『コッキン隊、スマトラへ』
そこでは滅多に経験しないような大地震が度々起こる………。
今回もそうだった。先月29日、サモア諸島付近で発生したM8.3の大地震、それから一日後、今度はインドネシア西部、スマトラ島沖でM7.6の大地震が起きた。スマトラと言えば2004年12月26日、M9.3が発生、大津波で20万人以上の人々が犠牲になった。2006年5月27日にはジャワ島中部でM6.3が発生、この時も数千とも数万とも言われる犠牲者が出た。
今回のニュースを見た時、予感はした。そして現実に一報が入り出す。
「国際緊急援助隊の一員として、今夜、チャーター機でスマトラに向かいます」
海保からも消防からも警察からも………、沢山の知り合いから電話やメールが続々と届いた。警視庁のY氏からは「警備犬も連れて行きます」との事、首輪を変える事によって、災害救助(レスキュー)と警備活動(テロ制圧)という相反する任務をこなす優れた犬達だ。以前、海保のトッキューで活躍していた友人がコッキン隊として派遣された時、この警備犬に随分癒されたと言っていた。
命のタイムリミットと言われる72時間、それを経過すると生存率は急激に落ちる。だからコッキン隊は、その間、文字通り不眠不休で捜索を続ける。疲れと空腹、埃と腐敗臭で食事も喉を通らず、幻覚を見る事だってあると言う………。そんな過酷な状況のもと、彼等と共に働き、時にはじゃれて頬を舐めてくる警備犬という存在、生存者を探すと同時にレスキューマンの疲れ切った心を癒す大切な存在であり、同志でもある、そんな風に例えていた―――。
連日、現地からコッキン隊が活動している様子がニュースで流れて来る。想像を絶する被害を目の当たりにしながら、この瞬間も懸命に救助活動を行なっているコッキン隊。そんなコッキン隊に僕は何も出来ない。出来ないが、せめて彼等の事を常に想い、彼等の無事な帰りを祈ろうと思う。
「助けを待っている人がいるなら、レスキューは国も言葉も関係ない。
どんな時でもどんな人でも、すぐに助けてやれ」
――――「トッキュー!!」20巻
この言葉通りの事を実行しているレスキューマン達、皆さんも心のどこかで彼等の事を想い、無事な帰りを祈ってあげて下さい。