2011/6/14 火曜日

『風邪をひいた時の過ごし方』

小森陽一日記 15:05:54

咽がヒリヒリと痛む。唾を飲み込む度に顔をしかめるくらい咽が痛い。会見から帰って来て咽の調子が悪くなった。一度収まりかけたが、また週末ぶり返してしまった。どうやら時期外れ風邪のようだ……。こんな時にと思うが、周りを見ると体調を崩している人も案外多い。梅雨、湿気、気温の高低差でやられるんだろう。ま、こんな時はジタバタしても始まらない。机を離れてソファに座り、リラックスして溜まったDVDでも観よう。

知らないと言うと「エーッ!?」と驚かれた。そして必ず「これは絶対観た方がいいですよ」と付け加えられる。中々他人の作品を褒めない、僕の事もこの数年間で一度くらいしか褒めた事のない小学館の担当Kくんですら、「これは外したらいかんでしょう!」と言う。その乾いた微笑みの向こうには、物書きのクセにそんなもんも知らんのか!ドアホ!!という嘲笑がもちろん透けて見えていた。だから僕はこっそりアマゾン南米でDVDを取り寄せ、固め観する機会を伺っていたのだ。

「装甲騎兵ボトムズ」、1983年~84年に掛けて放送されたサンライズ制作のアニメーションである。もちろん存在を知ってはいたが一度も観た事はなかった。
実を言うとガンダムファースト、イデオンで打ち止め、それ以後サンライズの作品は続けて観た事がない。特にファーストガンダムが好き過ぎて、それを超える作品はもうない、いや、そんな作品とは出会いたくないという複雑なファン心理が働いた結果だ。

さてボトムズ、正直作品世界の暗さに驚いた。とにかく主人公のキリコが笑わない。クメン編あたりから少しずつ明るさめいたものを見せるようになるが、それでも他の主人公に比べたら焼け石に水だ。そしてひたすら戦闘が繰り返される。前回も戦闘、今回も戦闘、次回も戦闘。戦闘、戦闘、戦闘……。こんな物語がよくも出来たものだと感心するくらい。今じゃここまでのハードテイストは中々成立しないように思う。かえすがえす80年代のアニメは熱かったなぁ。

そんな事を思いつつ作品を観続けていたら、とうとう熱が出て来た。身体の節も痛い。この感じは実に久し振りだ。あ~あ、どうやら本格的に風邪をひいたらしい。
ボトムズの続きはまた今度、今夜は早仕舞いして寝ます……。

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2011/6/7 火曜日

『禁ビール』

小森陽一日記 11:26:56

6月2日、東宝スタジオにて「DOG×POLICE」のクランクアップ報告会見が行なわれた。僕も監督やキャストの皆さんに混じって登壇した訳だが……、実はこの日から遡る事10日、あるささやかな抵抗を試みていた。ダイエットだ。

隼人くんや恵梨香ちゃんと撮ったスナップ写真を見て、家族は遠慮なしにガーガー言う。体型がひどいとか顔の大きさが違うとか腹出過ぎとか……。
「役者の隣に並んで見ろ! どれほどの拷問か分る筈だ!!」
そうは反論するものの、やはり一人でデジカメを眺めていると……確かに哀しいものがある。

半年ほど前、禁ビールを20日くらいやった。それだけで3㎏弱の無駄な肉が落ちた。
(俺は肉が付くのも早いが落ちるのもまた早い)
もう一度それをやろう。まだ会見当日まで10日ある。食卓に一度は並べたビールを、飲んだつもりになって冷蔵庫に戻した。

だが、結果は見事惨敗。禁ビールの誓いは守ったのだが、30日に行なったとあるイベント打ち合わせの集りと、会見前夜のフランス料理、集英社Tさん、Aくん、脚本家の大石さん、そして佐藤・下田両Pの前で「ビールじゃなかったらいいよね」とみんなに、なにより自分に言い訳して、ガツガツと料理を食べクビグビとワインを飲んだのがいけなかった……。当日の朝、体重計に乗ったら10日前より増量……。私バカよね~、おバカさんよね~。このフレーズはまさに自分の為にある。

―――などと下らない事を書いたが、会見はとてもいい雰囲気の中で行われた。何よりラストの特設ドッグランで見せた隼人くんとシロの「親和」、隼人くんの指示通りにキレ味するどく動くシロを見て、マスコミの皆さんがどよめいていたのがとても印象的だった。そうなのだ、カットで仲良く見える様に誤魔化して撮ったのではなく、本当に数ヶ月を共にして絆を結んだからこそ滲み出るリアリティーがそこにはある。嘘偽り無いホンモノ感をマスコミの皆さんには存分に味わっていただけたと思うし、それはスクリーンで観る皆さんにも絶対に伝わるものと思う。期待して待っていて下さい!

最後に写真を一枚。警視庁の警備犬チームより差し入れされた役名入りの焼酎です。僕も以前頂いたんだが、飲み口が爽やかで実にいける。あっという間に空っぽになってしまった。そんなサプライズのプレゼントを写メする佐藤P、それを僕が後から撮って、そのまた後から特典映像用のビデオカメラが回っておりました。さすがディレクターのKくん、色んなところを押さえてるなぁ。

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2011/5/31 火曜日

『某の話』

小森陽一日記 13:17:58

時任さんのブログにあやかって、僕も某の話を書こうと思う。

【某】ぼう 特定の人、または時・所などを、名を伏せて指すのに用いる語。

                                 ――広辞苑

今週はずっと仕事場に篭ってた。遊びにも行かず、酒も飲まず、正しく睡眠をとってコンディションを整えながら、ひたすら机に向かって某物語を書き綴っていた。

一昨年に顔合わせをし、昨年にはあちこちに取材に行き、色んな資料に目を通してきた。本来ならば半年ほど前からエンジン全開の筈だったが、急遽「DOG×POLICE」の小説を書く事になったので一度眠らせておいたのだ。

とは言え、他の仕事をやりながらでも某の事はいつでも頭にあった。時折取り出しては「あーでもないこーでもない」と転がしていた。その間に歴史的な出来事などもあり、「あーでもないこーでもない」は四肢を広げて膨らみ続けた。

しかし、いざ書き出してみると手強い……。中々に手強い……。現実と想像力と科学知識が試される。う~ん、手強い……。とは言え、いつの日か某を外して正式に発表する日を迎えたい。

仕事場にはそんな物語が他にも色々ある。どれだけ外せるか分らないが、一つでも多く陽の当たる場所に押し出してあげたい。

……なーんてね、カッコイイ事を並べてみたが、結局は今週ネタがありましぇーん!という事でした。

2011/5/24 火曜日

『ビックリ箱』

小森陽一日記 11:22:47

造形家であり映画監督でもある原口智生さんより、突然、何の前触れもなくダンボール箱が届いた。先日飲んだ時も何か送るなんていう話は出ていなかったから、「こりゃ一体なんだろう」と思いつつガムテープを剥がした。そして、蓋を開けるとそこには生首が―――!?
よくみりゃ「陰陽師」の源博雅くんじゃござんせんか……。

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久し振りに息がグッと詰まったな。なんといっても二週間くらい前、英明くん本人と色々長話をしたばっかりだったから。箱を空けたら知った顔が「ボン!」なんて、そりゃ驚きますよ。しかも本人から石膏取りされた完璧なマスクなんだし……。原口さんてば時々こういうイタズラするからなぁ……。

今、博雅くんはニコニコ微笑みつつ仕事場に鎮座しておられます(首から上だから鎮座って言うのもおかしいけど……)。来客からキャーキャーワーワー騒がれ、触れられ、撫でられなんだか嬉しそう。英明くん本人が貰い受けるならば、いつかはご本人の元に返そうとも思っているこの頃です。
  
さて、ここからは映画の話。最近観た3本を並べます。

『月に囚われた男』 ダンカン・ジョーンズ監督 ダンカン・ジョーンズ、ネイサン・パーカー脚本
たった一人、月の裏側で鉱物採集をする工夫の物語。「2001年宇宙の旅」のオマージュであろう、ハルと同じようにガーティというニコちゃんマーク顔のコンピューターが会話の相手だ。閉鎖空間の中で次第に高まっていく緊張感……、僕の大好きなモチーフだ。南極のドームふじ基地をベースにこんな物語をやってみたい。監督はデヴィッド・ボウイの息子。父と同じく素晴らしい才能。

『GANTZ PERFECT ANSWER』 佐藤 信介監督 奥 浩哉原作 渡辺 雄介脚本
出ました後編!待ってました。まだ未見の人もいらっしゃると思うので、詳しい事は言いません。ただ、哀しいです……。そしてニノが素晴らしい。なんなのって言うくらいニノが良かった。この不条理に満ちた世界をしっかりと支える事が出来るなんて、ほんとに超人ですよ。他のキャスティングはちょっと考えられない。恐れ入りました。

『岳―ガク―』 片山 修監督 石塚 真一原作 吉田 智子脚本
ダーンとね、スクリーンいっぱいに真っ白い山が広がってそこに小栗くん扮する三歩がいる。それだけでもうやられたーって感じがしました。音楽の入りとか、セリフとか、レスキュー隊の出動シーンとか、「あれ、これってどっかで……」と思わなくはなかった。けれど、映画としてとても好感が持てました。迫力も申し分なかった。それと、長澤まさみちゃんを大いに見直しました。

2011/5/17 火曜日

『クランクアップ!』

小森陽一日記 13:58:15

無事、「DOG×POLICE」がクランクアップを迎えました。キャストの皆さん、スタッフの皆さん、携わった全ての皆さん、そして七高監督、本当にお疲れ様でした!

先週の金曜日、慌しく上京しました。行こうと決めたのは、14日の土曜日に隼人くん、恵梨香さん、時任さんのメイン三人がアップすると聞いた為。やはり直接、「お疲れ様でした」と声を掛けたいと思いました。

朝から下田Pの車で一路水戸へ。こうして下田Pの運転する車に乗っていると、「252」の撮影中、千葉に通ったのを懐かしく思い出しました。いつもいつも付き合って頂いてスミマセン……。

水戸の県庁の側、大きな建物のホールがラストの現場。そこで、第四係の制服に身を包んだ隼人くん―――もとい!早川勇作が、捜査一課の刑事達と激しく対峙しておりました。緊張感のある芝居、モニターを覗いていると、撮影が行なわれているホールの中から分厚い壁を通して隼人くんの怒声が響いて来ます。

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七高監督の「カット」の声、三人の全てシーンを撮り終えた瞬間、スタッフが集まりました。監督がそれぞれに労いの言葉を掛けて花束を渡します。さきほどまでの緊張が溶け出すように和やかな空気に包まれ、自然と大きな拍手に包まれました。

隼人くんは「動」です。立ち止まる事を知らない。例えはおかしいけど、止まったら死ぬと言われるマグロのように常に動いてる。「休みの日はどうしてる?」と尋ねると「どっかに行きます。俺、じっとしてられないんで」と自らそう言います。ほんとに一本気で真っ直ぐ、一緒に話していて実に気持ちがいい。そんな役者さんです。

一方、恵梨香さんは「静」です。この映画の役もあったのかもしれませんが、いつも凛としてそこにいるという感じ。それでいてとっつき難い訳ではなく、ほんとに優しい笑顔を浮かべて接してくれる。僕は女優さんに初めてツーショット写真をお願いしました。中々恥かしくて言えないからね……。でも、この写真は宝物、大切にします。

最後に時任さん、例えるなら「結」の人。この映画のキャスト陣をしっかりと束ね、第四係を結束へと導いた人。撮影終了後の挨拶では、震災の発生、考えられないような様々な出来事の中に翻弄されながらも撮影に臨んだ想いを震える声で吐露されました。みんなの拍手が中々鳴り止まなかった……。まさに最後まで心を一つに結んでくださいました。時任さん、今度ゆっくり飯行きましょう!

色んな出来事を話しながら、帰りは佐藤Pと二人、電車で東京へ。思えばこの映画の着想を話し出してから、3年以上の月日が流れておりました。きっとまた3年後には新たな作品を作り上げ、どこかで懐かしく振り返っている瞬間があるんだと思います。

これからポスプロ、宣伝、公開へと道のりは長いですが、最後にもう一度言わせて下さい。撮影に携わってくれた全ての人に、乾杯!!

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