2011/7/26 火曜日

『デジタル放送』

小森陽一日記 11:07:29

7月24日正午をもって、テレビのアナログ放送が終わった。「地デジ、地デジ」と色んなところで目に耳にしていたが、実際ピンとは来てなかった。

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正午前、何かふいに思い立って携帯電話を掴むとテレビの前に座り、NHKを点けた。天気予報の画面には色んなスーパーが出ている。しばらくそれを眺めていると、次に女子アナさんが挨拶をした。「今までご覧いただきありがとうございました」と言うようなお礼の言葉と共に一礼されたと思う。その時、準備していた携帯のカメラモードが切れたので、慌ててしまって写真が撮れなかった……。やがてどーもくんが5秒ほど現れた。右手をあげてご挨拶している。確かにどーもくんはアナログ生まれの子だ、感慨もひとしおだろう。そして青い画面に切り替わり、『ご覧のアナログ放送の番組は今日正午に終了しました』というスーパーが現れた。以降はちろりろと音楽が鳴り続け、その画面のままとなった―――。

あ……、正午の時報がない!!

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あのデカデカと画面いっぱいに広がった時計が三秒前から時を刻む画がない……。この時、初めてアナログ放送は終ったんだと実感した。そして、テレビ放送スタート以来、NHKが脈々と映し続けて来た映像のラストを飾ったのがどーもくんであった事に、何か呆然とした心持ちになったのだった……。

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以上、アナログからデジタルへ移行の瞬間と、それに伴う心境の変化のプチ実況でした。

2011/7/19 火曜日

『海の日に寄せて』

小森陽一日記 11:06:56

○海上
空……、そして海。
他には何も見えない場所に―――。
ポツンと浮かぶ二つの影。
人である。
次々に打ち寄せて来る波に翻弄される二人。
必死で浮輪につかまり波と闘っている。
勇  「絶対浮輪から手ぇ離すなよ!」

『1997年7月22日、16時8分。
海の中道警察署より事故発生の第一報が第七管区海上保安部に入る。
保安部は直ちに巡視艇「なつぐも」を現場に急行。
同時に巡視船「ながれ」に対し出動要請
部内に緊急対策本部を設置し捜索の態勢に入る』
   
―――なんて、いきなり何が始まったのかと思った方も多いでしょう。これ、「海猿」の大元、僕が一番最初に読み切り用で書いた原作の始まりです。タイトルは「七管の海」、主人公の名前は仙崎ゆう勇。ここから打ち合わせを繰り返して修正していきながら、次第に「海猿」が形作られていきました。海の日と言う事もあり、懐かしさもあってちょっと蔵出ししてみました。

今読み返すと色んな事が甘いし間違ってるし……。でも、あの時は夢中でやってました。分からないところを何度も電話で尋ねたり、直接聞きに行ったりして。海保の方から送られて来たFAXには宛名が「古森さん」と書かれていたり……。まだまだ名前さえも正確に覚えてもらっていなくて、ほんとに手探りでやってました。

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さて、「海猿」繋がりで時任さんの話を一つ。来月発売になる「DOG×POLICE」の小説に、時任さんが寄稿文を寄せて下さいました。近く集英社の雑誌に載ると思いますのでお知らせします。僕と時任さんは大学の先輩、後輩という間柄、先輩の温かい思いが溢れた文章に思わずジーンとしてしまいました。身体もデカイけどハートも大きい、そんな人です。現在オンエア中の「それでも、生きていく」というドラマの中では、加害者の父親という非常に難しい役を演じられています。このドラマはほんとに見応えがあります。考えさせられます。どうか皆さん、是非ともご覧下になって色んな事を感じて下さい。

最後に、妻は無事に退院いたしました。ご迷惑を掛けた皆さん、ご心配いただいた皆さんにはこの場を借りてお礼申し上げます。
ありがとうございました。

2011/7/12 火曜日

『梅雨は明けたが……』

小森陽一日記 13:34:40

記録的な速さで梅雨入りし、同じく記録的な速さで梅雨が明けた今年。だが、僕のところはまだ梅雨が明けない。すっきりしない空模様がもうしばらく続きそうだ。と言うのも――――、

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この五年間の中で最大最強とも言える二週間だった。来福メンバーが四組、仕事の締切が三つ、そんな中、妻が緊急入院したのだ。急にお腹が痛いと言い出して、病院に連れて行ったら即入院。なんでも大腸が腫れているという事だった。運悪くその日は「S」の博多打ち合わせ。担当Kと藤堂くんがやって来る日だった。今更止めようもない。慌てて入院の準備をしつつ、バタバタと打ち合わせをしたようなしてないような……。部活を終えて20時くらいに家に帰った娘を連れ、再び病院へと向かった。

木曜・金曜は映画部の佐藤Pと下田P、それに集英社のTさんが来福。炊事洗濯の合間に仕事、お見舞い、娘の対応……。まったくロクな打ち合わせも出来ずに散会。皆さんには本当に申し訳ない……。

おまけに土曜、日曜は娘の部活の初演奏会。主夫をしながらパパと夫の対応をしつつ、仕事の鬼となりました。(多分、頬が引き攣っていたと思う)。だもので、日曜の夜はいつ眠ったのか記憶にない……。幸い妻は今週中には退院出来そうである。

やはり家庭の柱がいなくなると右往左往してしまう。
塾が終る時間は何時?
洗濯機に入れる柔軟剤の量は? 
どのタオルが誰のもの?
回覧板はどこへ?
学校のプリントにはなんと返事をすれば?
などなど……。
なんか家の事、子供の事、分かってるようで全然分かってなかったなぁ……。
色々反省しつつ、またしっかり前を向いて行こう!

2011/7/5 火曜日

『ゲラゲラなんて笑えないっ!』

小森陽一日記 11:35:12

毎日毎日じとじとジメジメ……。時折、バケツをひっくり返したような雨が降る。一年を通して梅雨の時期が一番キライだ。同じ九州でも早々に梅雨明けした沖縄と南部が羨ましい。せめて仕事だけでもすっきり晴天のようにいきたいものだが、どっこいそうはいかず。中でも小説版「DOG×POLICE」のゲラについた無数のチェックには、相当に凹みまくっている……。

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本は出版される前のゲラ段階で必ず校正を受ける。校正とは漢字や言葉の間違いだけでなく、句読点の場所、言葉の表現、時にはその文章の内容までが対象に含まれる。これまでにも校正は受けた事があるのだが、今回のような長編小説となると初めての経験、これまでのチェックなど一体なんだったのかと笑ってしまうくらいの、膨大な「?」マークが付いている。

だが、そんな「?」を見てしみじみと思う。いかに自分が勢いだけで書き上げていたかという事を……。例えば「一ヶ月」という表現、一章ではそうなっていたものが二章では「一ヵ月」となっている。「ヶ」と「ヵ」が混同されている。それだけではない。一ヵ月の「一」が数字の「1」になっている箇所もある。そういう部分の一つひとつをページ番号まで抜き出し、どれに統一するかと尋ねてある。
他にもこんなものがある。ハンドラーが犬に指示を与える言葉を声符というのだが、これが時に「ひらがな」で「さがせ」と書いてあったり、「カタカナ」で「サガセ」と書いてあったりする。また、文章の下にラインが引かれていて、登場人物の立ち位置が分かりにくいと言った指摘までもがされている……。
どこまでも冷静なチェック。書いた、出来たとはしゃいでいた自分が一気に現実に引き戻される。

集英社文芸の担当編集Aくんと、僕の拙い文章を校正をしていただいた方に、この場を借りて心から感謝したい。この次に書くものは、今回より一つでもチェック箇所を減らそうと思う。勢いを持って熱くなりながらも、心のどこかは冷静でクールを保つ。それが小説を書くという事ですよ、そんな基本を教えられた気がする。

とは言え、このブログでも時々誤字脱字を指摘されてしまう、どうしようもない物書きなのだが……。 

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