2011/5/10 火曜日

『道半ば―――』

小森陽一日記 10:44:09

GW中にまた一つ歳を取った。44歳である。表題にした道半ば、いや、そもそもこんな事を書くのが恥かしいくらいの道半ば、である。そんな未知なバカ(道半ばと書こうとしたらこうなった……)の今、気になっている事を吐露しようと思う。

一つ。庭の雑草。小さい鞘えんどうみたいなのがついてる蔓みたいな雑草が、それこそそこら中にウネウネ生えている。これが気になって気になって仕方ない。

一つ。下腹の肉。取れない……。クソッ、悔しい……。役者さんってほんと下腹の肉、ないよなぁ……。やっぱジム行こうか……。

一つ。犬の散歩。朝と夕、2回の散歩。歩き出せばなんともなくなるのだが、時々すっげぇ億劫になる……。寒い時、暑い時、忙しい時は特にイヤ。

一つ。熱帯魚。一時は絶滅寸前までいったプラティが、増えに増えて今じゃ100匹を有に越えている。ウンチの量すげぇ!ウチはブリーダーか!?

一つ。湿度。天然パーマって湿度に弱い。すぐにくりんくりんになってしまう。また梅雨が来る。鬱陶しい……。ラーメン見てるとたまに共食いしてる気分になる。

44歳の私、所詮こんなもんです。でも、一生懸命疾走してます。皆さん、どうかこれからもご贔屓に!
……付いて来てね!!

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2011/5/2 月曜日

『まるでヨーロッパのよう』

小森陽一日記 11:41:10

地震があった後始めて上京した。ウワサには聞いていたが、確かに街は薄暗かった。いや、全体が沈んでいるという意味ではない。純粋に光が半減しているのだ。羽田空港の中、地下鉄のホーム、編集部の廊下、テレビ局の通路、どこもかしこも震災前の煌々とした明るさはない。しかしむしろ、僕はこの明るさに落ち着きを感じた。しっとりした大人の感があるヨーロッパの雰囲気がそこにあった。

ヨーロッパを旅行すると存外暗いと感じる人が多いのではないだろうか。昼間でも建物の中は薄暗く、夜ともなれば街は暗闇に溶け込む。夜は暗いという当たり前の事を思い出す。しかし、日本の、それも都会で暮らしているとこの当たり前がどこかにいってしまう。水銀灯やネオン、表示板などあらゆるものが光を放ち、星はおろか月まで明るさの中に埋め込んでしまう。僕は久し振りに東京で、ビルの向こうに輝く月を意識したように思う。以前よりシックになった東京の夜が心地良く、その日はとうとう夜明けまで飲んだのだった……。

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2011/4/26 火曜日

『これって×ゲームですか?』

小森陽一日記 10:35:49

これはなんですか?ドッキリですか?マジですか?セリフ有りじゃないですか?しかも結構長いじゃないですか?え、着替えろって………。―――本気ですかぁ!?

先日訪れた「DOG×POLICE」の関西ロケ、朝7時に神戸のホテルを出て一路大阪へ。前夜、三ノ宮にプロデューサーと出掛け、軽~く一杯のつもりがどっぷりとディープに………。おかげで睡眠時間は約2時間、翌朝7時集合のロビーにはなんとか辿り着いたが、ロケ車の中では二日酔いと寝不足でぼんやり。「久し振りだなぁ大阪」なんて呟きながら流れ行く景色を眺めていた。それが、現場に着くなり一瞬で我に返り、さらに抜けるような空と同じく真っ青になった。そう、突如映画に出演させられたのだ。

断じて言っておくが自ら出演「した」、のではなく「させられた」。しかもそこに断わるという選択肢はなかった。僕が意固地になれば現場が停滞するのは目に見えていたし、スタッフを、何より勢揃いした役者さん達を待たせる訳にもいかない。
ロケ先で晴れ間は宝なのだ。しかも本日一発目のカットとくれば、勢いを付ける為にもノリは重要。だから、意を決して衣装さんが渡してくれたスーツに着替えた。
そして訳の分からないままみんなの前に立たされた。クレーンに乗ったカメラがこちらを向いている。変な汗が出る。助監督さんに「小森さんで~す!」と紹介された時、隼人くん、「何やってんですか!?」と驚いた顔して笑ってた。戸田さんも竹山さんも笑ってこっちを見てた。何より時任さんからはその後もしっかりいじられたのだった………。

印刷された台本、そこにわざわざ手書きで書き加えられたセリフ。これは誰の差し金だ?プロデューサーか、監督か、助監督達か、それとも全員か???真相は分らない。ただ、兎にも角にも一生懸命にやった。それだけはホントだ。………でも、スクリーンで見るのはキツイなぁ………。どうか自分の脳内イメージのままが写っておりますように!

―――とまぁ、愚痴はこれくらいにして、現場は非常にいい感じで廻ってた。何より勇作役の市原隼人くん、朝から夕方まで、空き時間のほとんどすべてをシロと共に過ごしていたのが印象的だった。隼人くんがシロの大好きなボールをポーンと投げると、シロが猛然とダッシュしてそれを追い掛ける。ボールを咥えて戻ろうとすると隼人くんが隠れて姿が見えない。すると、シロが一生懸命探すのだ。柱の陰から隼人くんが飛び出すと、シロがそこへ嬉しそうに駆け寄って来る。そしてじゃれ合う。素晴らしい「親和」が生まれてると思った。それはスタッフ、キャストの誰もが認めるところ。お芝居ではない本当の人と犬の心の通い合い、キラキラするくらい眩しいバディが誕生していた。その姿、大スクリーンに現れる日をどうか楽しみにしていて欲しい。

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2011/4/19 火曜日

『オフ』

小森陽一日記 10:14:58

14日、ようやく小説に「終」と書けた。年明けからこっち、土、日も関係なく机に向かってようやく辿り着いた「終」。まだ加筆、修正はあるものの山は越えた。だから16日、17日は完全オフとした。

―――とは言えオフの過ごし方がよく分らなくなっていたのには驚いた。何をしていても落ち着かない。机に向かわないのがこんなに居心地悪いものかと呆れるくらいだ。でも、意地でも向かわない。机が恋しいなんてなんか惨めだ………。

朝から犬と遊んだり、キットを削ったり、溜まった映画やドラマを観たり、ビールを食らって野球中継見ながら転寝したり。色々やった。でもやっぱりしっくり来ない。身体が机を求めている。悔しい………。こんな私に誰がした。しかし、救世主登場!有無を言わせずの存在がものの見事にその鎖を断ち切ってくれた。

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娘が僕の携帯を取り上げて写メを撮る。「こっち見て!」、「顔上げて!」、「ブレた。もう一回!」。こっちの都合はお構いなしにバンバン命令口調で言って来る。何をしてるのかと思いきや、こんなチンチクリンな顔を作っていやがった………。

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お次は夕食。土曜日、嫁さんがママ友との食事会の為に家を空けた。すると、「パパ、なんか食べよう」、「遊ぼう」、「本屋行こう」、またしてもお構いなしだ。仕方がないので近所の本屋へ出向き、そのついでにお寿司屋さんに入る。とても美味かったけど散財だ………。

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夜は買ってきたCDに付いているDVD三昧。「嵐」に「KARA」に「少女時代」に「AKB」。こっちは野球が見たくてそわそわする。すると「なんでちゃんと見てくれんと!?」と文句を言われ、挙句に一緒に振りを踊れと強要される。

ここは一つさっさと酔ってしまえ!と自分でハイボール作ってガンガン飲んでたら、何時の間にかソファで寝てしまった………。「イビキ煩いからベッドで寝て!」と叱られたのは言うまでもない。
   
なんだかなぁな事ばかりを書いた。これだけではあまりにもヒドイので、最近観た映画の事を記そうと思う。
『愛のむきだし』 園 子温 監督・脚本
その昔、園監督と会った事がある。確か「自転車吐息」の後だったと思う。麿赤児さんと一緒に真っ黒なマント着てたっけ。喫茶店で話をした時のザラザラした感触がまだ残っている。自主映画特有の匂い。この映画もあの頃のままだ。あぁ、園さんの作品だと肌で感じる。4時間という長丁場だけど、まったく長さを感じさせない。

『ボックス!』 李 闘士男監督 鈴木 謙一脚本 百田尚樹原作
大阪、高校のボクシング部、やんちゃと優等生、病気がちのヒロイン、お好み焼きを焼くパーマのおばちゃんと、まさにてんこ盛りな青春映画。それにしても隼人くんの目、いいな。あの目は彼しか出せない味、天性のものだと思う。対する高良くんも良かった。細身の中に一瞬ギラッとした芯の強さが出せる。いい役者さんだ。ただ、高良くん演じるユウキが香椎ちゃん演じる顧問の先生をどう思っているのか、それが最後までずっと引っ掛かった。

『KICK ASS』 マシュー・ボーン監督 マシュー・ボーン/ジェーン・ゴールドマン脚本
えげつない。でも笑える。昔の下品なジョン・ウォーターズの作品を観てる感じがした。アーロン・ジョンソン演じるキック・アスのバカっぽさ。緑の全身スーツでてくてく街を歩いてる後姿は腹を抱えて笑った。でも、クロエちゃん扮するヒット・ガールが出ると雰囲気は一変、ほんとに目と心を奪われる。音楽も最高。

『ホームカミング』 飯島 敏宏監督 千束 北男脚本
都会の片隅の寓話。おじいちゃん、おばあちゃん達が奮闘する青春ならぬ晩春映画。誘拐事件が起こっているのにどこかほのぼの、ヤクザが出て来ても誰かが亡くなっても悲壮感がない。これは飯島監督の人を見る目の温かさ、優しさなんだと思う。
様々な出来事に振り回される高田純次さんも良かったが、オイシイところを全部持っていくのは秋野太作さんだ。流石だった。

2011/4/12 火曜日

『緑大戦』

小森陽一日記 11:59:38

また今年もやって来た。毎年毎年、性懲りもなく攻めて来る緑の軍団。ちょっと見て見ぬ振りをすると、そこら中の土を覆い隠すようにはびこっている。今年は一気に暖かくなったせいか、いつもより陣取りが素早い印象だ。来客の目、ご近所の手前、自分の気持ちを誤魔化して過ごして来たが、日曜日の朝、マイの散歩から帰って来たその瞬間、突然己の中で闘いのゴングが鳴った!

この一番クソ忙しい時に時間を取られる事に対し、恨みを込めて猛然と毟る。毟って毟って毟りまくる。草の下や土の中ではダンゴムシもミミズもハサミムシも大騒ぎだ。鬼のような形相の人間が汗をたれ流し、フーフーと荒い息を洩らしながら襲い掛かって来るのだから。

身の丈1mほどに成長したタンポポを引っこ抜き、石垣の隙間から生えて来た根性モノを掻き出し、地面を覆うように根を張り巡らした緑の絨毯を根こそぎ引っぺがす。普段なら遊ぼうとまとわりついてくるマイが遠くから見ている。それくらい鬼気迫るものがあったのだろう。

途中からは妻も加わり、花粉症で鼻水をズーズー垂らしながらも枝切りハサミを振り回す。伸びた枝や木にまとわりついた蔦を切り落とし、バキン、ボキンとさらに細かく裁断していく姿は………とても描写する事など出来ない。

数時間を掛けて今年初めての大戦は幕を閉じた。しかし奴等は諦めない。静かに地中で根を張り巡らせ、また近いうち一息に攻めて来る。梅雨と夏の日差しが奴等を一層活気付ける。その日まで指先の摘まむ力を鍛え、中腰でガクガクしないよう強い腰を鍛え、錆付いてしまったスコップやハサミなんかの道具を揃えよう。

負けん、負けんぞ、緑の軍団!

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