『東京にょろり旅』
ついに実現した。
ナショナルジオグラフィック誌上で、爆笑問題との対談で、「うなぎ丸の航海」や「アフリカにょろり旅」の文中で、その存在を知った時からお会いしたいと熱望していた人………、東京大学大気海洋研究所の塚本勝巳教授である。
その塚本勝巳教授とは一体どんな人なのか、ご存知ない方の為に簡単にプロフィールを記すと、1948年、岡山県生まれ。長年謎とされてきたニホンウナギの故郷をついに発見したスーパー海洋学者なのである。
ニホンウナギ、学名「アンギュラ・ジャポニカ」はどこで産卵するのか?回遊魚である事、海に出る事は分かる。だが生まれる場所がどうしてもわからない。
「一体なぜか???」
理由はひとつ、誰も卵を見た事がないからである。何匹ものウナギを捌いてきた蒲焼の職人さんなどはこの為、「ウナギってのぇのはな、すべてオスなんだ!」と言い張っていたそうである。
塚本教授を先頭に東大の海洋研究所に集ったユニークな面々は、この果てしない謎に果敢に挑んだ。1973年よりスタートした海洋研のミッション、ニホンウナギの仔魚「レプトセファルス」を求めて大海に網を入れ、その痕跡を辿って行く。その間、何度も何度も返り討ちに合いながら、ひたすら湧き上がる情熱に突き動かされるようにして、ついに2005年6月7日、北緯14度東経142度40分から143度の西マリアナ海域にて、生後2日目の「プレレプトセファルス」を発見した。ニホンウナギの産卵場所はなんと2000kmも離れた海の彼方、巨大海山の山裾にあったのである。
そんなウナギの話をする塚本教授の目、なんと真っ直ぐで純粋な光を湛えているんだろう。
「私は後2年で定年です」
だが、その目は眩しいくらいキラキラした少年の目そのものだった。
僕が何を教わりに行ったのか?それはまだここでは書けない。ただ、塚本教授という無二の存在と知り合えた事で、作品世界は一気に力強くなった事だけは間違いない。海洋研の一員になった気持ちで僕も情熱を友として、果敢に作品に挑もうと思う。
追記
この記事を読んでウナギに興味も持たれた人は是非「うなぎ丸の航海」、「アフリカにょろり旅」を手に取ってみて下さい。爆笑して呆れて関心して応援する事請け合いです!