『緑大戦』
また今年もやって来た。毎年毎年、性懲りもなく攻めて来る緑の軍団。ちょっと見て見ぬ振りをすると、そこら中の土を覆い隠すようにはびこっている。今年は一気に暖かくなったせいか、いつもより陣取りが素早い印象だ。来客の目、ご近所の手前、自分の気持ちを誤魔化して過ごして来たが、日曜日の朝、マイの散歩から帰って来たその瞬間、突然己の中で闘いのゴングが鳴った!
この一番クソ忙しい時に時間を取られる事に対し、恨みを込めて猛然と毟る。毟って毟って毟りまくる。草の下や土の中ではダンゴムシもミミズもハサミムシも大騒ぎだ。鬼のような形相の人間が汗をたれ流し、フーフーと荒い息を洩らしながら襲い掛かって来るのだから。
身の丈1mほどに成長したタンポポを引っこ抜き、石垣の隙間から生えて来た根性モノを掻き出し、地面を覆うように根を張り巡らした緑の絨毯を根こそぎ引っぺがす。普段なら遊ぼうとまとわりついてくるマイが遠くから見ている。それくらい鬼気迫るものがあったのだろう。
途中からは妻も加わり、花粉症で鼻水をズーズー垂らしながらも枝切りハサミを振り回す。伸びた枝や木にまとわりついた蔦を切り落とし、バキン、ボキンとさらに細かく裁断していく姿は………とても描写する事など出来ない。
数時間を掛けて今年初めての大戦は幕を閉じた。しかし奴等は諦めない。静かに地中で根を張り巡らせ、また近いうち一息に攻めて来る。梅雨と夏の日差しが奴等を一層活気付ける。その日まで指先の摘まむ力を鍛え、中腰でガクガクしないよう強い腰を鍛え、錆付いてしまったスコップやハサミなんかの道具を揃えよう。
負けん、負けんぞ、緑の軍団!