2008/1/8 火曜日

『そして新年は始まった―――』

小森陽一日記 17:59:28

大晦日は雪となった。
最初に雹のような雪、やがてそれは粉雪に変った。庭がみるみる白に染められていく。平地でこんなに雪が降るのは久し振りの気がする。年賀状を書く手を止め、思わず写真を撮った。

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今年は異常気象続き、冬もまったく冬らしくない温い日々が続いていた。そんな中、最後の最後にこの雪だ………。「偽(いつわり)」と評された2007年、この雪が真っ白に締め括ってくれた―――。

年が明け、近所のお宮さんに初詣に出掛ける。お参りを済ませたら、福笹と御札、そしておみくじを買う。これはここ数年来の恒例行事だ。

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おみくじは「吉」だった。頑張れば得られる――とある。昔から頑張る事は得意だ。だからきっと得られるのだろう。単純にそんな事を思いながらおみくじを結んだ。

2008年、真っ白になった地面にどんな足跡を残そうか。
………色々と騒々しい年になりそうだ。

明けましておめでとうございます。
どうぞ今年も宜しくお願いいたします。

2007/12/26 水曜日

『始まりは終わり、終わりは始まり』

小森陽一日記 17:54:29

朝から庭の水撒きをした。
キンモクセイにイロハモミジ、ハイノキ、ナナミノキ、オリーブと順に水を掛けて行く。撒き終わってほっと一息庭を眺めていると、ふいに「俺もおっちゃんになったなぁ………」と思った―――。 

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今週、スピリッツに描き続けてきた「我が名は海師」が終わった。決して単行本がバカ売れするような作品ではなかったが、沢山の読者に支えられなければ4年という月日の間、連載を保ち続ける事は不可能だった。そして、ドン・フライスが麟太郎の手を払いのけて海へと消える終盤の回、見事アンケート1位を獲得した。これは本当に嬉しかった。
「ありがとうございます」
この場を借りて読者の皆さんへお礼の気持ちを伝えたい。

少年マガジンで連載している「トッキュー!!」も、早17巻を数える。競争の激しい少年誌だ。始める時、こんなにも続くなんて予想だにしていなかった。まったくもって支えてくれた読者のおかげだ。年が明けると新たな、そして怒涛の展開が待ち受けている。まるで糠漬けでも漬けるように、目下仕込みに懸命になっている日々である。

始まりは終わり、終わりは始まり――――。
この言葉通り、来年はまた新たな物語や作品が動き出す。庭で水を撒いてぼんやりと日向ぼっこを楽しみたいが、まだまだ老け込む暇はなさそうだ。 

皆さん、今年もお世話になりました。良いお年をお迎え下さい。
そして、来年もどうぞ宜しくお願いします。

小森 陽一

2007/12/19 水曜日

『ROPPONGI天空大作戦』

小森陽一日記 21:12:30

師走の東京、朝晩はかなり冷え込みがきつかった………。2泊3日で上京し、打合せに現場の顔出しにと忙しく駆け回った。そんな中、ポカポカと心地よく楽しめたのがこの催し、「ウルトラマン大博覧会 ROPPONGI天空大作戦」である。

中々凝った作りのレセプション案内状が届いたのは先月。だが、中を開けて愕然とした。レセプションの日と自宅の引越し日がぴったりと重なっていたのである。これはもう如何ともし難い。泣く泣く出席を諦めた………。

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「一つひとつ目を通していけば、軽く2時間はかかりますよ」
円谷プロのK氏が言った通り、中は見応え読み応え、まさに宝の山だった。キャプションもさる事ながら、ガラスケースの内には脚本家や監督、雑誌編集者達が書いた手書きの生原稿がびっしりと並んでいる。メモ書き、注意書き、ト書きに覚書、デザイン画に落書きと当時の息吹がケースを通り越してビリビリと伝わって来る。これらはすべてウルトラの製作過程を示す歴史の証文、時間を気にせずじっくりと読み耽けり、創作の秘密に触れてみたいと思った。

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美術館の一角に目を止める。昭和をそのまま移して来たような部屋のセット、あきらかにそこだけは異空間と化している。それもその筈、その部屋は実相寺監督の自室の再現なのである。古めかしい本棚に詰まった英字のビデオ、黄ばんだ背表紙の本、使い古された小さな机には年季の入ったワープロが置いてある。じっと見つめながら、色んな事を思い巡らせた。鬼籍に入られて一年、会えるチャンスをことごとく逃してしまった事が残念でならない………。

夜は中目黒で円谷プロの森島社長や桜井浩子さん、K氏やKさんと食事、博覧会はもちろんこれまでの事、これからの話で大いに盛り上がった。いつの日か僕も、ウルトラの歴史に名を連ねてみたい――――。

2007/12/11 火曜日

『引越し』

小森陽一日記 18:00:34

家具を運び出しガランとした部屋で掃除機をかける。大きな綿ぼこりに驚き、タンスの裏から出て来たモノに驚き、床についた傷におののく………。やがて何もなくなると、そこはもう住み慣れた部屋とは違ってただのだだっ広い空間となる。

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これまで何度か引越しを重ねて来た。短かった部屋もあれば長かった部屋もある。この部屋は6年半住んだ。いい事も悪い事も楽しい事も哀しい事も色々あった。四季折々を窓から眺め、色んな人を出迎え、何千回というご飯をここで食べた。そして何より娘がここで成長した。

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「柱の傷は一昨年の~」
娘の背がどれくらい伸びたか、壁にはエンピツで線を引いた跡が残っている。それを見た時、なんとも言えず切ない気持ちになった………。

新居はダンボールで埋もれている。

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とにかくこの山を崩していかないと生活が始まらない。時間は流れている。また前に進むだけだ―――。

2007/12/4 火曜日

『底抜けに痺れるドラマ』

小森陽一日記 20:29:13

あまりドラマを観る性質ではない………。
元々がものぐさなくせに、一つ欠けると一気にテンションが下がるという難しい性格なものだから。連ドラを一つも欠かさず見続けるなんて至難の業だ。
そんな自分が――――、
今、我を忘れて欠かさずに観ているドラマがある。NHKの連続テレビ小説「ちりとてちん」だ。

塗り箸屋の娘、和田喜代美は何かとどんくさい子。小学生時代、転校した先に自分と同姓同名の才色兼備がいた。和田清海………。クラスの子達は二人を呼び分ける為、A子とB子という残酷なコードネームを用意する。当然A子は清海、喜代美はB子として常にA子の影の人生を歩む事になる………。そんな自分を変えようと故郷の小浜を飛び出し大阪へ。そして出会ったのが落ちぶれた落語家徒然亭草若だった。紆余曲折、喜代美はB子から脱却する為に女流落語家の道を進む事となる――。

このドラマ、とにかく脚本が呆れるほど上手い。枝葉のように延ばした伏線を見事にパキパキと回収していく。またそれが泣かせたり笑わせたり………、実に起伏の富んだ、そしてキャラの立った見事な本である。藤本有紀さんの素晴らしい筆さばきは本当に素晴らしいの一語に尽きる。

「海猿」の青木崇高さん、その昔、何度かお話をさせて頂いたキムラ緑子さん、先輩である松尾貴史さん、それからご存知キム兄こと木村祐一さん、長丁場の撮影、風邪などひかないようにして乗り切って下さい。楽しみにしております。

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