『Sanba(サンバ)』
台風16号の名前だ。随分と楽しげでリズミカルな名前だが、今年、日本にやって来た台風の中では最強クラスの恐ろしい奴だった……。
福岡でも長時間、結構な強風が吹き荒れたから、発達したまま直撃した沖縄では相当な恐怖だったと思う。いくら台風銀座と言われ、沖縄の人が慣れているとはいえ、最近の台風はこと大型化している。よく「252を思い出しますよ」なんて苦笑いしつつ言われる事がある。
夜半には風が唸りを上げていた。朝起きて、風の吹き荒れる中、状況を確認する為にグルリと家の周りを歩いてみた。空は一面鉛色、東から西へ勢いよく雲が流れていく。時折横っ面をぶったたかれるような横殴りの雨が降りつける。
裏庭にある扇風機がグルグルと回っている。まるで「強」にしたみたいに勢いよく。毎日こんな風だったら風力発電を考えてもいいが……。やっぱり毎日はイヤだな。
あっちゃー。庭の木が折れている……。強い子なんだけどな、ドカンと風の塊が当たって耐えられなかったんだろう……。これも自然の淘汰というのかな。
仕事場から庭に出る時に履くスリッパが無いと思ったらこんなところに。
「あーした 天気に なーれ」
さて、どっちの向きを信じるか。
二階のベランダの光景。上がってみると既に物干し台と棹が倒してあった。こうしておかないとガラスが割れる危険がある。さすが嫁さん、察するねぇ。間違っても娘ではない。
そして今――、これを書いているのは午後5時44分。空には青色が戻って来た。あれほど激しかった風も雨も随分と収まり、遠くでツクツクボウシが鳴き出した。風も生暖かい風からひんやりと秋らしい風に変わった。
一雨ごとに秋が深まる。その言われ通り、騒然としたサンバが通り抜けた事で夏は終り、やっと涼しくなるのかもしれない