『試写会の後で』
今週も色んな事があった。3D映画の撮影でレベル5の皆さんに会ったり、刑事さん達とお話したり、雨の中で芋掘りをしたり………、盛り沢山な週だった。
そんな中、「なくもんか」のキャンペーンで水田監督と阿部サダヲさんが来福。監督から家族共々招待を受けて作品を鑑賞した。その後僕は監督や阿部さんと合流、屋台でしこたま話しをした訳だが………、監督は僕が映画を見終わった直後の第一声が「面白かった!」じゃなかったと言ってむくれた。もちろん面白くない訳がない。監督と阿部さんと宮藤さんが組んでいるんだから。「面白かった!」と最初に言わなかったのには訳がある。以前、「人の作品を面白かったのたった一言で済ませるな!」と監督に言われた事があった。面白い――それが実に単純で簡単で物書きにあるまじき一言に思えたんだろう。だから今回は「面白かった!」という言葉を封印し、色んな言葉で「面白かった!」という事実を伝えようとした訳だが………、結果はこれだ。水田監督という人は、鋭さと真面目さと緩さといい加減さが実に不思議な具合にブレンドされている。へそ曲がりで偏屈だと思いきや、物凄い思いやりと気配りにこっちが恐縮してしまう事も度々だ。一言で言うと大変な存在、そして、これからも一緒に作品を作って行こうと思っているかけがえのない大切な存在なのである。
そしてもう一人、阿部サダヲさんだ。以前、一緒にご飯を食べて以来、僕は一発で阿部さんにやられた。一緒に仕事がしたくて仕方がない。阿部さんと会うと誰もがそういう気持ちになるんじゃないかな、ほんとに素敵なオーラを持っていて、妙に可愛らしくて、自然体でほのぼのしていて………。ここは水田監督と完全に一致する。今はもう休む間もないくらいの超売れっ子俳優な訳だが、それでも仕事を作り出して一緒に作品を作りたい。こんな想いの人が沢山いるからますます阿部さんの休みが減っていくんだろうけど………。
その昔、渥美清主演の連続ドラマ「泣いてたまるか」という作品があった。渥美さんが毎回違った役柄を演じ、監督、脚本も違う。ガードマンの話とかタクシーの運転手とかSFチックなシチュエーションもあって実にバラエティに富んでいた。今、「泣いてたまるか」をリメイクするなら主演は絶対阿部さんしかいない。阿部さんならどんな役柄でも歯を食い縛って頑張る男、泣いてたまるかと呟く強がりの男を見事に演じ切れるだろう。新作、「なくもんか」を観ながらそんな事を考えていた。ほんとに稀有な演者だと思う。阿部さん、近々に会ってご飯食べながら、面白い仕事の話、いっぱいしましょう!