2011/5/31 火曜日

『某の話』

小森陽一日記 13:17:58

時任さんのブログにあやかって、僕も某の話を書こうと思う。

【某】ぼう 特定の人、または時・所などを、名を伏せて指すのに用いる語。

                                 ――広辞苑

今週はずっと仕事場に篭ってた。遊びにも行かず、酒も飲まず、正しく睡眠をとってコンディションを整えながら、ひたすら机に向かって某物語を書き綴っていた。

一昨年に顔合わせをし、昨年にはあちこちに取材に行き、色んな資料に目を通してきた。本来ならば半年ほど前からエンジン全開の筈だったが、急遽「DOG×POLICE」の小説を書く事になったので一度眠らせておいたのだ。

とは言え、他の仕事をやりながらでも某の事はいつでも頭にあった。時折取り出しては「あーでもないこーでもない」と転がしていた。その間に歴史的な出来事などもあり、「あーでもないこーでもない」は四肢を広げて膨らみ続けた。

しかし、いざ書き出してみると手強い……。中々に手強い……。現実と想像力と科学知識が試される。う~ん、手強い……。とは言え、いつの日か某を外して正式に発表する日を迎えたい。

仕事場にはそんな物語が他にも色々ある。どれだけ外せるか分らないが、一つでも多く陽の当たる場所に押し出してあげたい。

……なーんてね、カッコイイ事を並べてみたが、結局は今週ネタがありましぇーん!という事でした。

2011/5/24 火曜日

『ビックリ箱』

小森陽一日記 11:22:47

造形家であり映画監督でもある原口智生さんより、突然、何の前触れもなくダンボール箱が届いた。先日飲んだ時も何か送るなんていう話は出ていなかったから、「こりゃ一体なんだろう」と思いつつガムテープを剥がした。そして、蓋を開けるとそこには生首が―――!?
よくみりゃ「陰陽師」の源博雅くんじゃござんせんか……。

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久し振りに息がグッと詰まったな。なんといっても二週間くらい前、英明くん本人と色々長話をしたばっかりだったから。箱を空けたら知った顔が「ボン!」なんて、そりゃ驚きますよ。しかも本人から石膏取りされた完璧なマスクなんだし……。原口さんてば時々こういうイタズラするからなぁ……。

今、博雅くんはニコニコ微笑みつつ仕事場に鎮座しておられます(首から上だから鎮座って言うのもおかしいけど……)。来客からキャーキャーワーワー騒がれ、触れられ、撫でられなんだか嬉しそう。英明くん本人が貰い受けるならば、いつかはご本人の元に返そうとも思っているこの頃です。
  
さて、ここからは映画の話。最近観た3本を並べます。

『月に囚われた男』 ダンカン・ジョーンズ監督 ダンカン・ジョーンズ、ネイサン・パーカー脚本
たった一人、月の裏側で鉱物採集をする工夫の物語。「2001年宇宙の旅」のオマージュであろう、ハルと同じようにガーティというニコちゃんマーク顔のコンピューターが会話の相手だ。閉鎖空間の中で次第に高まっていく緊張感……、僕の大好きなモチーフだ。南極のドームふじ基地をベースにこんな物語をやってみたい。監督はデヴィッド・ボウイの息子。父と同じく素晴らしい才能。

『GANTZ PERFECT ANSWER』 佐藤 信介監督 奥 浩哉原作 渡辺 雄介脚本
出ました後編!待ってました。まだ未見の人もいらっしゃると思うので、詳しい事は言いません。ただ、哀しいです……。そしてニノが素晴らしい。なんなのって言うくらいニノが良かった。この不条理に満ちた世界をしっかりと支える事が出来るなんて、ほんとに超人ですよ。他のキャスティングはちょっと考えられない。恐れ入りました。

『岳―ガク―』 片山 修監督 石塚 真一原作 吉田 智子脚本
ダーンとね、スクリーンいっぱいに真っ白い山が広がってそこに小栗くん扮する三歩がいる。それだけでもうやられたーって感じがしました。音楽の入りとか、セリフとか、レスキュー隊の出動シーンとか、「あれ、これってどっかで……」と思わなくはなかった。けれど、映画としてとても好感が持てました。迫力も申し分なかった。それと、長澤まさみちゃんを大いに見直しました。

2011/5/17 火曜日

『クランクアップ!』

小森陽一日記 13:58:15

無事、「DOG×POLICE」がクランクアップを迎えました。キャストの皆さん、スタッフの皆さん、携わった全ての皆さん、そして七高監督、本当にお疲れ様でした!

先週の金曜日、慌しく上京しました。行こうと決めたのは、14日の土曜日に隼人くん、恵梨香さん、時任さんのメイン三人がアップすると聞いた為。やはり直接、「お疲れ様でした」と声を掛けたいと思いました。

朝から下田Pの車で一路水戸へ。こうして下田Pの運転する車に乗っていると、「252」の撮影中、千葉に通ったのを懐かしく思い出しました。いつもいつも付き合って頂いてスミマセン……。

水戸の県庁の側、大きな建物のホールがラストの現場。そこで、第四係の制服に身を包んだ隼人くん―――もとい!早川勇作が、捜査一課の刑事達と激しく対峙しておりました。緊張感のある芝居、モニターを覗いていると、撮影が行なわれているホールの中から分厚い壁を通して隼人くんの怒声が響いて来ます。

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七高監督の「カット」の声、三人の全てシーンを撮り終えた瞬間、スタッフが集まりました。監督がそれぞれに労いの言葉を掛けて花束を渡します。さきほどまでの緊張が溶け出すように和やかな空気に包まれ、自然と大きな拍手に包まれました。

隼人くんは「動」です。立ち止まる事を知らない。例えはおかしいけど、止まったら死ぬと言われるマグロのように常に動いてる。「休みの日はどうしてる?」と尋ねると「どっかに行きます。俺、じっとしてられないんで」と自らそう言います。ほんとに一本気で真っ直ぐ、一緒に話していて実に気持ちがいい。そんな役者さんです。

一方、恵梨香さんは「静」です。この映画の役もあったのかもしれませんが、いつも凛としてそこにいるという感じ。それでいてとっつき難い訳ではなく、ほんとに優しい笑顔を浮かべて接してくれる。僕は女優さんに初めてツーショット写真をお願いしました。中々恥かしくて言えないからね……。でも、この写真は宝物、大切にします。

最後に時任さん、例えるなら「結」の人。この映画のキャスト陣をしっかりと束ね、第四係を結束へと導いた人。撮影終了後の挨拶では、震災の発生、考えられないような様々な出来事の中に翻弄されながらも撮影に臨んだ想いを震える声で吐露されました。みんなの拍手が中々鳴り止まなかった……。まさに最後まで心を一つに結んでくださいました。時任さん、今度ゆっくり飯行きましょう!

色んな出来事を話しながら、帰りは佐藤Pと二人、電車で東京へ。思えばこの映画の着想を話し出してから、3年以上の月日が流れておりました。きっとまた3年後には新たな作品を作り上げ、どこかで懐かしく振り返っている瞬間があるんだと思います。

これからポスプロ、宣伝、公開へと道のりは長いですが、最後にもう一度言わせて下さい。撮影に携わってくれた全ての人に、乾杯!!

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2011/5/10 火曜日

『道半ば―――』

小森陽一日記 10:44:09

GW中にまた一つ歳を取った。44歳である。表題にした道半ば、いや、そもそもこんな事を書くのが恥かしいくらいの道半ば、である。そんな未知なバカ(道半ばと書こうとしたらこうなった……)の今、気になっている事を吐露しようと思う。

一つ。庭の雑草。小さい鞘えんどうみたいなのがついてる蔓みたいな雑草が、それこそそこら中にウネウネ生えている。これが気になって気になって仕方ない。

一つ。下腹の肉。取れない……。クソッ、悔しい……。役者さんってほんと下腹の肉、ないよなぁ……。やっぱジム行こうか……。

一つ。犬の散歩。朝と夕、2回の散歩。歩き出せばなんともなくなるのだが、時々すっげぇ億劫になる……。寒い時、暑い時、忙しい時は特にイヤ。

一つ。熱帯魚。一時は絶滅寸前までいったプラティが、増えに増えて今じゃ100匹を有に越えている。ウンチの量すげぇ!ウチはブリーダーか!?

一つ。湿度。天然パーマって湿度に弱い。すぐにくりんくりんになってしまう。また梅雨が来る。鬱陶しい……。ラーメン見てるとたまに共食いしてる気分になる。

44歳の私、所詮こんなもんです。でも、一生懸命疾走してます。皆さん、どうかこれからもご贔屓に!
……付いて来てね!!

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2011/5/2 月曜日

『まるでヨーロッパのよう』

小森陽一日記 11:41:10

地震があった後始めて上京した。ウワサには聞いていたが、確かに街は薄暗かった。いや、全体が沈んでいるという意味ではない。純粋に光が半減しているのだ。羽田空港の中、地下鉄のホーム、編集部の廊下、テレビ局の通路、どこもかしこも震災前の煌々とした明るさはない。しかしむしろ、僕はこの明るさに落ち着きを感じた。しっとりした大人の感があるヨーロッパの雰囲気がそこにあった。

ヨーロッパを旅行すると存外暗いと感じる人が多いのではないだろうか。昼間でも建物の中は薄暗く、夜ともなれば街は暗闇に溶け込む。夜は暗いという当たり前の事を思い出す。しかし、日本の、それも都会で暮らしているとこの当たり前がどこかにいってしまう。水銀灯やネオン、表示板などあらゆるものが光を放ち、星はおろか月まで明るさの中に埋め込んでしまう。僕は久し振りに東京で、ビルの向こうに輝く月を意識したように思う。以前よりシックになった東京の夜が心地良く、その日はとうとう夜明けまで飲んだのだった……。

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