2012/11/27 火曜日

『ちょっと休憩』

小森陽一日記 10:56:57

東京から戻ってこっち、どうも身体の調子が悪い。今のところ熱は無い。関節の痛みも頭痛や腹痛も無い。喉の痛みと咳だけ。しかしこれが中々治まってくれない。布団に入って温まってくると咳が出て寝付けなくなる。トローチを舐めてもダメだった。昨日、とうとう自力復活を諦めて病院へ行った。「風邪です」との事。藤堂くんの置き土産か、はたまた東京で誰かの毒気に当てられたか。苦い薬を飲みながら色々考える。ま、ここんとこ忙しかったし身体も弱っていたんだろう。という事でタイミングも頃合だ。タバコを封印し、再び休眠状態に入る。

まさに紅葉真っ盛り。椿山荘にて全国から集った沢山の書店の方々の前で挨拶をした。一ヶ月ほど前にその事を担当から聞かされ、「なんで俺が」と思ったが、「ビッグコミック編集部を代表して」と言われれば無下に断わる訳にもいかず……。
挨拶はともかくとして、自分の作品を売って下さっている書店員の方々と直接話しをする事が出来たのは良かった。やはり物事は人と人で繋がっている。ここって根幹だ。

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翌日、ケーキをお土産に買って帰る。11.22、この日はママ誕。チーズケーキの上に無理やりロウソクを乗せて着火。みんなでハッピーバースデーを唄う。誕生日を迎える事に微妙なお年頃のようだが、歳は誰でも取る。いい歳の取り方をしていって欲しい。取り合えず笑っとくのが一番だ。

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来月はもう師走か……。親父やお袋が言ってたけど、歳取るとほんとに一年が早く感じるな。まだ色々とやらなければならない仕事が目の前に山積みだが……いいや、取り合えず笑っとけ! 

2012/11/20 火曜日

『鍋、鍋、また鍋』

小森陽一日記 11:07:45

季節がまた一歩進んだ。北海道は雪、北陸は時雨、東京でも最高気温が10度くらいまでしか上がらない日も出てきた。もちろん福岡も寒い。昼間は温かくても、夕方から急激に冷え込んでくる。だからって訳じゃないけど、最近やたらと鍋物を食べてる気がする。

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こっちでは水炊きやもつ鍋が有名なのだが、実のところ僕はそれほどの鍋好きじゃない。もちろん嫌いじゃない。ただ、一週間の内、一度でも鍋を食わなかったら身体に変調をきたすほどではない。普通に好きだ。ただ、立て続けに続くとやはり困る。

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ここんとこ、色んな人に会っている。ホークスの元キャプテン、小久保さん。レベルファイブの社長、日野さん、お笑い芸人の大吉くん。異業種であっても、いや、異業種だからこそ、互いに通じたり刺激を受けたりする。食べたり飲んだりしつつ語り合う。そこにはよく鍋がある。

極めつけはこの人だ。藤堂くんが家族で遊びに来た。聞けば自分の誕生日だと言う。忙しい中、風邪もひいているのに、わざわざ我が家を行き先に選択するとは……。
やっぱり嬉しいもんだ。だからという訳じゃないが、藤堂家のリクエストにしっかりとお答えして水炊きを食べに行った。

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鍋は温まる。気兼ねしない仲間と食べるのは最高だ。同じ鍋をつつくと親近感が一気に増す気がする。でも続くとツライ。正直に白状すると、あの鶏肉の皮が……プルプルの食感が苦手なのだ。なにあれ、プルプル……。ダメだ、思い出しただけでも食欲が失せる。コラーゲンなんかいらんし!

2012/11/13 火曜日

『銀色の翼』

小森陽一日記 10:25:54

何層もの青と降り注ぐ太陽の光の中を……おーっ、飛んでる――っ!! 

航空自衛隊築城基地へ再び向かった。前回は見学、しかし今回は――搭乗する為だ。
正直、乗る前は緊張していた。団司令や幹部の皆さんと一緒に昼食を取ったのだが、あまり食べれなかった。カレーを見てやっぱりアレを思う。ゲロ吐いたらどうしようって……。実をいうと僕は船酔いがひどい。海モノの大家なんて言われていたけど、船に乗ると一発でふらふらになる。何が大家だ……ってな醜態をいつも晒していた。だから、空もそうなるんじゃないかと内心ヒヤヒヤしていた。

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救命装備室で飛行服に着替え、その上にGスーツを着けてもらう。中世のコルセットかと言いたくなるくらい、ベルトをぐいぐい締められる。それくらい締めておかなければ、全身にGが掛かった時に耐えられないのだそうだ。うへぇ……どんな世界なんだよ……。ここで更に心配が増した。

ブリーフィングを受け、僕を空へと導いてくれる堀2佐と一緒にアウトハンガーへ向かった。そこに待っていたのは銀色の翼、F-15Jだ。デカイ、スゴイ、カッコイイ。ほんとにこんなのに乗ってこれから空に上がるのか……。もはやプレッシャーはマックスだ。担当者曰く、この時の僕の笑顔は相当ぎこちなく、青褪めていたそうだ。

F-15Jが滑走路を走る。あっと言う間に機体が浮き上がり、堀2佐の「上がりますよ」という声を合図に機体が一気に上を向く。アフターバーナー点火。仰向けの状態でそのまま空へぶっ飛んだ。在り得ない角度で雲をつき抜け、やがて真っ青な世界が現れた。

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最高速度マッハ1.2、最高高度5万フィート、最大Gは8。三機でのドッグファイトまで体験し、1時間40分のフライトを終えた。最高だった。心配していた空酔いもなく、失神する事もなかった。ひたすらコクピットの中からパイロットだけが見る事の出来る空中世界を堪能した。

着陸後、僕の顔は別人だと思えるくらい晴々としていたそうだ。そして、堀2佐から褒め言葉を貰った。右、左、上、下、そして計器。いろんなものをちゃんと見ていたという事。そして平気な顔で全ての訓練に付き合えた事。いやいや、堀さんの操縦が素晴らしかったからです。本当に。

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色んな取材をしてきたが、この体験は確実にトップ3ものだ。それを与えて下さった沢山の皆さんに感謝しつつ、体験した事を全て作品にぶち込みたい。
あ~、でもあの疾走感が忘れられん。もう一度乗れる機会があったら乗りたいなぁ。……とさり気なくオーダーしてます。はい。

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2012/11/6 火曜日

『再び松風苑へ』

小森陽一日記 11:26:44

前回訪れたのが2009年の9月だから、2年ちょっと振りという事になる。沖縄の松風苑を再び訪れた。「ウルトラマン」の小説を書き上げた事を、金城家の皆さんと、そして金城哲夫さんの墓前でようやくご報告する事が出来た。

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沖縄は暖かかった。上着は早々に脱いで半袖一枚になる。大学で講演中の桜井さんや他のメンバーを待ちつつ、円谷プロのKさんと目下、県内の眼科で辣腕を揮っているTさんと共に、Tさんの行きつけのお店で魚をつまみに昼酒を飲む。オリオンビール、ウマイ! 昼酒サイコー!!

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やがてドシャ降りの雨が降り出し、洪水警報が発令される。が、何のその。みんなで松風苑を訪れる。夕食を取りつつ金城さんの弟の和夫さん、息子の京一郎さんに小説が完成した事を告げると、労いの言葉を掛けられた。「哲夫はほんとうに喜んでるよ」と。ここで危うく涙腺が崩壊しそうになり、そそくさと退席して待合場に煙草を吸いに出る。しかし、そこの壁には金城さんの写真が飾ってあり、もはや猛烈に込み上げてくるものは避けられなかった……。

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2年前に金城さんのお墓に向かって「書きます」とお伝えした。そしてようやく「書き上がりました」と報告する事が出来た。素直に嬉しい。一つの区切りになった。でも、本番はこれからだ。大きく映像化されて世界が広がるよう、天国に向かってしっかりとお願いしてきた。来年、銀色の巨人が飛び立ちますように。  

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