『山崎豊子さんを追っ掛けて』
世は再び山崎豊子ブームなのだそうだ。ちなみに僕は違う。ブームと言うのは浮き沈みする事。山崎さんに関して、僕はまったく浮きもしなければ沈みもしない。ずーっと好きで追い掛けている一追っ掛けファンなのだ。
今秋からフジテレビが「不毛地帯」のオンエアをスタートさせた。開局50周年記念番組、もちろん第1話から毎週欠かさず見ている。1976年、今から33年前、山本薩夫監督がメガホンを取った映画も観た。二次防でラッキードとグラント、近畿商事と東京商事の熾烈な攻防をメインに据えて描かれた作品だった。壱岐を仲代さんが、川又を丹波さんが、貝塚を小沢さんが演じていた。もちろん映画も面白かったが、如何せん尻切れトンボの感は否めなかった。だって山崎さんの「不毛地帯」、壱岐正の商社マンとしての闘いはまさにそこから始まるのだから………。
今回フジテレビは2クール、半年掛けての放送枠でそれに応えるという。唐沢さんの壱岐、原田さんの大門、岸辺さんの里井、遠藤さんの鮫島、小雪さんの千里……、キャスティングはほんとにはまっている。ホンもまったく媚たところがなくて好きだ。かつ、原作の出来事をより壱岐に集約させていて、それがまた劇的な効果を生んでいる。素晴らしい。さらにエンディングテーマ、トム・ウェイツの濁声が聞こえてきた時には心底しびれた。泣けてきた。フジテレビの本気、底力を存分に見た感じだ。スタッフ・キャストの皆さん、大変だと思いますが、どうかこのまま真っ直ぐに突っ走って下さい。心より楽しみにしております。
もうひとつ、先日「沈まぬ太陽」を観た。幾つかの理由で映画化不可能と言われて来た山崎さん渾身の作品の完全映画化だ。上映時間3時間22分、久し振りのインターミッション付き………、しかし僕は長さを感じなかった。むしろもっと観たいと感じるほどだった。個人、友人、家族、会社、誇り、この作品には無数のキーワードが存在し、様々な出来事を通して自分の胸に突きつけられる。「あなたならどうする?どう生きる?」と………。渡辺謙さん演じる恩地と三浦友和さん演じる行天は言うに及ばず、りつ子を演じた鈴木京香さん、そして行天の愛人、美樹を演じた松雪泰子さんが素敵だった。椿のCMの受け売りではないけど、日本女性の良さをあらためて感じる事が出来た。とにかくこの「沈まぬ太陽」はスタッフとキャストが本気で取り組み、本気の映画を産み出せる土壌がこの日本にはあるんだ、その事を思いっ切り感じさせてくれた。心から賞賛の拍手を送りたいと思う。