『ドームが揺れた夜』
何年振りだ、ドームに行ったの? 三年振りくらいかもしれない。随分と足を運んでなかったなぁ。明るい廊下や天井からぶら下がったモニターや繁盛する売店が、なんだかとても懐かしく感じた。
とある御仁に「ドームに行こう」と誘われた。この十年来、お付き合いしていただいているFマス。「トッキュー!!」のダムの所長や「DOG×POLICE」小説版の警備部長で僕の作品に登場いただいているお方だ。それに留まらず、マンガや小説や映画の打ち合わせでいく度もお店にお邪魔し、ひたすらお世話になっている。
練習から見ようという事だったので、グラウンドに出るのは分かっていた。だが、まさかベンチにまで入れるとは……。ここ、野球人からすれば聖域だから。そんな場所にほいほい部外者が入っていい訳ない。でも、招かれた。Fマスの幅広い人脈とホークス関係者の温かい心遣いだった。ベンチからグラウンドを見るとこんな風に見えるのか……。監督やコーチや選手に思いを馳せながら、しばしこの絶景を眺めた。
試合が始まる。そこにはグリーンのユニフォームに身を包んだ背番号9の姿があった。小久保選手。もちろん会った事も話した事も一緒に飲んだ事もある。でも、グラウンドで見る姿はまったく違う。どうしようもなく風格がある。
小久保選手は今シーズンで現役に別れを告げる。寂しい。しかし、選手には必ず始まりと終りがある。ファンは黙ってそれを見届けるしかない。でも、あの綺麗な放物線を描くホームランをもう一度この目で見たい。正直な願いだ。果たしてそれは適った。なんと二打席連続ホームラン。鳥肌の上に鳥肌が立った。ドームが凄まじい歓声に包まれる。そんな中、背番号9は笑みを浮かべながらゆっくりとダイヤモンドを回った。実に美しい光景だった。
小久保さん、ありがとう。最高の瞬間を目の当たりに出来たよ。そして、沢山のホークス関係者の皆さん、何よりこの場に誘ってくれたFマス、本当に感謝します。根が単純だから、なんか力が漲ってきた。俺も仕事、ガンバロウ!