2013/2/12 火曜日

『至福の刻』

小森陽一日記 11:36:36

小説、原作、脚本、コラム、色んなモノを書いていて、いつも同じ事を思う。なんでこんなに文章下手かなぁ。ほんとに書きたいのはこんな言い回しじゃないんだけど。これ、さっきも使った言葉(フレーズ)だ。「……」「!」多過ぎ。挙げていけばキリがない。完成形がまったく見えず落ち込む事もしばしばだ。

この連休中、新しい小説の最終のゲラチェックを行った。こたつの上に原稿とコーヒーとペンを置いて静かにページを開く。印刷された文字が目に飛び込んでくる。上下がきちんと揃い、美しく整った体裁。本屋さんに並んだ売り物の本と同じだ。ゾクッとする。そして読み始めてみるとあら不思議、すべてがなんだかいい感じに思えてくるのだ。

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他の作家さんはどうだか知らない。ただ僕は、感覚として二割から三割り増しに出来がアップしたように感じる。本当はそんな奇跡など起るはずもないのだが、感じるものは仕方がない。至福の刻……。この瞬間は何度体験してもタマラナイ。

そしてまた、この瞬間を味わう為にひーこら言わなければならない。例えるなら、長い長い坂道を大八車に荷物をいっぱいのせて昇って行く。道の先は霞がかかっていて何も見えない。ところどころ道が別れ、右側の舗装道路を進むとガケ崩れの為に通行止めだったりする。それの繰り返し。でも、頂上に辿り着いたら、あの至福の刻が待っているのだ。そう言い聞かせて――。 

今日も頑張って昇りまっしょい。

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