2012/9/25 火曜日

『趣味と仕事とBBQ……そしてお知らせ』

小森陽一日記 11:38:56

行って来ました。特撮博物館。周りからやいのやいのと評判ばかりを聞き、歯噛みする思いでしたが、ようやく顔を出す事が出来ました。円谷プロのKさんのアテンドで、大学の先輩である庵野館長の趣味が爆裂した空間をお腹いっぱい堪能いたしました。

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驚いたのは若い女の子が沢山見に来ていた事。特撮と女の子、昔じゃまったく繋がらなかった組み合わせです。それどころか相反するものだった筈。埃っぽいステージにミニチュア、戦車やらロケットやら怪獣の爪やら牙やら……。特撮が好きなんて中々言えなかったものでした。いやはや、時代は変わりました。

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会場を一通り見て廻ってあらためて思い知った事が一つ。それは僕の嗜好です。超兵器らなんたらガンやら高圧鉄塔やらヒーローのマスクやらを見ても、心が沸き立たないんだなと。要するに「怪獣」にしか興味がないという事がはっきりしました。会場で一番食いついたのはメカゴジラの着ぐ2るみ。一言で特撮好きといっても、中身は色々あるものなのです。

今回は約二ヵ月振りの上京、その間、東京組みは沢山福岡に来ていたので、久し振りという感じは全くないのですが、藤堂大先生の仕事場に赴き、藤堂大先生が仕事に励む姿を目の当たりにしたのは久々でした。描いてましたよ、カリカリと。でもこの仕事部屋、畳がささくれていて靴下にいっぱいイグサが付くんだよねぇ。大先生、そろそろ畳、入れ替えませんか?

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翌日はある方の自宅にてBBQでした。メンバーは言えません。なんの為に集ったのかも顕かに出来ません。秘密結社の秘密会議とでもしておきましょう。それにしても空の下で飲んだり食べたりするのはどうしてこう美味しいんでしょうか。ゆるゆるとした時間はあっと言う間に過ぎ、気がつけば辺りはすっかり暗くなっていました。Yさん、本当にありがとうございました。お世話になりました。

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最後にお知らせを一つ。小学館から10月5日に発売される「STORY BOX」、この38号から僕のある新作が連載されます。タイトルは「銀色の巨人」。このタイトルだけで分かる人にはピンとくると思います。ご興味のある方はどうかご一読願いします! 

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2012/9/18 火曜日

『Sanba(サンバ)』

小森陽一日記 11:30:04

台風16号の名前だ。随分と楽しげでリズミカルな名前だが、今年、日本にやって来た台風の中では最強クラスの恐ろしい奴だった……。

福岡でも長時間、結構な強風が吹き荒れたから、発達したまま直撃した沖縄では相当な恐怖だったと思う。いくら台風銀座と言われ、沖縄の人が慣れているとはいえ、最近の台風はこと大型化している。よく「252を思い出しますよ」なんて苦笑いしつつ言われる事がある。

夜半には風が唸りを上げていた。朝起きて、風の吹き荒れる中、状況を確認する為にグルリと家の周りを歩いてみた。空は一面鉛色、東から西へ勢いよく雲が流れていく。時折横っ面をぶったたかれるような横殴りの雨が降りつける。

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裏庭にある扇風機がグルグルと回っている。まるで「強」にしたみたいに勢いよく。毎日こんな風だったら風力発電を考えてもいいが……。やっぱり毎日はイヤだな。

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あっちゃー。庭の木が折れている……。強い子なんだけどな、ドカンと風の塊が当たって耐えられなかったんだろう……。これも自然の淘汰というのかな。

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仕事場から庭に出る時に履くスリッパが無いと思ったらこんなところに。
「あーした 天気に なーれ」
さて、どっちの向きを信じるか。

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二階のベランダの光景。上がってみると既に物干し台と棹が倒してあった。こうしておかないとガラスが割れる危険がある。さすが嫁さん、察するねぇ。間違っても娘ではない。

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そして今――、これを書いているのは午後5時44分。空には青色が戻って来た。あれほど激しかった風も雨も随分と収まり、遠くでツクツクボウシが鳴き出した。風も生暖かい風からひんやりと秋らしい風に変わった。

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一雨ごとに秋が深まる。その言われ通り、騒然としたサンバが通り抜けた事で夏は終り、やっと涼しくなるのかもしれない

2012/9/11 火曜日

『重みを感じる』

小森陽一日記 12:04:19

体重の話じゃない。確かにここんとこ仕事に追われて、あまり身体を動かせてない。ちょっとヤバイ………。でも、今回は体重の話じゃない。

先日、宅急便が届いた。配達員さんが細長い箱を抱えている。この形状はポスターだ。そう思って受け取ると、ちと重い。ははぁ、映画会社が余ったポスターを送って来たな。そこで伝票を見るとバットと書いてある。
「バット……?」
差出人は宮本慎也。そう、ヤクルトスワローズの宮本さんからだった。

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宮本さんと言えばヤクルトファンのみならず、プロ野球ファンなら誰でも知っている。現在の、そして未来のNPBの為に絶対に必要な存在。まさにプロ野球界の宝のような人だ。数年前にお会いして、一緒にお酒を飲んだ日の事は今でもよく覚えている。それ以後、年賀状や手紙のやり取りをするようになった。今年は映画二作品のチケットを送ったのだが、シーズン中の忙しい最中でも必ず一筆言葉が添えられた礼状が届く。この心遣いに人間性が滲み出ていると思う。

箱の中には2000本安打達成の記念バットが入っていた。ご本人にもお伝えしたのだが、2000本安打を達成されたその日は5月4日、くしくも僕の誕生日だった。一年365日もある中、敢えてその日に達成した宮本さんに、勝手ながらいっそうの縁を感じたものだ。

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バットを構えるとズシリと重みを感じる。しかし、それとは比べ物にならないほどこのバットに刻まれた記録は重い。当時の野村監督に自衛隊(打つ方ではなく守り専門という意味)と仇名され、打順も一定せず、当然犠打も要求される。何があっても後ろ向きになる事なく、コツコツとヒットを積み重ねた。その結果がここにある。

凄いよ、宮本さん。ほんとに凄い。沢山たくさん誇っていいと思う。でも、そんな態度は絶対に取らないだろうな。
ガンバレ宮本慎也、現役でも、ユニホームも脱いでからも、ずっと応援し続けますよ!!

2012/9/4 火曜日

『帰省』

小森陽一日記 10:58:04

八月最終日に実家へ。娘は部活、嫁さんは片付け、僕は原稿。到着したのは夕方の5時を過ぎていた。それから夕食を予約していた友人の店へ出向く。「ロワール」という名の洋食屋さんだ。

この「ロワール」という店名には若かりし頃の想い出が詰まっている。高校時代、映画製作に明け暮れていた頃、店の二階にある小部屋に陣取り、打ち合わせと編集を繰り返していた。お腹が空いたら友人の父(マスター)が作るカレーを頬張り、喉が渇いたら友人の母が淹れてくれたアイスコーヒーを飲む。それが日課だった。しかもお金を支払った記憶はほとんど無い。「出世払いで貰うから」といつも言われてたっけ……。その店はもう無い。代わりに友人が別の場所に店を持った。同じ店名で――。

落ち着いた雰囲気の店内、広い厨房、そして入り口の一番目立つところに「海猿」のポスターが貼られていた。僕はフィレステーキを注文した。外はしっかりと、中は柔らかく、絶妙の火加減で焼き上げられた肉。それをピリッと山椒の効いたソースを絡めて頬張る。美味い。長年、大きなホテルで料理長まで勤め上げていた友人の腕だ。当たり前だが本当に美味かった。たっぷりのサラダとこのステーキだけでお腹が満たされる。だが、僕にはもう一品、どうしても食べなければならない品があった。カレーだ。「ロワール」に行ったらカレーを食べる。例えどんなにお腹がいっぱいになろうとこれだは外せない。義務や義理じゃない。絆だ。

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マスターではなく友人の作ったカレー。昔の味に想いを馳せながら、今のカレーを食べた。味は違う。だが、どちらも「ロワール」のカレー、僕を育んでくれたまたとない逸品だ。僕にとっては大事なルーツであり、これからも大切にしていきたい宝物のようなカレーである。

その後、実家に戻って花火をした。八月最後の日を飾る満月の下で、煙と色取り取りの火花が舞った―――。

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