『ヂカイイ』
間違いなく自分の人生で三本の指に入る一日だった………。
何がって、お喋りだ。
常日頃、じっと机に向かってものを書く商売なもんだからそんなに喋る事はない。
妻や娘、打ち合わせの電話、独り言を全部合わせたとしても6時間もないと思う。
お昼12時半から夕方までは「S」の打ち合わせ。夕方から夜中の12時過ぎまでは講演の打ち合わせと本番と食事会。
この日は12時間喋り通しだった。
途中で喉がヒリヒリしてきて、切れたのかと思った………。
先日、「ヂカギキ」というイベントに出席させていただいた。文字通り、人の話を「ヂカ」に「キク」というコンセプト。だから僕は、僕自身の事、仕事の事、そして、取材で知り合った警察・海保・消防のレスキューマン達から連日届く、大震災の最前線からのメールや写真などを紹介した。
沢山のお客さんの前で話しをするのはかなりのパワーを要する。120分を越えるとなると尚更だ。しかし、司会の小柳さんが素晴らしかった。巧みな構成と右に左に自在に振られる話術に乗せられて、気がつけば150分を喋り切った。
終った後、スッキリしている自分にちょっと驚いた。これは何も頭を使っていない証拠だ。特別気取る事もなく、小難しくなる事もなく、普段通りの言葉で常日頃考えてる事をありのままに話したからだ。友達と夢中になって話した後に似た心地よさだった。
僕の作品は「ヂカギキ」で成り立っている。決して「マタギギ」や「検索」では生まれないものがある。だから僕は会いに行き、顔を見て話す。その時の天気、匂い、光の加減、ちょっとした冗談、そんなものまで全部ひっくるめて吸収する。それがやがて発酵して一つの作品になる。―――なんてね、そんな事を「ジカイイ」した夜だった。
小柳さん、スタッフの皆さん、そして会場を訪れてくれた沢山の皆さん、ありがとうございました。これからも沢山の話しを聞いて作品作りに邁進します。楽しみにしていて下さい!