2009/3/3 火曜日

『キャラの宝庫』

小森陽一日記 14:02:11

舞台は大阪西萩、バリバリの下町。その一角で小学5年生の少女は来る日も来る日もホルモンを焼いている。そう、アホな父親のせいで………。
「ウチは日本一不幸な少女や」

はるき悦巳氏が放ったご存知「じゃりん子チエ」。漫画アクションにて19年という長期連載を成し遂げた傑作マンガである。基本的にグルグルマンガ(成長も後退もしない。舞台設定はそのままでエピソードが変化する)なのだが、まったくもって飽きさせない。それは物語もセリフも一級品だからだ。だが何より素晴らしいのはキャラクター、そう、「じゃりん子チエ」はまさにキャラの宝庫なのである。

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マンガ界において「キャラ不在」が叫ばれる昨今、このマンガにはこれでもかというほど際立ったキャラが続出する。主人公の竹本チエは言うに及ばず、チエの祖母、人情家で激情家、ケダモノの母菊、額の三日月が過去を物語る月の輪の雷蔵こと二足歩行の小鉄、一升超すと人格が変る元バクチ屋の主人で現在お好み焼き屋の百合根、ド迫力の文学者にしてチエ誕生に深く関わる責任者、花井拳骨。そしてそして、チエのパパであり、ヤクザをどつく事を生き甲斐とした、正真正銘のアホでカスでスカタンでバクチ狂いの甲斐性なし、竹本テツ。だが―――、僕はもうこのテツのやる事なす事が好きでたまらない。チエちゃんには「ほんならいっぺん暮らしてみたら」と冷たく言われそうだが、僕は根っからテツファンなのである。

どこからどうやってこんな濃いキャラが生まれて来たんだろう………。はるき氏の才能、大阪という街の風土、独特の食文化、そして関西弁、きっと色んなものがない交ぜになってるんだろうなぁ。なんだかまた大阪に行きたくなった。色んな景色や色んな人を眺めながら、熱燗傍らにガブリとホルモンを頬張りたい。

追記 「じゃりん子チエ劇場版」7月25日 Blu-rayにて発売!!

2009/2/24 火曜日

『合宿生活』

小森陽一日記 10:56:41

来月、JKC(ジャパン・ケンネル・クラブ)の地方競技会が開かれる。我が家のマイは久し振りのエントリーとなる。初出場で三席という好成績を叩き出したマイもやはり自宅では家庭犬、どうしても競争心は薄れてしまう。これまで週2~3回の出張訓練を行っていたが、昔のキレは中々戻ってはこなかった。そこで訓練士さんと話合い、大会までしばしの合宿生活をする事になった。他の犬達と混ざり、再び競争心に火を灯す為である。

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最近犬の一生を色々考える。自宅でのんびり家族と一緒に過ごすというのもいい。警察犬や警備犬のように、仕事をこなすというのもいい。盲動犬や聴動犬のように主人をサポートするのもいい。どんなカタチでも幸せであればいい。マイは元々牧羊犬としての性能を与えられたボーダー・コリーだ。与えられた仕事をこなすのが生き甲斐という犬種。実際、訓練士さんとの訓練を見ていると、本当に活き活きと動く。訓練が楽しくて仕方がないといった様子は手に取るように分かる。訓練を終えて帰って来た時の遊び方も、何もしない時と比べたら動きもキレも何もかもが違う。指示を覚え、理解し、命令通りに、いや、命令以上に動く事を喜びとしている、そんな感じだ。

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だが、競技会に出すには正直手間もかかるしお金もかかる。ここのところ少々太り気味だったマイのカロリーを抑え、適度に運動をさせ、競技会に向かってベストな状態へと向けたりするのも中々大変な事。もちろん合宿だってただという訳ではない。競技会にエントリーするだけでもそれなりの出費である。でも―――、と思う。
こうする事で、僕等よりも短いマイの一生が少しでも楽しく、実り多いものになればいい。
「行ってらっしゃい、マイ。みんなで応援してるよ!」

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2009/2/17 火曜日

『友チョコ、溢れる!!』

小森陽一日記 13:42:21

2月14日、色んな打合せやお世話になった方のお疲れ様会、海保にいる長年の友人の送別会などに出席し、東京から自宅に戻って来た。
すると………、
部屋の中はあまい甘いアマイ匂いに包まれていた―――。

娘が妻と一緒にキッチンでゴソゴソやっている。覗いてみるとそこには大量のチョコレートがとろけていた。
「何やってんの?」
と尋ねると、友チョコ作り!と答えが帰って来た。
『友チョコ?』
そう、好きな人にあげる本命チョコではない、友人にあげるチョコを友チョコと言うんだそうな。見れば娘が友達から貰ってきた友チョコがテーブルにごまんと広げられている。売り物かと見紛うようなものから、岩おこしのようなオリジナリティの塊のようなものまで………、実に様々な友チョコがメッセージカード付きでラッピングされている。只今そのお返しのチョコを作っている真っ最中と言う訳だ。

娘が作ったのは一口サイズのチョコ、その上にアラザンやミックススプレーなどを振り掛け、色合いが添えてある。
「パパには一番良く出来たのを上げる!」
娘と妻から2つ、手作りチョコを頂いた。
『所詮俺も友チョコか………』
口には出さず顔は笑顔で出来たてのチョコを頬張った。
「―――ん!?」
その味たるやもう甘いのなんの………。人生でここまで甘いものを食べたのは、NYのホテルで超大味なケーキを食べて以来だと思う。まさに甘さで身体が硬直した。
「どう?美味しい?」
「うん………、なんか凄いね………」
まったく答えになっていない答えを返しつつ、僕は必死で甘い友チョコを飲み込んだのだった………。

2009/2/10 火曜日

『お手並み拝見 その四』

小森陽一日記 10:26:38

月頭の恒例と言ってた筈が随分間が開いてしまいました………。これからはこそこそっとやる事にいたします………。

『20世紀少年 第一章』堤幸彦監督 福田靖・他脚本 浦沢直樹原作
スピリッツで「我が名は海師」をやっていた時、どうやったら「20世紀少年」より上位に行けるか、そんな事考えていたっけなぁ。兎に角メチャクチャ人気があった。実際、読んでいてほんとに夢中になった。その映画化第一弾がこれ。物語の面白さは体感しているので別の角度から観た。皆さん、キャスティングに驚かれませんでした?「わかるわかる!」っていうくらいピッタリの役者さん達。原作読んでたのに、ほんとに違和感なく映画に入れた。これって凄い事だと思います!

『攻殻機動隊2.0』押井守監督 伊藤和典脚本 士郎正宗原作
物語はそのままに、CG部分をハイグレード化されたものなんだが、うーん………。トップシーン、少佐がビルの上からダイブするCG画とその後のセル画がどうにも噛み合わない気が………。ほんとはすべてを作り変えたかったのかな。でも押井さんと伊藤さんのコンビは大好きなので、やっぱり楽しんで観ました。

『クライマーズ・ハイ』原田眞人監督 加藤正人・他脚本 横山秀夫原作
日航機墜落事故。未だに記憶に残るあの悲劇を、地方新聞の側から描いたドラマ。見応えありました………。どんどんドラマに引き込まれていって気持ちが揺さぶられて………。新聞社の編集局、まるで生ものを見ているようでした。役者さんの存在感がほんとに素晴らしい。主演の堤真一さんや堺雅人さんは言うに及ばず、誰もが一人の人間を演じていらっしゃいました。玉置千鶴子さん、よかったなぁ。

『感染列島』瀬々敬久監督 平野隆・下田淳行オリジナルストーリー
いつ始まってもおかしくない恐怖、新型ウイルスのパンデミック(感染爆発)を描いた作品。「252」でご一緒した下田さんが一から作り上げた物語。一言で言い表せば切なかった………。大切なものがいとも簡単に奪われていく惨状に、激しく傷つき狼狽しながらも懸命に立ち向かう医師、松岡。それでも彼は思うのだ。
「たとえ明日地球が滅びるとも、今日、君はリンゴの樹を植える」
病院の周りに捧げられた沢山の花束の上に真っ白い雪が降り積もる。ほんと、切なかった………。

それにしても今回は邦画ばっかだなぁ。クリント・イーストウッド監督、アンジェリーナ・ジョリー主演の「チェンジリング」、洋画では今これが一番観たい。

そのお話はまた次の機会に。

2009/2/3 火曜日

『高圧鉄塔は誘う………』

小森陽一日記 13:17:19

高圧鉄塔を見掛けると無意識のうちに仰ぎ見てしまう―――。
こういう人は大方僕と同系列の人だと思う。そう、子供の頃、怪獣に脳内を占拠された人だ。高圧鉄塔に触れたゴジラやキングコングがバチバチと火花を飛ばして咆哮したシーン………、それらは脳みその皺になって死ぬまで消える事はない。高く、無骨で、危険で、そして山をまたぐようにどこまでも続いている高圧鉄塔………、見つめていると怪獣達の声が聞こえて来るようである。

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それまで耳にした事もないような声が空から降って来た。全身を黄金色に輝かせた宇宙怪獣キングギドラだ。巨大な羽を広げて空を飛び回り、のたうつ三つの首からは引力光線を撒き散らす。強いのなんのってもう………。ゴジラ・ラドン・モスラ連合軍で宇宙に追い返すのがやっとだったくらいだ。
そんなキングギドラのキットを先日手に入れた。ウルトラ怪獣主体でコレクションしている僕としてはまったくイレギュラーな行動だったが、金ピカに輝く全身像の完成見本写真を見た途端、なにやらご利益がありそうな気がして思わず衝動買いしてしまった。早速組んでみるとデカイ!全高約50cm、羽を広げると1mに達しようかというサイズである。だが、ただデカイだけなら他にもあるだろう。驚いたのはその細かな作りとバランス、そしてこれでもかという存在感である。

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さてこのキングギドラ、原型師の名前を見ると大石武司となっている。なるほど凄い訳である。大石氏と言えば、ボークスOHのガラモンでは痺れまくった。こちらも圧倒的な存在感で立体化されたガラモンだった。20年ほど前にここまでの仕事を成した人がいるとは本当に驚きだった。

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来月には新連載一発目がスタートする。いい仕事は何年経っても色褪せないものという事をあらためて肝に命じつつ、これからの仕事に打ち込んでいきたい。

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