『プロ』
プロはカッコいい。どんな世界でも、そこでプロとして立っている人はカッコいい。
先日、能楽師の鷹尾維教さんに「バーベキューをしますからご家族でどうぞ」と自宅に招かれた。お父さんの祥史さん、弟さんの章弘さんも能楽師というお能一家だ。
赤いパンツに中折れのソフト帽を被り、赤いトランクバックを持って飲み屋に現れ、おもむろにパイプに火を付ける男、初めて会った時はまさかこの人が能楽師だなんて思いもしなかった。しかし――、である。舞台に上がって舞い出した鷹尾さんの姿を見た瞬間、痺れた。朗々とした重低音ボイスがズシズシと身体を押して来る。呆然と見つめていた。目の前にいる人はまさしくプロだった―――。
鷹尾さんの自宅にはホークスの小久保さんと倉野さんの家族も招かれていた。僕がいい気持ちになってビールを煽っても、小久保さんは一切飲もうとはしなかった。ひたすらにミネラルウォーターのみ。「酒を断つと身体が軽くなりました」と笑って言った。酒だけじゃない。何気に食べている食事でも自分を律し、きっちりとコントロールしていた筈である。次の日、僕はドームで試合を観戦していた。5回、小久保さんはレフト中段まで飛ばす3ランホームランを打った。場内は総立ち、割れんばかりの歓声が巻き起こる。ゆっくりとダイヤモンドを回る背番号9、その姿を見ていて、やはり痺れた。プロだと思った………。
どんな世界にもプロはいる。そして、プロとして立ち続けるのは自分との戦いの連続である。それを乗り越えて立つ姿――、どう考えてもプロはカッコいい。