:41:42

日頃よりお世話になっているマスターに声を掛けて頂き、大衆演劇を観に行った。もちろん初体験である。大衆演劇というものに僕の持ち合わせている知識はほとんどない。なんとか絞り出して出て来るものと言えば、たけしさんの「座頭市」でおきぬの弟清太郎を演じた橘大五郎、それから女形で有名な劇団朱雀の早乙女太一、時々テレビのドキュメントなどで見掛ける旅から旅の公演旅行の様子くらいだろうか。兎に角何の前知識もない状態で芝居小屋に向かった。

場所は博多駅にほど近い博多新劇座、公演は藤実一馬座長率いる「劇団KAZUMA」。僕は仕事を終えて第二部より観劇したのだが、歌に踊りにお芝居に、それでも2時間を有に越す中身の濃い時間を体験させて頂いた(一部から観ると3時間15分だそうである)。

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いやぁ、なんとも不思議な時間だった。髷に刀に着物はもちろん、白粉の香りが小屋の中に満ち溢れる。ここは一体何時代なんだ?と思い巡らす暇もなく、団員達が流し目キリリと凛々しい若侍で登場したかと思いきや、次は艶姿に濡れた唇の美人へと早替わり………。舞台で舞い踊る男とも女ともつかない存在にオバサン達が群がり、着物に万札で出来たお花をピンで留めていく。間近で見ると呆気にとられた………。それは、蛍光灯に引き寄せられる羽虫の姿にも似た光景だった………。

その後、座長の藤実さんと一緒に飲みながらお話をさせて頂いた。話をしながら僕は不思議な感覚を味わっていた。目の前の人は、ついさっきまで口が達者で悪知恵の働く悪党の親分を、惚れ惚れするような涼しい立ち役(男役)を、そしてピンクに輝く濡れた唇で観客を惑わせていた女形をやっていた人………、分かる気もするし全然違う感じもする。ただ、耳にすっと入って来る太くてハリのある声だけがまごう事なき本人であると告げていた。
藤実さんの話はどれも面白かった。面白いというと失礼で語弊があるが、それでもまったく初めて聞く想像もつかないような話に耳を奪われた。またいつか機会があれば、話の続きを聞いてみたい。

まだ未見の方、一度大衆演劇をお試しあれ。なんともクセになりそうな世界がそこにありますよ。

2010/3/23 火曜日

『今年もサクラサク』

小森陽一日記 14:19:22

「サクラサクころに ありがとう 心から キミに伝えられるよきっとまた心配かけても 笑顔で迎えてくれるでしょ?」

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―――と、北乃きいちゃんが透明な声で唄ってる。そう、今年もまた桜が咲き始めた。こちら福岡は七分か八部咲きといったところ、満開まで後数日という感じだ。しかし、北海道は札幌の最高気温は1℃だって………。寒い………、まだまだ冬真っ盛り、桜なんてイメージも出来ないだろうな………。

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お寒いと言えば本日のホークス、16対5ってなんですか?1回に4点、2回に10点って………、開幕して三試合目、確かに144分1の事かもしれんが、こんなお粗末な試合やってたら「今年も優勝は厳しいバイ!」と言わざるをえませんな! 地元に戻って仕切りなおして頑張れ!!暖かいしね。

さて、時々耳にする女性陣の質問にこんなものがある。
「男ってどうしてそんなに野球が好きなの?」
ビールと摘みとナイター中継、これは世のお父さんの三点セットだ。何を譲ってもこれだけは譲れない、そんな男性陣も多いだろう。さて、女性の皆さん、この本を読めば少しはその謎(気持ちかな)が解けるかもしれない。伊集院静さんの「ぼくのボールが君に届けば」と「駅までの道をおしえて」、野球好き、野球バカ、野球愛………、様々な角度から人と野球が語られていて、誰かの下手くそな言い訳を聞かされるよりよっぽど心に響くと思います。お試しあれ。

2010/3/16 火曜日

『生について』

小森陽一日記 14:55:16

「ハート・ロッカー」を観た。2004年イラクの夏を舞台にした、アメリカ陸軍爆発物処理班の物語である。穴凹だらけの路上、強い日差しの下風に煽られて砂塵とゴミが舞い、イラク人が家の窓や柱の影から冷たい視線を投げ掛ける………。そんな中、毎日毎日、ただ淡々と爆発物処理班は爆弾を解体し続ける。ゴミの中、瓦礫の隙間、土の中、自動車のトランク、子供の死体の腹の中、生きた人間………、いたるところに爆弾があり、爆発したら確実に死が訪れるという最中、今日も彼等は淡々と爆弾を解体する………。

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生あるものには必ず死が訪れる。そして死はいつ訪れるか予想はつかない。何十年も先かもしれないし、30分後かもしれない。誰にも分からない。しかし、爆発物処理班は違う。死が予測出来る。解体に失敗すれば即、「死」………なのだ。確かに英雄的な行為なのかもしれない。しかし、どこか淀んだ目をして、酒を飲み、タバコを吹かし、同僚と殴り合いをしてヘラヘラ笑う主人公を僕は好きになれなかった。映画を観ている間中、ずっと心がザラザラしていた………。先日こんな本を買った。「超訳 ニーチェの言葉」、ドイツの哲学者ヴィルヘルム・ニーチェの簡潔な言葉が並んでいる。その中にこんな一文がある。

少しの悔いもない生き方を
今のこの人生を、もう一度そっくりそのままくり返してもかまわないという生き方をしてみよ。
                      ???? 「ツァラトゥストラはかく語りき」

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爆発物処理班、彼等はもう一度そっくりそのまま今の人生をくり返しても構わないと思うだろうか………?そんな事は絶対にない、と思う。誰一人として自分の死が予測出来る、そんな人生を送りたいわけがない筈だ。つくづく戦争はイヤだ………。正義の戦争などと言っている奴が一番嫌いだ。そんなもの、どこにもあるわけがないじゃないか。あるのは「死」のみだ………。

第82回アカデミー賞、作品賞、監督賞、脚本賞などなど主要な賞を総なめにしたこの「ハート・ロッカー」、同じく主部門でノミネートされていた「アバター」はそのほとんどを「ハート・ロッカー」にさらわれた。アカデミーのSF嫌いは今に始まった事ではないので驚く事は何もなかったが、出来れば作品賞は「アバター」に獲って欲しかった。「アバター」は物語だ。しかも純粋な「生」の物語。人間の想像力を駆使して出来上がった最新の映像で、太古の昔から存在する純愛を描いた物語、僕は圧倒的にこっちが好きだ。

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