『秋に想う』
すこぶるいい天気、風も心地いい。
午前中で「トッキュー!!」も書き終えた事だし、ブログのネタでも見つけにと散歩へと繰り出した。
本屋に立ち寄って田中芳樹さんの「月蝕島の魔物」と奥田英朗さんの「サウスバウンド」を購入、そのままスルスルと行きつけのお鮨屋さんへ。
「昼間からとは珍しいですねぇ」
と若大将に声を掛けられ、
「散歩です。ブログのネタ探し」
なんて返事を返した。
すると―――、
「ネタならここにいっぱいありますよ」
見ると、ショーケースの中には新鮮な鮨ネタがぎっしり。
「ネタはネタでもこれはねぇ………」
なんて苦笑いしたが、しっかりとネタにさせてもらった。ありがとう、若大将。
昼間はまだ日差しが強い。しかし、木々の先を見るとうっすらとだが朱に染まった葉っぱがある。猛烈に暑かった今年の夏、しかし確実に季節は次へと巡っているのだ。
秋と言えばシーズンオフ。ホークスもクライマックスシリーズを敗退し、今年のシーズンを終えた。終了間際、不振に喘いでいた背番号3に元気を出してもらおうと、我がチーム10割は一つのプレゼントを計画した。名付けて「男、打ち。」Tシャツ。
「男、打ち。」とはチームメンバーであるCMプロデューサーS氏が放った「ベースボール・スパーリング」篇の中のロゴ。このCMは最高のインパクトで今年のACC金賞を獲得した。細かいデザインの打ち合わせは眼科医のT先生が、資金集めからシャツ製作の発注など細々した事を県警のSさんYさんが、そして何より、背番号3の、チーム10割の、そして多くの人々の桃源郷であるお店のFマスが、店のロゴ出しを認めてくれた。みんなの気持ちがぎっしり詰まったプレゼント、もちろん松中さん本人が大喜びしてくれたのは言うまでもない。
今シーズン、チーム10割の5人がこのシャツを着て球場に揃う事は一度もなかった。だが、球場に行く時には必ず着て出掛け、行った時には必ず勝った。「チーム10割、復活だ!」。シーズン途中の意気消沈ぶりはどこへやら、ゴウゴウと怪気炎が上がる。だが、その夢をぶち壊したのは僕からだった。必死に応援したにも関わらず完封負け。試合途中、メンバーからは苦情のメールや同情のメールが幾つも届いたのだった………。
夜、球場からタクシー乗り場までとぼとぼと歩く。思えばその夜から急に風が冷たくなった。どうやら一番最初に秋が訪れたのは僕だったようだ。