2011/5/2 月曜日

『まるでヨーロッパのよう』

小森陽一日記 11:41:10

地震があった後始めて上京した。ウワサには聞いていたが、確かに街は薄暗かった。いや、全体が沈んでいるという意味ではない。純粋に光が半減しているのだ。羽田空港の中、地下鉄のホーム、編集部の廊下、テレビ局の通路、どこもかしこも震災前の煌々とした明るさはない。しかしむしろ、僕はこの明るさに落ち着きを感じた。しっとりした大人の感があるヨーロッパの雰囲気がそこにあった。

ヨーロッパを旅行すると存外暗いと感じる人が多いのではないだろうか。昼間でも建物の中は薄暗く、夜ともなれば街は暗闇に溶け込む。夜は暗いという当たり前の事を思い出す。しかし、日本の、それも都会で暮らしているとこの当たり前がどこかにいってしまう。水銀灯やネオン、表示板などあらゆるものが光を放ち、星はおろか月まで明るさの中に埋め込んでしまう。僕は久し振りに東京で、ビルの向こうに輝く月を意識したように思う。以前よりシックになった東京の夜が心地良く、その日はとうとう夜明けまで飲んだのだった……。

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