2012/4/10 火曜日

『花の散るらむ』

小森陽一日記 16:14:05

今年もまた桜が一斉に咲き誇り、花吹雪を舞わせ、鮮やかに散っていった。そんな桜の花びらを見つめながら、「引き際」の事を考えた。

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巷を騒がせたAKB48、あっちゃんこと前田敦子さんの卒業宣言。僕はAKBの事もあっちゃんの事も、四十過ぎのフツーのオッサンが知り得る程度の知識しか持ち合わせていない。そして、フツーに可愛いと思っている。

先日の朝日新聞の夕刊に『「総アンチ社会」に輝く希望』という記事が載っていた。
記事はあっちゃんの引退に触れ、その裏側には「アンチ」という存在があった事が示唆されていた。「アンチ」とはざっくり言ってしまうと「批判する者」の事である。ネットの掲示板はその多くが匿名だ。この匿名と言うのがクセモノで、感想や批評ならまだしも、「死ね」だの「バカ」だの「キモ」だの、ただの言葉のゲロをひたすら垂れ流す。まるで公衆便所だ。
この記事によると、あっちゃんは戦後史上最も批判されたアイドルではないかと言う事だった。AKB48の不動のセンター、抜群の人気と知名度を持つ存在。それが僕の持ってるあっちゃんの認識だったので、これには正直驚いた。そして、記憶の中にある映像を思い起こした。何度も何度もテレビで流れた昨年の総選挙の映像で、あっちゃんはぐしゃぐしゃに涙しながらこんな事を言っていた。
「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないで下さい!」
そうか……。あの時言った言葉はここに通じるんだな……。

そしてあっちゃんは卒業を宣言した。「アンチ」の猛攻にさらされながらもセンターを務め、AKBを国民的アイドルグループと言われるまで押し上げて、自分の言葉で「さよなら」を宣言した。本当にアッパレな引き際だと思う。

その一方で、国民新党の挙動がプチ、巷を騒がせた。代表の亀井静香さんが代表じゃない人達に代表の座を追い落とされたというニュース。これほど間抜けな「引き際」もないだろう。言葉は国民に届かない。党の人間にも届かない。党の人間達もまた、国民に向かって自分の言葉で語ろうしない。どうしようもない。
しかしこれは国民新党に限っての事じゃない。今の政治家はみんなそうだ。ころころころころ、転がるボールみたいに国のリーダーが変わる。方や一人の女の子が「アンチ」にさらされながらも笑顔を絶やさず、マイクに向かって自分の言葉で話をしているのに、国民に選ばれた人達が、この大いなる国難の時に意味不明の政争を繰り返し、自分の言葉を語りもせず、投げ出したり逃げ出したり追い出されたりして退場する。これがこの国の今だ。

散歩の途中、緑色の草の上に落ちた桜の花びらを見つけた。
「後は頼む」
しっかりと自分の仕事を終え、次の季節へと橋渡しをする。そこにさっぱりとした「引き際」を感じた。

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